タトゥーとアートメイクは? 医師免許がないとできないこと
医師になるためには、医師国家試験に合格し、医師免許を取得する必要があります(医師法2条)。
医師法上、医師でない者が『医業』を行ってはならないと定めれられています。
しかし、過去には一部の施術行為などが『医行為』に該当するのか、そうでないのかが、裁判で争われた事例もあります。
今回は、医師でなければできないこと、医師以外の人でもできること、その違いは何かを説明します。
医師法上、医師でない者が『医業』を行ってはならないと定めれられています。
しかし、過去には一部の施術行為などが『医行為』に該当するのか、そうでないのかが、裁判で争われた事例もあります。
今回は、医師でなければできないこと、医師以外の人でもできること、その違いは何かを説明します。
『医行為』として認められる基準とは?
医師法上、医師でない者が医業を行ってはならないと定めれられています(医師法17条)。
医業とは、医行為を反復継続して行うことです。
これに違反して医師以外の人が医行為をした場合、3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金という刑罰が下されます(医師法第31条)。
そして、医行為の意義や、医行為の該当性を判断する基準を示した最高裁決定が存在します(最決令和2年9月16日・刑集74巻6号581頁)。
この決定によると、医行為とは、『医療及び保健指導に属する行為にうち、医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為』のことです。
そして、医行為に該当するかについて、(1)行為の方法(2)作用のみならず、(3)その目的(4)行為者と相手方との関係(5)行為が行われる際の具体的な状況(6)実情(7)社会における受け止め方等といった複数の観点から考慮したうえで、社会通念に照らして判断すべきとされました。
過去の事案では、彫り師(医師免許を持たない人)によるタトゥー施術行為が医行為に該当し、医師法違反にあたるかどうかが争われました。
そして最高裁は、上記判断基準にしたがって、タトゥー施術行為は、装飾的ないし象徴的な要素や美術的な意義がある社会的な風俗として受け止められてきたものであって、医療および保健指導に属する行為とは考えられてこなかったこと、医学とは異質の美術等に関する知識及び技能を要する行為であって、医師免許取得過程等でこれらの知識および技能を習得することは予定されていないこと、歴史的にも、長年にわたり医師免許を有しない彫り師が行ってきた実情があり、医師が独占して行う事態は想定し難いことを理由として、医行為には該当しないとの判断を下しました。
アートメイクは医行為?
この決定が出る数年前、厚生労働省は、針を用いて色素を皮膚に注入させるアートメイクを念頭に置いて、このような行為は医行為であるとの通知(平成13年11月8日医政医発第105号)を出しました。
針を用いて色素を皮膚に注入させることはタトゥーと同様です。
令和2年の最高裁決定を受けて、アートメイクにも影響があるのではないかと注視されています。
しかし、現時点でも、この通知は廃止されておらず、アートメイクは医師以外が行うことができない医行為とされています。
そのため、現時点では、医師のいないエステサロンなどでアートメイクを受けることはできず、またそのような施術を医師以外の人が行った場合には医師法違反であるという状況に変わりはありません。
同じ針を用いて、色素を皮膚に注入させる行為であるにもかかわらず、扱いが違うというのが現実です。
ある行為が医行為に該当するかどうかは、行為そのもののみならず、社会の受け止め方も影響しており、今後、この決定を受けて行政解釈が見直される可能性はゼロとは言い切れません。
施術する側も、施術される側も、その行為が医師でなければできない医行為にあたるとされるのか、引き続き世の中の動向に注目する必要があります。
※本記事の記載内容は、2022年11月現在の法令・情報等に基づいています。
医師法上、医師でない者が医業を行ってはならないと定めれられています(医師法17条)。
医業とは、医行為を反復継続して行うことです。
これに違反して医師以外の人が医行為をした場合、3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金という刑罰が下されます(医師法第31条)。
そして、医行為の意義や、医行為の該当性を判断する基準を示した最高裁決定が存在します(最決令和2年9月16日・刑集74巻6号581頁)。
この決定によると、医行為とは、『医療及び保健指導に属する行為にうち、医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為』のことです。
そして、医行為に該当するかについて、(1)行為の方法(2)作用のみならず、(3)その目的(4)行為者と相手方との関係(5)行為が行われる際の具体的な状況(6)実情(7)社会における受け止め方等といった複数の観点から考慮したうえで、社会通念に照らして判断すべきとされました。
過去の事案では、彫り師(医師免許を持たない人)によるタトゥー施術行為が医行為に該当し、医師法違反にあたるかどうかが争われました。
そして最高裁は、上記判断基準にしたがって、タトゥー施術行為は、装飾的ないし象徴的な要素や美術的な意義がある社会的な風俗として受け止められてきたものであって、医療および保健指導に属する行為とは考えられてこなかったこと、医学とは異質の美術等に関する知識及び技能を要する行為であって、医師免許取得過程等でこれらの知識および技能を習得することは予定されていないこと、歴史的にも、長年にわたり医師免許を有しない彫り師が行ってきた実情があり、医師が独占して行う事態は想定し難いことを理由として、医行為には該当しないとの判断を下しました。
アートメイクは医行為?
この決定が出る数年前、厚生労働省は、針を用いて色素を皮膚に注入させるアートメイクを念頭に置いて、このような行為は医行為であるとの通知(平成13年11月8日医政医発第105号)を出しました。
針を用いて色素を皮膚に注入させることはタトゥーと同様です。
令和2年の最高裁決定を受けて、アートメイクにも影響があるのではないかと注視されています。
しかし、現時点でも、この通知は廃止されておらず、アートメイクは医師以外が行うことができない医行為とされています。
そのため、現時点では、医師のいないエステサロンなどでアートメイクを受けることはできず、またそのような施術を医師以外の人が行った場合には医師法違反であるという状況に変わりはありません。
同じ針を用いて、色素を皮膚に注入させる行為であるにもかかわらず、扱いが違うというのが現実です。
ある行為が医行為に該当するかどうかは、行為そのもののみならず、社会の受け止め方も影響しており、今後、この決定を受けて行政解釈が見直される可能性はゼロとは言い切れません。
施術する側も、施術される側も、その行為が医師でなければできない医行為にあたるとされるのか、引き続き世の中の動向に注目する必要があります。
※本記事の記載内容は、2022年11月現在の法令・情報等に基づいています。