社会保険労務士法人なか/労働保険事務組合福働会/福働会中部支部

夫婦が別居する場合、配偶者の生活費を負担すべき?

21.03.09
ビジネス【法律豆知識】
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めでたく結婚した二人でも、その後に仲違いし、別居に至ってしまうことは珍しいことではありません。
ただし、別居となると、配偶者の収入に頼っていたほうは生活に困る可能性があります。
そこで、夫婦が別居した場合には、互いの生活を維持するため、収入の多いほうが少ないほうに対して生活費を支払う義務を負うことが法律で定められています。
この生活費を、法的には『婚姻費用』いいます。
今回は、この婚姻費用についての基本的な知識を解説していきます。
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別居した夫婦に生じる『婚姻費用の分担義務』

婚姻関係にある夫婦は、互いに扶養義務を負っています。
そのため、夫婦が別居した場合でも、夫婦の生活費については、その夫婦の資産・収入・社会的地位等の事情を考慮して、通常の社会生活を維持するために互いに分担するものとされています。
このことから、夫婦が別居した場合、収入の多いほうが少ないほうに対して生活費を支払う義務を負います。
この生活費を支払う義務を『婚姻費用の分担義務』といいます。


婚姻費用の額はどのように算定される?

夫婦において婚姻費用の分担義務を負う者は、相手方に対して原則として毎月、婚姻費用を支払うことになります。
毎月、それなりの金額のやりとりになるため、その金額がいくらになるかは、双方にとって重要な問題です。

そこで、どのようにして婚姻費用の分担額が算定されるかが問題となります。
これについては、厳密には計算式が存在するものの、通常は『婚姻費用算定表』(裁判所のWebサイトで公表)という表を用いて簡易に算定されます。
この算定表には、縦軸には婚姻費用を支払う義務がある者の年収、横軸には婚姻費用を受け取る権利者の年収が記載されており、双方の年収額が交差した場所にある金額が、標準的な婚姻費用の額となります。
ちなみに、この年収というのは、確定申告書の『収入金額等』という欄や、源泉徴収票の『支払金額』欄に記載されている数字です。

この算定表は、家庭裁判所でも用いられており、婚姻費用分担調停などによって婚姻費用の額が争われるケースでは、概ね、算定表どおりの金額が決められることが多いです。
婚姻費用を支払う者の年収が多ければ多いほど、婚姻費用を受け取る者の年収が少なければ少ないほど、支払う婚姻費用の金額は大きくなります。
また、夫婦のみなのか、子どもが何人いるのかによってもその金額は異なります。


婚姻費用の支払義務者が浮気をした場合

婚姻費用の支払義務は、夫婦の婚姻関係が継続する限り、失われません。
したがって、離婚が成立するまでは、別居中であろうとも夫婦の内、収入の多いほうは、婚姻費用を支払い続けなければなりません。

もし夫婦の片方が、不貞行為を行った場合、その人は法律上『有責配偶者』となります。
そして、有責配偶者からの離婚請求というのは、かなり長い別居期間がない限り認められません
通常は、別居開始から3年くらい経過すると離婚請求が認められる傾向にあるのですが、有責配偶者からの離婚請求は、場合によっては、別居期間が10年近くないと認められないこともあります。
そうなると、婚姻費用の支払い義務者は10年間、婚姻費用を支払い続けることになります。

婚姻費用の支払義務者が支払う婚姻費用の額が大きいと、その出費はとてつもない金額になる可能性もあります。

婚姻費用は、毎月支払われるのが原則なので、金額や離婚可能な別居期間等について、法的な知識がないと、支払う金額が非常に大きくなることもあり、注意が必要です。
このような事態にならないのが一番ではありますが、もしもの時のために知っておいたほうがよいでしょう。


※本記事の記載内容は、2021年3月現在の法令・情報等に基づいています。