2021年1月施行、派遣労働者からの苦情対応を派遣先にも義務化!
2021年1月から施行された改正派遣法では、派遣労働者が就業する『派遣先』の企業に対する苦情の処理についての規定が盛り込まれました。
これまでの派遣法の改正では、そのほとんどが『派遣元』に関する規定の改正でしたが、今回の改正により、派遣先企業は、派遣労働者から労働時間、休憩、休日、育児・介護休業などの苦情や相談を受けた場合に主体的に対応しなければならないことが定められました。
今回は、派遣先に求められる苦情処理について解説します。
これまでの派遣法の改正では、そのほとんどが『派遣元』に関する規定の改正でしたが、今回の改正により、派遣先企業は、派遣労働者から労働時間、休憩、休日、育児・介護休業などの苦情や相談を受けた場合に主体的に対応しなければならないことが定められました。
今回は、派遣先に求められる苦情処理について解説します。
派遣法改正によって派遣先に求められること
派遣労働者を保護するための法律である『派遣法』は、正式名称を『労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律』といいます。
これまでに幾度か改正が行われており、2020年には派遣労働者の『同一労働同一賃金』の実現に向けての改正が行われました。
さらに2021年1月および4月にも改正事項が施行されています。
2021年1月に施行されたのは、
●派遣元が派遣労働者に対して派遣元で行われる教育訓練について、雇い入れ時説明することを義務化する
●これまでは書面での交付が義務付けられていた、派遣元と派遣先が交わす労働者派遣契約に関して、電磁的記録で作成することを可能とする
などの事項のほか、
●労働基準法・労働安全衛生法・育児・介護休業法などの労働関係法令に関する苦情については、派遣先も誠実かつ主体的に対応しなければならない
という、派遣先に関する規定も含まれています。これについて、詳しく見ていきましょう。
『苦情処理の義務化』とはどのような内容か
これまで派遣労働者は、差別的な扱いや労働法に反した扱いを受けた際、派遣元に苦情を訴えていましたが、改正によって派遣先もその苦情に対応しなければならないと定められました。
正社員と異なる扱いをする不合理な待遇差などは、そもそも法令で禁止されており、苦情を受けた場合にはすみやかに対処しなければいけません。
ほかにも、最初に説明していた業務と違う仕事を任されていたり、悪化した職場の人間関係の改善を怠ったりといったことが、苦情につながる可能性もあります。
また、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産あるいは育児休業等に関するハラスメント、パワーハラスメント、障害のある派遣労働者が能力を発揮するうえで支障となっている事情に関するものなどの苦情もあるでしょう。
これらについて、派遣先にも適切な対応が求められるようになったのです。
派遣法の第40条第1項で『派遣先は、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者から当該派遣就業に関し、苦情の申し出を受けたときは、当該苦情の内容を当該派遣元事業主に通知するとともに、当該派遣元事業主との密接な連携の下に、誠意をもって、遅滞なく、当該苦情の適切かつ迅速な処理を図らなければならない』と定められています。
苦情を受けた場合には派遣元と連携しながら、スピード感をもって対応する必要があります。
派遣法では、派遣元と派遣先は、苦情の窓口となる担当者を定めることになっており、あらかじめ派遣元との連携方法を決めておかなければいけません。
また、派遣元は派遣労働者を受け入れる際に、苦情の窓口や連携方法などを説明する義務もあります。
派遣労働者から苦情を受けたら……
実際に苦情を受けた場合、派遣先の担当者は派遣元に連絡すると同時に、派遣先管理台帳に苦情を受けた年月日や苦情の内容、苦情の処理状況を記載し、その内容を派遣元にも通知しなければいけません。
ただし、派遣先がその場で解決できてしまうような、軽微な苦情であれば、派遣元に通知する必要はありません。
苦情の原因が、派遣先だけではなく、派遣元などにもある場合は、両者が連携を取り、派遣労働者と面談の機会を設けるなどして、苦情の対処にあたることが求められます。
一般的に、派遣労働者が派遣先に苦情を申し出るというのは、とても勇気が必要なことです。
だからこそ、派遣先は苦情があれば真摯に耳を傾け、派遣労働者に寄り添うような態度で接しなければ、本当の意味で問題を解決することはできません。
苦情の原因が、派遣先や派遣元、もしくは派遣労働者自身にある場合も考えられますので、お互いに歩み寄りながら、解決を目指していく必要があります。
そして、派遣法では『苦情の申し出を理由とする不利益な取り扱い』も禁止されています。
したがって、苦情の申し出を理由に、派遣元に派遣労働者の交代を求めたり、仕事量を増やしたりなどの不利益な扱いをしてはいけません。
また、『派遣元と契約の更新を行わない』といった、間接的に派遣労働者の不利益となるような行為も禁止されています。
苦情の内容は派遣労働者によって異なり、その内容もさまざまなので、画一的に対応できるものではありません。
派遣先の企業は、一つひとつのケースと真摯に向き合い、派遣元と連携しながら、責任感を持って対応していきましょう。
※本記事の記載内容は、2021年3月現在の法令・情報等に基づいています。
派遣労働者を保護するための法律である『派遣法』は、正式名称を『労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律』といいます。
これまでに幾度か改正が行われており、2020年には派遣労働者の『同一労働同一賃金』の実現に向けての改正が行われました。
さらに2021年1月および4月にも改正事項が施行されています。
2021年1月に施行されたのは、
●派遣元が派遣労働者に対して派遣元で行われる教育訓練について、雇い入れ時説明することを義務化する
●これまでは書面での交付が義務付けられていた、派遣元と派遣先が交わす労働者派遣契約に関して、電磁的記録で作成することを可能とする
などの事項のほか、
●労働基準法・労働安全衛生法・育児・介護休業法などの労働関係法令に関する苦情については、派遣先も誠実かつ主体的に対応しなければならない
という、派遣先に関する規定も含まれています。これについて、詳しく見ていきましょう。
『苦情処理の義務化』とはどのような内容か
これまで派遣労働者は、差別的な扱いや労働法に反した扱いを受けた際、派遣元に苦情を訴えていましたが、改正によって派遣先もその苦情に対応しなければならないと定められました。
正社員と異なる扱いをする不合理な待遇差などは、そもそも法令で禁止されており、苦情を受けた場合にはすみやかに対処しなければいけません。
ほかにも、最初に説明していた業務と違う仕事を任されていたり、悪化した職場の人間関係の改善を怠ったりといったことが、苦情につながる可能性もあります。
また、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産あるいは育児休業等に関するハラスメント、パワーハラスメント、障害のある派遣労働者が能力を発揮するうえで支障となっている事情に関するものなどの苦情もあるでしょう。
これらについて、派遣先にも適切な対応が求められるようになったのです。
派遣法の第40条第1項で『派遣先は、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者から当該派遣就業に関し、苦情の申し出を受けたときは、当該苦情の内容を当該派遣元事業主に通知するとともに、当該派遣元事業主との密接な連携の下に、誠意をもって、遅滞なく、当該苦情の適切かつ迅速な処理を図らなければならない』と定められています。
苦情を受けた場合には派遣元と連携しながら、スピード感をもって対応する必要があります。
派遣法では、派遣元と派遣先は、苦情の窓口となる担当者を定めることになっており、あらかじめ派遣元との連携方法を決めておかなければいけません。
また、派遣元は派遣労働者を受け入れる際に、苦情の窓口や連携方法などを説明する義務もあります。
派遣労働者から苦情を受けたら……
実際に苦情を受けた場合、派遣先の担当者は派遣元に連絡すると同時に、派遣先管理台帳に苦情を受けた年月日や苦情の内容、苦情の処理状況を記載し、その内容を派遣元にも通知しなければいけません。
ただし、派遣先がその場で解決できてしまうような、軽微な苦情であれば、派遣元に通知する必要はありません。
苦情の原因が、派遣先だけではなく、派遣元などにもある場合は、両者が連携を取り、派遣労働者と面談の機会を設けるなどして、苦情の対処にあたることが求められます。
一般的に、派遣労働者が派遣先に苦情を申し出るというのは、とても勇気が必要なことです。
だからこそ、派遣先は苦情があれば真摯に耳を傾け、派遣労働者に寄り添うような態度で接しなければ、本当の意味で問題を解決することはできません。
苦情の原因が、派遣先や派遣元、もしくは派遣労働者自身にある場合も考えられますので、お互いに歩み寄りながら、解決を目指していく必要があります。
そして、派遣法では『苦情の申し出を理由とする不利益な取り扱い』も禁止されています。
したがって、苦情の申し出を理由に、派遣元に派遣労働者の交代を求めたり、仕事量を増やしたりなどの不利益な扱いをしてはいけません。
また、『派遣元と契約の更新を行わない』といった、間接的に派遣労働者の不利益となるような行為も禁止されています。
苦情の内容は派遣労働者によって異なり、その内容もさまざまなので、画一的に対応できるものではありません。
派遣先の企業は、一つひとつのケースと真摯に向き合い、派遣元と連携しながら、責任感を持って対応していきましょう。
※本記事の記載内容は、2021年3月現在の法令・情報等に基づいています。