損益の計算における発生主義・現金主義・実現主義の違いとは
企業会計では、一定の会計期間の損益を計算することを『期間損益計算』と呼びます。
3月31日が決算日であれば、前年の4月1日から3月31日までの1年間が会計期間となり、その1年間の会社の収益から費用を差し引くことで期間損益を求めることができます。
このとき、収益と費用を計上するタイミングによって『発生主義』『現金主義』『実現主義』という考え方が存在します。
企業の会計担当者にとって、会計の基礎となる3つの概念について解説します。
3月31日が決算日であれば、前年の4月1日から3月31日までの1年間が会計期間となり、その1年間の会社の収益から費用を差し引くことで期間損益を求めることができます。
このとき、収益と費用を計上するタイミングによって『発生主義』『現金主義』『実現主義』という考え方が存在します。
企業の会計担当者にとって、会計の基礎となる3つの概念について解説します。
現金主義はわかりやすい一方で弱点もある
一定の会計期間でどれだけ収益があったのか、どのくらい費用がかかったのかを知ることは、会社を運営していくうえで欠かせないことです。
会社には原則として、永続的に営業活動を行っていくという前提があります。
したがって、企業会計ではある一定の会計期間で区切り、その期間の損益を求めることで、その一定の会計期間の実績を表すのです。
会計期間は、決算日までの1年間で区切ることがほとんどですが、四半期(3カ月)や半年で区切ることもあります。
この会計期間の損益について、日本の会計基準では、収益を『実現主義』、費用を『発生主義』で計算することを原則としています。
会計基準は、課税所得を計算する際の収益認識の基本にもなるので、会計担当者は実現主義と発生主義、そして『現金主義』とはどういったものかを理解しておく必要があります。
まず、長い会計の歴史のなかで、最初に生まれたのは現金主義でした。
現金主義は、その名の通り、現金のやり取りが発生した段階で損益が確定するという考え方です。
たとえば、30万円の商品を仕入れて、50万円で売った場合に、仕入れのタイミングで仕入れ値の30万円を計上し、売ったタイミングで売上金の50万円を計上します。
とてもシンプルでわかりやすい考え方ですが、前払いや後払いの際に、正しく損益計算が行えないのが弱点です。
30万円で仕入れた50万円の商品を後払いで売り上げた場合、現金がまだ手元にないため、50万円を計上することができません。
そこで、現金のやり取りに関わらず、取引が発生した段階(収益や費用が発生した段階)で計上を行う発生主義という考え方が生まれました。
発生主義は、仕入れ値や経費、売上金が確定した段階で計上するため、前払いや後払いにも対応することができます。
前述の例では、後払いであっても50万円の商品を売った段階で売上金を計上できることになります。
また、発生主義を別の言い方に置き換えると、現金のやり取りに関係なく、『経済的な価値が発生して消費されたタイミング』で計上するやり方だといえます。
たとえば、商品を製造するための機械を50万円で購入した場合、現金主義では購入した段階で経費として50万円を計上します。
しかし、今後何年もその機械が商品を作り出すことを踏まえると、経済的な価値が発生して、消費されたタイミングは毎年訪れることになります。
そこで、発生主義では『減価償却』という方法で費用の計上を行います。
この減価償却が発生する資産のことを減価償却資産と呼び、一般的には時間の経過によってその価値が減っていく機械設備や器具、備品などが該当します。
減価償却では、これらの減価償却資産の取得に使った費用を、一定の方法によって各年分の必要経費として配分して手続をします。
たとえば、機械の耐用年数が5年であれば、1年ごとに10万円ずつ、5年に渡って減価償却費として計上していくことになります。
発生主義で経理処理をすれば、一見問題なさそうに思えるかもしれません。
ところがすべてに発生主義を適用すると、収益に関しては『未実現の収益を計上してはいけない』という企業会計原則のルールに抵触してしまいます。
つまり売上の立っていない収益(実現されていない収益)は、その会計期間の収益としては認められないということです。
そこで、日本の会計基準では、収益の計上に関して実現主義が採用されています。
実現主義は、収益の計上日は商品の販売やサービスの提供を実現した日となります。
具体的には「販売した日」や「提供した日」です。
たとえば、60万円の商品の発注を受けて、20万円の手付金を受け取ったとします。
このとき、発生主義であれば60万円をそのまま計上しますが、実現主義では手付金の20万円を前受金として計上します。
商品を取引先に受け渡した時点で60万円の売上を計上し、手付金20万円(前受金)との相殺と、残りの40万円は売掛金として仕訳します。
このように、より正確な期間損益計算ができるのが、実現主義の特徴です。
前述した通り、日本の会計基準では、収益は実現主義、費用は発生主義で計上します。
それぞれを計上するタイミングをよく理解して、間違いのないように会計処理を行っていきましょう。
※本記事の記載内容は、2022年3月現在の法令・情報等に基づいています。
一定の会計期間でどれだけ収益があったのか、どのくらい費用がかかったのかを知ることは、会社を運営していくうえで欠かせないことです。
会社には原則として、永続的に営業活動を行っていくという前提があります。
したがって、企業会計ではある一定の会計期間で区切り、その期間の損益を求めることで、その一定の会計期間の実績を表すのです。
会計期間は、決算日までの1年間で区切ることがほとんどですが、四半期(3カ月)や半年で区切ることもあります。
この会計期間の損益について、日本の会計基準では、収益を『実現主義』、費用を『発生主義』で計算することを原則としています。
会計基準は、課税所得を計算する際の収益認識の基本にもなるので、会計担当者は実現主義と発生主義、そして『現金主義』とはどういったものかを理解しておく必要があります。
まず、長い会計の歴史のなかで、最初に生まれたのは現金主義でした。
現金主義は、その名の通り、現金のやり取りが発生した段階で損益が確定するという考え方です。
たとえば、30万円の商品を仕入れて、50万円で売った場合に、仕入れのタイミングで仕入れ値の30万円を計上し、売ったタイミングで売上金の50万円を計上します。
とてもシンプルでわかりやすい考え方ですが、前払いや後払いの際に、正しく損益計算が行えないのが弱点です。
30万円で仕入れた50万円の商品を後払いで売り上げた場合、現金がまだ手元にないため、50万円を計上することができません。
そこで、現金のやり取りに関わらず、取引が発生した段階(収益や費用が発生した段階)で計上を行う発生主義という考え方が生まれました。
発生主義は、仕入れ値や経費、売上金が確定した段階で計上するため、前払いや後払いにも対応することができます。
前述の例では、後払いであっても50万円の商品を売った段階で売上金を計上できることになります。
また、発生主義を別の言い方に置き換えると、現金のやり取りに関係なく、『経済的な価値が発生して消費されたタイミング』で計上するやり方だといえます。
たとえば、商品を製造するための機械を50万円で購入した場合、現金主義では購入した段階で経費として50万円を計上します。
しかし、今後何年もその機械が商品を作り出すことを踏まえると、経済的な価値が発生して、消費されたタイミングは毎年訪れることになります。
そこで、発生主義では『減価償却』という方法で費用の計上を行います。
この減価償却が発生する資産のことを減価償却資産と呼び、一般的には時間の経過によってその価値が減っていく機械設備や器具、備品などが該当します。
減価償却では、これらの減価償却資産の取得に使った費用を、一定の方法によって各年分の必要経費として配分して手続をします。
たとえば、機械の耐用年数が5年であれば、1年ごとに10万円ずつ、5年に渡って減価償却費として計上していくことになります。
発生主義で経理処理をすれば、一見問題なさそうに思えるかもしれません。
ところがすべてに発生主義を適用すると、収益に関しては『未実現の収益を計上してはいけない』という企業会計原則のルールに抵触してしまいます。
つまり売上の立っていない収益(実現されていない収益)は、その会計期間の収益としては認められないということです。
そこで、日本の会計基準では、収益の計上に関して実現主義が採用されています。
実現主義は、収益の計上日は商品の販売やサービスの提供を実現した日となります。
具体的には「販売した日」や「提供した日」です。
たとえば、60万円の商品の発注を受けて、20万円の手付金を受け取ったとします。
このとき、発生主義であれば60万円をそのまま計上しますが、実現主義では手付金の20万円を前受金として計上します。
商品を取引先に受け渡した時点で60万円の売上を計上し、手付金20万円(前受金)との相殺と、残りの40万円は売掛金として仕訳します。
このように、より正確な期間損益計算ができるのが、実現主義の特徴です。
前述した通り、日本の会計基準では、収益は実現主義、費用は発生主義で計上します。
それぞれを計上するタイミングをよく理解して、間違いのないように会計処理を行っていきましょう。
※本記事の記載内容は、2022年3月現在の法令・情報等に基づいています。