『法人版事業承継税制』の期限が1年延長、その影響は?
2022年度の税制改正によって、事業承継時の贈与税・相続税負担を実質ゼロにする、『法人版事業承継税制』の適用に必要な計画の提出期限が、2022年度末から2023年度末に延長されることになりました。
コロナ禍で売上が減少したことにより、企業が事業承継を後ろ倒しにする背景があり、円滑な事業承継を実施するための延長といえます。
今回は、法人版事業承継税制の概要と、延長による影響について説明します。
コロナ禍で売上が減少したことにより、企業が事業承継を後ろ倒しにする背景があり、円滑な事業承継を実施するための延長といえます。
今回は、法人版事業承継税制の概要と、延長による影響について説明します。
特例承継計画の提出期限は2024年3月31日まで
2008年に成立した経営承継円滑化法に基づき『事業承継税制』が創設されました。
これは、後継者が先代から自社の株などを譲り受けたり相続した際に、贈与税・相続税の納付を一部猶予するという、いわゆる優遇税制です。
この税制ではさらに、納税の猶予を受けていた後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除されることになり、話題になりました。
この制度に関しては、一般措置では、対象株式が総株式数の最大3分の2まで、納税猶予の割合も贈与税100%、相続税80%という制限がありました。
しかし2018年の税制改正で、贈与税・相続税の納税を全額猶予する10年間の『特例措置』が創設されました。
事業承継の際に引き継いだ全株式について、100%の納税が猶予されるという、極めて有利な条件が特徴です。
この特例措置を受けるためには、都道府県庁に『特例継承計画』を提出する必要があります。
この計画の提出期限は、本来であれば2023年3月末まででした。
しかし、コロナ禍の影響で事業承継が先送りになっている現状を踏まえ、今回の税制改正で、提出期限が2024年3月末まで延長されたのです。
ただし、気をつけたいのは、延長されるのは計画の提出期限であり、特例措置が適用される期間そのものは、延長されたわけではないということです。
適用期限そのものは、もとから10年間と決まっており、2018年1月1日~2027年12月31日までとなります。
適用期限の最終日は、2027年12月31日のまま変更されないため、注意してください。
また、事業承継税制には、法人向けのほか、個人版事業承継税制もあります。
今回の計画提出期限の延長は、あくまで法人向けの事業承継税制です。
個人版事業承継税制の確認申請期限は、従来通り2024年3月31日までになります。
成年年齢の引き下げによる影響
特例措置を受けるための特例承継計画は、提出期限の2024年3月31日までは、贈与や相続を受けたあとでも提出が可能です。
まずは特例承継計画を策定してから提出し、都道府県知事の確認を受けましょう。
その後、贈与の実施や相続が発生したら、再度、都道府県知事の認定を受け、認定書のコピーと共に、贈与税・相続税の申告書を税務署に提出することで猶予を受けることができます。
このほか、細かい部分では、事業継承税制の適用を受けるための後継者の要件が変更されました。
これは、4月から成年年齢が18歳になったことで、今まで20歳以上が後継者の要件となっていたところを、18歳に引き下げています。
つまり、令和4年4月1日以降は、株式等の贈与があった日に18歳以上であれば、事業承継税制の対象になります。
これから事業承継税制を利用するのであれば、覚えておきましょう。
事業承継税制は、贈与税や相続税の納税が猶予されると、納税財源を確保しなくてもよくなり、経営に集中できるというメリットがあります。
一方で、事業の継続が困難になって廃業したり、株式を他社に譲渡したりすると、猶予されていた分の税金に利息を付けて納付しなければいけません。
会社の経営状況や今後の見通しを立てたうえで、利用を検討しましょう。
※本記事の記載内容は、2022年6月現在の法令・情報等に基づいています。
2008年に成立した経営承継円滑化法に基づき『事業承継税制』が創設されました。
これは、後継者が先代から自社の株などを譲り受けたり相続した際に、贈与税・相続税の納付を一部猶予するという、いわゆる優遇税制です。
この税制ではさらに、納税の猶予を受けていた後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除されることになり、話題になりました。
この制度に関しては、一般措置では、対象株式が総株式数の最大3分の2まで、納税猶予の割合も贈与税100%、相続税80%という制限がありました。
しかし2018年の税制改正で、贈与税・相続税の納税を全額猶予する10年間の『特例措置』が創設されました。
事業承継の際に引き継いだ全株式について、100%の納税が猶予されるという、極めて有利な条件が特徴です。
この特例措置を受けるためには、都道府県庁に『特例継承計画』を提出する必要があります。
この計画の提出期限は、本来であれば2023年3月末まででした。
しかし、コロナ禍の影響で事業承継が先送りになっている現状を踏まえ、今回の税制改正で、提出期限が2024年3月末まで延長されたのです。
ただし、気をつけたいのは、延長されるのは計画の提出期限であり、特例措置が適用される期間そのものは、延長されたわけではないということです。
適用期限そのものは、もとから10年間と決まっており、2018年1月1日~2027年12月31日までとなります。
適用期限の最終日は、2027年12月31日のまま変更されないため、注意してください。
また、事業承継税制には、法人向けのほか、個人版事業承継税制もあります。
今回の計画提出期限の延長は、あくまで法人向けの事業承継税制です。
個人版事業承継税制の確認申請期限は、従来通り2024年3月31日までになります。
成年年齢の引き下げによる影響
特例措置を受けるための特例承継計画は、提出期限の2024年3月31日までは、贈与や相続を受けたあとでも提出が可能です。
まずは特例承継計画を策定してから提出し、都道府県知事の確認を受けましょう。
その後、贈与の実施や相続が発生したら、再度、都道府県知事の認定を受け、認定書のコピーと共に、贈与税・相続税の申告書を税務署に提出することで猶予を受けることができます。
このほか、細かい部分では、事業継承税制の適用を受けるための後継者の要件が変更されました。
これは、4月から成年年齢が18歳になったことで、今まで20歳以上が後継者の要件となっていたところを、18歳に引き下げています。
つまり、令和4年4月1日以降は、株式等の贈与があった日に18歳以上であれば、事業承継税制の対象になります。
これから事業承継税制を利用するのであれば、覚えておきましょう。
事業承継税制は、贈与税や相続税の納税が猶予されると、納税財源を確保しなくてもよくなり、経営に集中できるというメリットがあります。
一方で、事業の継続が困難になって廃業したり、株式を他社に譲渡したりすると、猶予されていた分の税金に利息を付けて納付しなければいけません。
会社の経営状況や今後の見通しを立てたうえで、利用を検討しましょう。
※本記事の記載内容は、2022年6月現在の法令・情報等に基づいています。