売上計上の基準に新ルール!『新収益認識基準』を理解しよう
2021年4月から、『新収益認識基準』が適用開始となりました。
『新収益認識基準』とは、売上の計上を行うタイミングを定めたもので、このルールが2018年3月に改められ、2021年4月より大企業は強制適用、中小企業は任意適用となっています。
任意である以上、中小企業にとって今すぐに大きな影響があるとは言えませんが、取引先との関係上、知識が必要になることもあるため、押さえておいた方がよい知識です。
今回は、新収益認識基準が定められた背景や、その内容について説明します。
『新収益認識基準』とは、売上の計上を行うタイミングを定めたもので、このルールが2018年3月に改められ、2021年4月より大企業は強制適用、中小企業は任意適用となっています。
任意である以上、中小企業にとって今すぐに大きな影響があるとは言えませんが、取引先との関係上、知識が必要になることもあるため、押さえておいた方がよい知識です。
今回は、新収益認識基準が定められた背景や、その内容について説明します。
新収益認識基準が制定されたねらい
収益認識基準について、従来は『売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る』とだけ定められていて、詳細なルールがない状態でした。
この企業会計原則が公示された1949年以降、各企業は長年にわたり、『実現主義の原則に従い』、それぞれのタイミングで売上の計上を行ってきました。
商品の出荷時あるいは納品時など、商取引によって収益が実現したと考えられるタイミングを任意に設定し、その基準により計上した売上を財務諸表に記録していたのです。
しかし、投資を呼び込むという観点では、このやり方に不都合が出てきました。
たとえば、同じ商品を取り扱う企業でも、商品の出荷時に売上を計上するA社と、商品が納品された段階で売上を計上するB社では、財務諸表の内容が異なってしまいます。
その場合、同じ業種であるにもかかわらず、A社とB社の業績を正確に評価・比較することはできません。
これでは、投資家としても、どちらの企業が投資先として優れているのか、比較検討することが難しいといえます。
そこで政府は、財務諸表を作成するときの国際的なルールを定めたIFRS、いわゆる国際会計基準をベースに、新しい収益認識の基準を2018年に公表しました。
それが、新収益認識基準です。
この新収益認識基準は、2021年4月1日以降に始まる事業年度から、大企業で強制適用となりました。
一部の大企業では4月1日より前にすでに新収益認識基準を適用し、これに基づいた売上の計上が行われています。
実際にどのタイミングで売上を計上する?
では、新収益認識基準では、どのタイミングで売上の計上が行えばよいのでしょうか。
新収益認識基準では、『履行義務を充足した時』に収益を認識すると定めています。
履行義務とは商取引における『サービスを提供するという義務』のことで、充足とは実際にその義務を果たすという契約が履行されたことを意味します。
つまり、新収益認識基準では、サービスが提供され、支払いを受ける権利を得た時に売上を計上することになります。
そして、新収益認識基準では、収益を認識するために下記の5つのステップに沿うように定めています。
1. 契約の識別
契約に含まれる、商品やサービスの内容を確認します。
2. 履行義務の特定
契約のなかに、履行義務(顧客に提供する商品やサービス)がいくつあるかを特定します。
たとえば、業務用のパソコン1台を3年間の保証付きで取引先に納品したとすると、『1台のパソコンを納品すること』と『3年間保証すること』の、2つの履行義務があることになります。
履行義務には、ある時点で充足するものと、一定の期間に渡って充足するものがありますから、それらを分けなければなりません。
3. 取引価格の算定
取引の金額がいくらになるかを確認します。
先ほどの例でいえば、1台のパソコンと3年間保証の合計金額を算定することになります。
4. 履行義務に取引価格を配分
取引価格を履行義務ごとに配分します。
先ほどの例では、1台のパソコンと3年間保証のそれぞれの値段を算定することになります。
5. 履行義務の充足による収益の認識
それぞれの履行義務が充足したタイミングで、年度ごとに売上を計上していきます。
先ほどの例では、1台のパソコンは納品した段階で履行義務が充足するので、取引を果たした年度に計上します。
一方、3年間保証に関しては、当期・翌期、翌翌期の3期にわたって売上を計上することになります。
以上のように、新収益認識基準では、これまで各社がそれぞれのタイミングで行ってきた売上の計上を、履行義務が充足されたタイミングで行うことになります。
商品とサービスをセットで販売しているケースなどでは、それぞれを分けて考えることがポイントとなります。
新収益認識基準は、中小企業には任意適用となっていますが、大企業と取引のある企業では、取引先の売上計上時期がずれることで、自社に影響が出てくる可能性も十分にあります。
専門家などにも話を聞きながら、理解を深めていきましょう。
※本記事の記載内容は、2021年8月現在の法令・情報等に基づいています。
収益認識基準について、従来は『売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る』とだけ定められていて、詳細なルールがない状態でした。
この企業会計原則が公示された1949年以降、各企業は長年にわたり、『実現主義の原則に従い』、それぞれのタイミングで売上の計上を行ってきました。
商品の出荷時あるいは納品時など、商取引によって収益が実現したと考えられるタイミングを任意に設定し、その基準により計上した売上を財務諸表に記録していたのです。
しかし、投資を呼び込むという観点では、このやり方に不都合が出てきました。
たとえば、同じ商品を取り扱う企業でも、商品の出荷時に売上を計上するA社と、商品が納品された段階で売上を計上するB社では、財務諸表の内容が異なってしまいます。
その場合、同じ業種であるにもかかわらず、A社とB社の業績を正確に評価・比較することはできません。
これでは、投資家としても、どちらの企業が投資先として優れているのか、比較検討することが難しいといえます。
そこで政府は、財務諸表を作成するときの国際的なルールを定めたIFRS、いわゆる国際会計基準をベースに、新しい収益認識の基準を2018年に公表しました。
それが、新収益認識基準です。
この新収益認識基準は、2021年4月1日以降に始まる事業年度から、大企業で強制適用となりました。
一部の大企業では4月1日より前にすでに新収益認識基準を適用し、これに基づいた売上の計上が行われています。
実際にどのタイミングで売上を計上する?
では、新収益認識基準では、どのタイミングで売上の計上が行えばよいのでしょうか。
新収益認識基準では、『履行義務を充足した時』に収益を認識すると定めています。
履行義務とは商取引における『サービスを提供するという義務』のことで、充足とは実際にその義務を果たすという契約が履行されたことを意味します。
つまり、新収益認識基準では、サービスが提供され、支払いを受ける権利を得た時に売上を計上することになります。
そして、新収益認識基準では、収益を認識するために下記の5つのステップに沿うように定めています。
1. 契約の識別
契約に含まれる、商品やサービスの内容を確認します。
2. 履行義務の特定
契約のなかに、履行義務(顧客に提供する商品やサービス)がいくつあるかを特定します。
たとえば、業務用のパソコン1台を3年間の保証付きで取引先に納品したとすると、『1台のパソコンを納品すること』と『3年間保証すること』の、2つの履行義務があることになります。
履行義務には、ある時点で充足するものと、一定の期間に渡って充足するものがありますから、それらを分けなければなりません。
3. 取引価格の算定
取引の金額がいくらになるかを確認します。
先ほどの例でいえば、1台のパソコンと3年間保証の合計金額を算定することになります。
4. 履行義務に取引価格を配分
取引価格を履行義務ごとに配分します。
先ほどの例では、1台のパソコンと3年間保証のそれぞれの値段を算定することになります。
5. 履行義務の充足による収益の認識
それぞれの履行義務が充足したタイミングで、年度ごとに売上を計上していきます。
先ほどの例では、1台のパソコンは納品した段階で履行義務が充足するので、取引を果たした年度に計上します。
一方、3年間保証に関しては、当期・翌期、翌翌期の3期にわたって売上を計上することになります。
以上のように、新収益認識基準では、これまで各社がそれぞれのタイミングで行ってきた売上の計上を、履行義務が充足されたタイミングで行うことになります。
商品とサービスをセットで販売しているケースなどでは、それぞれを分けて考えることがポイントとなります。
新収益認識基準は、中小企業には任意適用となっていますが、大企業と取引のある企業では、取引先の売上計上時期がずれることで、自社に影響が出てくる可能性も十分にあります。
専門家などにも話を聞きながら、理解を深めていきましょう。
※本記事の記載内容は、2021年8月現在の法令・情報等に基づいています。