社会保険労務士法人なか/労働保険事務組合福働会/福働会中部支部

ミスマッチ採用を防ぐ! トライアル雇用を活用するには

22.12.20
ビジネス【人的資源】
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人手不足や採用難が深刻化する昨今、経験者を確保できず未経験者の採用に踏み切らざるを得ない経営者も多いようです。
しかし、「職業経験の少なさが心配」「ブランクがある人だと知識不足では」といった不安は、どうしてもついてきてしまうものです。
そこで今回は、経験が不足する求職者をお試し雇用で見極め、常時雇用につなげるための制度『トライアル雇用』と、その助成金について紹介します。
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制度を活用するメリット・デメリットとは

『トライアル雇用』とは、職業経験の不足などから就職が困難な人や、これまで経験がない職業に就くことを希望している人が、原則3カ月間の試行雇用を経て、適性などを見極めたうえで無期雇用につなげるための制度です。
また、その制度につなげるためにハローワークなどが行っている紹介が『トライアル求人』となります。

『トライアル雇用助成金』とは、ハローワークなどの紹介を受けるなど一定の要件を満たした事業主に助成金を支給するもので、厚生労働省の調査によると、2020年度にはこの制度を利用した約7割の人が無期雇用へ移行しました。

まず、トライアル雇用を活用する場合のメリットについて考えてみましょう。
事業主にとっての主なメリットは、次の3つです。

・採用後のミスマッチを防げる
・試行期間が満了した後の契約解除が容易
・採用活動のコストを削減できる

最大のメリットは、試用期間とは異なり、常時雇用の決め手となる求職者の適性や能力を、採用前に時間をかけて判断できることです。
履歴書や面接だけではわかりづらい求職者の適性を、じっくり見極めてから採用につなげることができます。

一方、デメリットには、次のようなものがあります。

・助成金の手続きに時間や手間がかかる
・人材育成の体制を充実させる必要がある

助成金を受給するには、各種書類を計画的に作成・提出しなければなりません。
総務担当者などの業務に負担がかかることもあるため、注意が必要です。

また、求職者によっては離職期間が長期にわたり、手厚い教育が必要となる可能性が考えられます。
経験者の中途採用とは違い、きめ細やかな研修体制や相応のコストが求められます。


3つのコースがあるトライアル雇用制度

トライアル雇用には、3つのコースがあります。

(1)一般トライアルコース
(2)新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース
(3)新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアルコース

(1)と(2)は週30時間以上、(3)は週20時間以上30時間未満の無期雇用への移行を目指します。

これらのコースの対象となる求職者に求められる共通の要件は、ハローワークまたは民間の職業紹介事業者などに求職申込をしていることです。
そのほかの要件はコースごとに異なります。
また、トライアル雇用には、このほかにも障害者を対象としたコースや、若年・女性建設労働者を対象としたコースもあります。
各コースの内容について、詳しくは厚生労働省ホームページをご確認ください。


2022年4月より支給額を増額!

続いて、支給額と支給要件について説明します。

トライアル雇用の助成金は、前述のようにコース別に定められています。
通常、求職者1人当たりの支給月額は、
(1)(2)コース:最大4万円
(3)コース:最大2.5万円
という設定になっています。
しかし、事業主の過去の受給実績や解雇状況といった要件を満たす場合、2022年4月1日より、
(2)コース:最大5万円
(3)コース:最大3.12万円
に増額されました。
増額の場合も通常の場合も支給期間は最大で3カ月で、求職者が希望する労働時間の長さで支給額が異なります。
なお、(1)のケースでも求職者が母子家庭の母や父子家庭の父という場合などには、(2)と同額が支給されます。

事業主がこれらの助成金を受給するためには、多くの要件があります。
ここでは一部を紹介しますが、このほかにも、労働条件の不利益変更や不法行為がないこと、特定受給資格離職者の割合が6%を超えていないことなど、さまざまなものがあります。

・ハローワーク等にトライアル雇用求人を提出すること
・上記の紹介により、原則3カ月間の有期雇用で雇い入れること
・指定された期間内に実施計画書や支給申請書を提出すること
・事業主等の3親等以内の親族ではない対象者を雇い入れること
・事業主都合により一定期間内に雇用保険被対象者を離職させていないこと など

トライアル雇用は、企業、求職者がお互いの理解を深めたうえで働く意思を決定できる制度です。
採用にかかるコストをカバーし、長く働いてくれる人材や即戦力になりうる人材を探せることは、企業にとってもメリットが大きいといえるでしょう。
助成金の利用を検討する際には、厚生労働省のホームページを確認するほか、ハローワークや社労士などの専門家へ相談し、詳細や要件をご確認ください。

参考:厚生労働省ホームページ『トライアル雇用』
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page06_00002.html


※本記事の記載内容は、2022年12月現在の法令・情報等に基づいています。