介護中の労働者を支援するための介護休業制度を正しく理解する
厚生労働省の雇用動向調査によると、2019年に個人的理由で離職した人のうち、家族の介護や看護のために離職した人の数は、10万人近くにも上ることがわかりました。
今後もこの傾向は加速していくと予想されています。
いわゆる介護離職者のなかには企業の中核を担う人材も多く、企業の成長や発展のためには看過できない問題であるともいえます。
そこで今回は、介護離職を防止する目的で、育児・介護休業法で定められた『介護休業制度』について解説します。
今後もこの傾向は加速していくと予想されています。
いわゆる介護離職者のなかには企業の中核を担う人材も多く、企業の成長や発展のためには看過できない問題であるともいえます。
そこで今回は、介護離職を防止する目的で、育児・介護休業法で定められた『介護休業制度』について解説します。
介護休業制度を利用できる労働者の条件
介護休業制度とは、労働者が事業者に申し出ることで、要介護状態にある家族一人につき、通算で93日までの休みを取得できる制度のことです。
休業期間中は、雇用保険から休業前の賃金の67%が介護休業給付金としてハローワークから労働者に支払われます。
制度の対象となる労働者は、正社員だけに限らず契約社員や派遣社員、アルバイトやパートなど雇用保険に加入している従業員も含み、事業者は従業員から制度利用の申し出があった場合、断ることはできません。
制度を導入するためには就業規則への記載義務がありますが、たとえ記載がなかったとしても、申し出があれば介護休業を認めなければならず、また速やかに就業規則に記載する必要があります。
ただし、有期契約労働者に関しては、介護休業を申し出た時点で以下の条件に該当している必要があり、また、日雇い労働者は介護休業をすることができないとされています。
●同一の事業主に1年以上雇用されている
●介護休業期間から93日を経過してから6カ月以降も雇用を継続する予定がある
しかし、有期契約労働者でこれらの要件を満たしていない場合でも、契約が実質的に正社員と変わらない状態であれば、制度の対象になります。
また、有期雇用労働者が介護休業を取得するには、次のいずれの要件も満たす必要があります。
(1) 入社1年以上であること
(2)介護休業開始予定日から93日経過する日から6か月を経過する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと
なお、令和4年4月1日からは、(1)の要件はなくなり、(2)の要件のみとなります。
また、有期契約労働者ではなくても、下記に該当する従業員については労使協定の締結により介護休業を拒むことができます。
●入社1年未満の従業員
●申し出から93日以内に雇用期間が終了することが明らかな従業員
●1週間の所定労働日数が2日以下の従業員
制度利用の申し出を受けた場合の対応
では、実際に制度の対象となる従業員から申し出があった場合、事業者はどのような対応を行えばよいのでしょうか。
まず、事業者は、対象となる従業員から、介護休業開始予定日の2週間前までに、以下の内容が記載された介護休業申出書を提出してもらいます。
(1)申出の年月日
(2)労働者の氏名
(3)介護対象の家族の氏名および労働者との続柄
(4)介護対象の家族が要介護状態にあること
(5)休業を開始しようとする日および休業を終了しようとする日
(6)介護対象の家族に係るこれまでの介護休業日数
介護休業申出書は、事業者が認める限り、FAXやメールで申請しても構いません。
また、同時に事業者は労働者に対して、対象の家族が要介護状態にあることを証明する書類の提出を求めることができます。
ただし、介護保険の要介護認定の結果通知書や医師の診断書の提出を制度利用のための条件にすることはできません。
介護休業制度の対象となる家族は、労働者の配偶者(事実婚を含む)、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母で、要介護状態とは、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態のことです。
つまり、これらに該当しない家族は介護休業の対象にはならないため、事業者は要件について留意しておく必要があります。
申出書を受理した事業者は、『介護休業申出を受けた旨』『介護休業開始予定日と介護休業終了予定日』『介護休業申出を拒む場合には、その旨およびその理由』を速やかに従業員に通知する必要があります。
通知する際は、間違いのないよう『介護休業取扱通知書』にこれらの要件をまとめ、従業員に渡し、保管しておいてもらいましょう。
さらに、育児・介護休業法では、事業者は制度利用の申し出をした労働者に対し、休業中における待遇に関する事項や休業後における賃金、配置その他の労働条件に関する事項等の取扱いを明示するように求めています。
そして、事業者は、介護休業制度を利用したことに対して、減給や降格、解雇などの不利益な取扱いをしないことはもちろん、社内でハラスメントなどが発生しないように注意しなければなりません。
介護休業制度は、大切な従業員を介護によって離職させないための制度です。
それらをよく理解し、導入・運用を進めていきましょう。
※本記事の記載内容は、2021年11月現在の法令・情報等に基づいています。
介護休業制度とは、労働者が事業者に申し出ることで、要介護状態にある家族一人につき、通算で93日までの休みを取得できる制度のことです。
休業期間中は、雇用保険から休業前の賃金の67%が介護休業給付金としてハローワークから労働者に支払われます。
制度の対象となる労働者は、正社員だけに限らず契約社員や派遣社員、アルバイトやパートなど雇用保険に加入している従業員も含み、事業者は従業員から制度利用の申し出があった場合、断ることはできません。
制度を導入するためには就業規則への記載義務がありますが、たとえ記載がなかったとしても、申し出があれば介護休業を認めなければならず、また速やかに就業規則に記載する必要があります。
ただし、有期契約労働者に関しては、介護休業を申し出た時点で以下の条件に該当している必要があり、また、日雇い労働者は介護休業をすることができないとされています。
●同一の事業主に1年以上雇用されている
●介護休業期間から93日を経過してから6カ月以降も雇用を継続する予定がある
しかし、有期契約労働者でこれらの要件を満たしていない場合でも、契約が実質的に正社員と変わらない状態であれば、制度の対象になります。
また、有期雇用労働者が介護休業を取得するには、次のいずれの要件も満たす必要があります。
(1) 入社1年以上であること
(2)介護休業開始予定日から93日経過する日から6か月を経過する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと
なお、令和4年4月1日からは、(1)の要件はなくなり、(2)の要件のみとなります。
また、有期契約労働者ではなくても、下記に該当する従業員については労使協定の締結により介護休業を拒むことができます。
●入社1年未満の従業員
●申し出から93日以内に雇用期間が終了することが明らかな従業員
●1週間の所定労働日数が2日以下の従業員
制度利用の申し出を受けた場合の対応
では、実際に制度の対象となる従業員から申し出があった場合、事業者はどのような対応を行えばよいのでしょうか。
まず、事業者は、対象となる従業員から、介護休業開始予定日の2週間前までに、以下の内容が記載された介護休業申出書を提出してもらいます。
(1)申出の年月日
(2)労働者の氏名
(3)介護対象の家族の氏名および労働者との続柄
(4)介護対象の家族が要介護状態にあること
(5)休業を開始しようとする日および休業を終了しようとする日
(6)介護対象の家族に係るこれまでの介護休業日数
介護休業申出書は、事業者が認める限り、FAXやメールで申請しても構いません。
また、同時に事業者は労働者に対して、対象の家族が要介護状態にあることを証明する書類の提出を求めることができます。
ただし、介護保険の要介護認定の結果通知書や医師の診断書の提出を制度利用のための条件にすることはできません。
介護休業制度の対象となる家族は、労働者の配偶者(事実婚を含む)、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母で、要介護状態とは、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態のことです。
つまり、これらに該当しない家族は介護休業の対象にはならないため、事業者は要件について留意しておく必要があります。
申出書を受理した事業者は、『介護休業申出を受けた旨』『介護休業開始予定日と介護休業終了予定日』『介護休業申出を拒む場合には、その旨およびその理由』を速やかに従業員に通知する必要があります。
通知する際は、間違いのないよう『介護休業取扱通知書』にこれらの要件をまとめ、従業員に渡し、保管しておいてもらいましょう。
さらに、育児・介護休業法では、事業者は制度利用の申し出をした労働者に対し、休業中における待遇に関する事項や休業後における賃金、配置その他の労働条件に関する事項等の取扱いを明示するように求めています。
そして、事業者は、介護休業制度を利用したことに対して、減給や降格、解雇などの不利益な取扱いをしないことはもちろん、社内でハラスメントなどが発生しないように注意しなければなりません。
介護休業制度は、大切な従業員を介護によって離職させないための制度です。
それらをよく理解し、導入・運用を進めていきましょう。
※本記事の記載内容は、2021年11月現在の法令・情報等に基づいています。