社会保険労務士法人なか/労働保険事務組合福働会/福働会中部支部

会社の存続すら左右する『異物混入』を法的観点から再確認

23.02.20
ビジネス【企業法務】
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昨今は、さまざまな『異物混入』のニュースを目にします。
異物混入というと、主に製造過程における食品への混入をイメージしますが、食品だけに限らず、医薬品や生活用品、衣料品など、あらゆる業種で異物混入は起こり得ます。
異物混入は消費者からのクレームや信用の失墜などにつながるだけでなく、法的なペナルティーを受ける可能性もあり、事業者側は商品を製造するうえで細心の注意を払わなければいけません。
今回は法的な観点から、異物混入の問題について考えていきます。
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異物混入をゼロにすることはできるのか?

国民生活センターには、怪我や病気などを負う危険性があった商品に関する『危険情報』が消費者から寄せられます。
2021年度に寄せられた危険情報の内容を見てみると、1位が284件の『過熱・こげる』、2位が281件の『発煙・火花』、そして3位が270件の『異物の混入』でした。
異物の混入の内訳を見てみると、『調理食品』が78件、『菓子類』が32件と、食品関係が全体の半数近くを占めていることがわかります。
食品は人の体内に入るものなので特に問題視されやすいのですが、2021年にはファストファッション大手企業が女性用下着に異物が混入した可能性があるとして約4万5,000点を自主回収するなど、食品以外でも異物混入は起きています。

異物はさまざまな経路で商品に混入します。
外部から入ってしまったり、機械が欠けてその一部が異物となったり、そもそも原材料に異物が付着していたりなど、あらゆる可能性が考えられるため、徹底した清掃や工程の管理、機械の定期的なメンテナンスなどが欠かせません。
しかし、製造工程以外にも、保管や流通の過程で異物が混入してしまうこともあるため、完全に異物混入をなくすことは難しいのが現状でしょう。

それでも、企業は異物混入の起きる可能性を限りなくゼロにすることが求められます。
異物混入によって被害を受けた消費者への対応が必要なのはもちろん、企業イメージの低下や、商品回収といった事態になればそのコストも甚大です。
さらに、法的な問題も発生します。

では、異物混入にはどのような法的な問題があるのでしょうか。
次に、法的な観点から異物混入について説明します。


法律で規定されている異物混入とは?

異物混入に関連する代表的な法律は、食品衛生法と製造物責任法です。
食品衛生法第6条では、腐敗したものや有害な物質が含まれるもの、病原微生物に汚染されたものと並び、「不潔、異物の混入又は添加その他の事由により、人の健康を損なうおそれがあるもの」を販売してはならないと定めています。

この「異物」については、一般的に食品や添加物以外の人の目で見て判断できる物質だと定義されています。
たとえば、顕微鏡でしか確認できないほど小さなものは異物だと認められません。
異物は、虫や虫の排泄物、人の体毛、卵の殻などの『動物性異物』、木片や紙、カビなどの『植物性異物』、ガラス片や金属片、合成繊維などの『鉱物性異物』に分類することができます。
それぞれ、混入する過程は異なりますが、これらはいずれも人の健康を損なうおそれがあるため、食品衛生法違反となり、該当の商品に対しては行政から回収命令が出されるか、もしくは自主回収を行うことになります。
さらに、違反者は名称が公表され、営業停止などの処分や、3年以下の懲役または300万円以下(法人は1億円以下)の罰金などが科せられる可能性もあります。

また、食品以外の商品を取り扱う事業者に関係してくるのが、製造物責任法です。
製造物責任法とは、英語訳の『Product Liability』から『PL法』とも呼ばれる法律で、消費者は商品の欠損が原因で怪我などの被害を被った場合に、製造業者等に対して損害賠償を求めることができるというものです。

たとえば、衣料品メーカーでは、出荷する衣料品に針が残っていないか確認する『検針』という作業を行います。
もし、この検針をせずに、購入者が残っていた針で怪我をしてしまった場合は、メーカーが責任を問われ、製造物責任法に基づいて損害賠償を負うことになります。
ほかにも、異物混入が原因で取引先に商品の納品ができなかった場合は、民法第415条に規定された債務不履行責任に基づく損害賠償を負うこともあります。

異物混入は、そのときの対応によっては今後の事業活動が困難になるほどのダメージにつながりかねません。
異物混入を防ぐための防止策を講じることはもちろん、万が一異物混入が起きた場合は、迅速に原因究明や再発防止策の構築などに取り組む必要があります。
自社の防止策と対応策について、定期的な見直しを行っていきましょう。


※本記事の記載内容は、2023年2月現在の法令・情報等に基づいています。