外注した動画は誰のもの? 意外と知らない動画の著作権について
商品のプロモーションや会社のブランディングの一環として、自社のWebサイトや動画サイトで公表するための動画を制作する企業が増えています。
制作作業については、社外の事業者に業務委託する場合もありますが、動画の著作権については留意する必要があります。
今回は、外部に発注して制作された動画の著作権について解説します。
制作作業については、社外の事業者に業務委託する場合もありますが、動画の著作権については留意する必要があります。
今回は、外部に発注して制作された動画の著作権について解説します。
基本的に著作者は総監督的立場の人
はじめに、動画の著作権が何によって裏付けられているのかについて、説明します。
まず前提として、動画は、著作権法上は、『映画の著作物』(著作権法10条1項7号)に該当します。
”映画”とあるので誤解を招きやすいのですが、映画の著作物の範囲には、映画の効果に類似する視覚的または視聴覚的効果を生じさせる方法で表現されたものも含まれるとされているため、ドラマやアニメのような映像作品のほかに、ゲームなどもこれに含まれます。
映画の著作者は、『制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者』であるとされています(著作権法16条)。
これがどういうことかを、詳しく説明していきましょう。
たとえば、会社が外部のクリエイターAさんに動画の制作を業務委託した場合を例にとってみます。
発注された動画は、クリエイターのAさんが完成まで責任を持ち、完成したものを無事納品できたとしましょう。
だからといって、Aさんが直ちにその動画の著作者になるわけではありません。
動画の制作は、その内容や予算規模などにもよりますが、通常はAさん一人で行うとは限らず、監督ないしディレクター、助監督や撮影助手、美術担当、音響担当、演者などいろいろな役割の人が関与します。
そのなかでも、著作者になるのは全体的形成に創作的に寄与した者、具体的には、動画制作の総監督的立場の人間(監督、ディレクター)になるとされています。
先の想定事例では、動画を発注したクリエイターのAさんがそのような役割を担っていれば、Aさんが著作者ということになるでしょう。
動画の著作権は著作者に帰属しないことが多い
しかし、ややこしいのは、動画の著作者が著作権を当然に保有するかというと、そうではないことです。
というのも、著作権法29条は、『著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、映画製作者に映画の著作権が帰属する』と規定しているからです。
この場合、映画製作者とは、発注した企業、つまり自社になります。
著作者である監督やディレクターが著作物の製作に参加することを約束していないということはあまり想定できないので、映画の著作権は、映画製作者(発注した会社)に帰属することになると考えられます。
ただし、注意が必要なのは、著作権法上は著作者には『著作者人格権』という他人に譲渡できない固有の権利が存在することです。
具体的には、氏名表示権(動画に著作者としてのクレジット表記をして貰う権利)、同一性保持権(むやみに改変されない権利)、公表権(公衆に提供・提示する権利)が保証されています。
このうち公表権については、映画の著作権の場合、著作権が映画製作者にあるものとされるときは映画製作者が公表することに同意したと推定されることになるため、制限はかかりません。
しかし、氏名表示権、同一性保持権は著作者が有するままなので、権利を侵害しないように利用する必要があります。
権利帰属については契約書で明確化しよう
このように、映画の著作者、著作権に関しては規定が複雑であり、著作物に関するすべての権利が誰かに単一に帰属することはありません。
受発注の内容・経緯や制作に関与する人間の役割、人数などの具体的事情が複雑な場合には、誰が映画製作者に当たるのかが不明確なために、権利帰属に関する紛争に発展することもありえます。
動画を社外に発注する際は、著作物についての権利に誤解が生じないように、あらかじめ契約書を作成し、そのなかで権利関係を明確に整理しておくことが重要です。
※本記事の記載内容は、2022年7月現在の法令・情報等に基づいています。
はじめに、動画の著作権が何によって裏付けられているのかについて、説明します。
まず前提として、動画は、著作権法上は、『映画の著作物』(著作権法10条1項7号)に該当します。
”映画”とあるので誤解を招きやすいのですが、映画の著作物の範囲には、映画の効果に類似する視覚的または視聴覚的効果を生じさせる方法で表現されたものも含まれるとされているため、ドラマやアニメのような映像作品のほかに、ゲームなどもこれに含まれます。
映画の著作者は、『制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者』であるとされています(著作権法16条)。
これがどういうことかを、詳しく説明していきましょう。
たとえば、会社が外部のクリエイターAさんに動画の制作を業務委託した場合を例にとってみます。
発注された動画は、クリエイターのAさんが完成まで責任を持ち、完成したものを無事納品できたとしましょう。
だからといって、Aさんが直ちにその動画の著作者になるわけではありません。
動画の制作は、その内容や予算規模などにもよりますが、通常はAさん一人で行うとは限らず、監督ないしディレクター、助監督や撮影助手、美術担当、音響担当、演者などいろいろな役割の人が関与します。
そのなかでも、著作者になるのは全体的形成に創作的に寄与した者、具体的には、動画制作の総監督的立場の人間(監督、ディレクター)になるとされています。
先の想定事例では、動画を発注したクリエイターのAさんがそのような役割を担っていれば、Aさんが著作者ということになるでしょう。
動画の著作権は著作者に帰属しないことが多い
しかし、ややこしいのは、動画の著作者が著作権を当然に保有するかというと、そうではないことです。
というのも、著作権法29条は、『著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、映画製作者に映画の著作権が帰属する』と規定しているからです。
この場合、映画製作者とは、発注した企業、つまり自社になります。
著作者である監督やディレクターが著作物の製作に参加することを約束していないということはあまり想定できないので、映画の著作権は、映画製作者(発注した会社)に帰属することになると考えられます。
ただし、注意が必要なのは、著作権法上は著作者には『著作者人格権』という他人に譲渡できない固有の権利が存在することです。
具体的には、氏名表示権(動画に著作者としてのクレジット表記をして貰う権利)、同一性保持権(むやみに改変されない権利)、公表権(公衆に提供・提示する権利)が保証されています。
このうち公表権については、映画の著作権の場合、著作権が映画製作者にあるものとされるときは映画製作者が公表することに同意したと推定されることになるため、制限はかかりません。
しかし、氏名表示権、同一性保持権は著作者が有するままなので、権利を侵害しないように利用する必要があります。
権利帰属については契約書で明確化しよう
このように、映画の著作者、著作権に関しては規定が複雑であり、著作物に関するすべての権利が誰かに単一に帰属することはありません。
受発注の内容・経緯や制作に関与する人間の役割、人数などの具体的事情が複雑な場合には、誰が映画製作者に当たるのかが不明確なために、権利帰属に関する紛争に発展することもありえます。
動画を社外に発注する際は、著作物についての権利に誤解が生じないように、あらかじめ契約書を作成し、そのなかで権利関係を明確に整理しておくことが重要です。
※本記事の記載内容は、2022年7月現在の法令・情報等に基づいています。