社会保険労務士法人なか/労働保険事務組合福働会/福働会中部支部

特定の建築物を建てる際に知っておきたい改正バリアフリー法

22.04.07
業種別【建設業】
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街中にある、公共性の高い建物の基準を定めているものが、『改正バリアフリー法』。
この法律は、街のバリアフリー化を進め、高齢者や障害者がスムーズに移動できるようにするためのものです。
たとえば一定の基準を満たす建築物は、設計・建築の際に、エレベーターの設置や通路の拡幅、各種設備の設置などでバリアフリー化する必要があります。
改正バリアフリー法について、建設業者が知っておきたいポイントを解説します。
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規制の対象となる建築物とは

高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(通称『バリアフリー法(バリアフリー新法)』)は、高齢者や障害者が街のなかをスムーズに移動できるよう整備することを目的としています。

そもそも、街のバリアフリーに関する法律は、病院や百貨店など不特定多数の人が利用する公共的な建築物を対象とした通称『ハートビル法』と、鉄道やバスなど公共機関を対象とする通称『交通バリアフリー法』が統合され、2006年に『高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律』として誕生しました。
さらに、2018年11月には、内容を一部改正した通称『改正バリアフリー法』が制定され、2021年4月1日から全面的に施行されました。

改正バリアフリー法では、基本理念の規定や、公共交通事業者等によるハードとソフトの一体化の推進、地域における重点的なバリアフリー化の推進、心のバリアフリーの推進などのほかに、『バリアフリー基準適合義務』の対象の拡大が図られています。

バリアフリー基準とは、改正バリアフリー法で定められている基準のことで、対象となる建築物を施工する際には、この基準を守る必要があります。
では、この『バリアフリー基準』とは、具体的にどのような内容なのでしょうか。

バリアフリー基準の対象となる建築物には、『特定建築物』と『特別特定建築物』があります。

特定建築物は、卸売市場、事務所、共同住宅、工場などの大勢の人が利用する施設で、特別特定建築物は、百貨店、マーケット、ホテル、飲食店、病院、特別支援学級など、不特定多数の利用や高齢者および障害者が主として利用する施設が指定されています

今回の改正では、この特別特定建築物に公立の小中学校が追加されることになりました。
また、建築物以外では、バス等の旅客の乗降のための道路施設である旅客特定車両停留施設や、貸切バス事業者なども、適合義務の対象となっています。


対象建築物ごとに守るべきバリアフリー基準

これらの対象となる建築物が守るべき基準には『建築物移動等円滑化基準(円滑化基準)』と『建築物移動等円滑化誘導基準(円滑化誘導基準)』があります。
前者が高齢者や障害者が円滑に利用するために守るべき“最低限の基準”で、後者は守ることが“望ましい基準”とされています

特定建築物は、新築、増築、改築、用途変更、修繕、模様替えを行う場合に、円滑化誘導基準への適合が求められており、円滑化基準については適合努力義務となっています。
一方、特別特定建築物については、面積が2,000㎡以上の建物に限り、新築、増築、改築、用途変更をする際に、必ず円滑化基準に適合させなければいけません。
また、面積が2,000㎡未満の特別特定建築物や、既存の特別特定建築物に関しても、円滑化基準への適合努力義務が生じます。
ただし、特別特定建築物の公衆トイレに関しては、面積が50㎡以上から円滑化基準への適合義務が発生するので注意が必要です。

この円滑化基準と円滑化誘導基準の違いは、法律で明確に定められています。

たとえば、建物の出入口については、車椅子で通れるくらいの幅を確保する必要があり、その幅も円滑化基準では80cm以上、円滑化誘導基準では90cm(直接地上に通じる場合は120cm)以上と定められています。
つまり、これから建てる面積が2,000㎡以上の特別特定建築物の出入口の幅は、最低でも80cm以上、できれば120cm以上が望ましいというわけです。

また、建物にトイレを設置する場合も、車椅子の方や、足腰の弱っている方も使えるように、十分な広さの設備を備えたトイレにする必要があります。
円滑化基準では、車椅子用のトイレの数を1つの建物につき1つと定めているのに対し、円滑化誘導基準では各階ごとに原則2%以上と定めています。

そのほかにも、改正バリアフリー法では、傾斜路や廊下、エレベーターや駐車場、浴室や客室などに円滑化基準と円滑化誘導基準が設けられています。
詳しくは、国土交通省のホームページで確認しましょう。

もし、基準に適合しないまま建設を進めると、立入検査が行われ、是正命令を受けることもあります。
対象となる建築物を建てる際には、基準が守れているかどうかを確認しながら、進めていくことが大切です。


※本記事の記載内容は、2022年4月現在の法令・情報等に基づいています。