社会保険労務士法人なか/労働保険事務組合福働会/福働会中部支部

広告で『炎上』を起こさないためにできることとは

21.03.09
ビジネス【マーケティング】
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インターネット上で、不適切な発言や不祥事などが発覚すると、批判や非難が殺到して、いわゆる『炎上』状態になることがあります。
これらは必ずしも正当な批判ではないこともありますが、特定の層への配慮が足りなかったり、言葉選びを誤ったりした結果、せっかく作った広告やキャンペーンが中止になってしまうことも起こり得ます。
なるべくなら事前に防ぎたいところです。
炎上を起こさないためには、どんなことに気をつければよいのでしょうか。
実例を出しながら解説していきます。
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過去に炎上した広告やキャンペーン

企業のマーケティング担当者は、広告やキャンペーンを立案して、発表するまでの間に、その成果物が本当に消費者の心をつかめるのかを考えなくてはいけません。
それに加えて、最近では批判やクレームの的にならないかをしっかりと精査する必要も出てきました。

炎上した広告に関しては、企業側が意図的に炎上させようとしているわけではなく、結果的に炎上してしまったものがほとんどです。
とはいえ、過去には人種差別や性差別を想起させるものや、個人の性的指向を揶揄しているもの、文化を盗用しているものなどが炎上してしまうケースが何度もありました。
そうしたものは、広告やキャンペーンでは一番に避けなければならず、広報担当者には、慎重な姿勢が求められます。

2020年には、東洋水産の『マルちゃん正麺』のPR漫画が炎上しました。
漫画では、母親の留守中に子供と父親がインスタントラーメンを作って食べ、家に帰ってきた母親が食べ終わった食器を洗うというものでした。
父親が食器を洗わず、母親が食器を洗う描写が物議を醸し、炎上に発展。
擁護意見などもあったものの、東洋水産は対応を迫られました。
漫画では、父親も母親の隣で皿を拭いている描写があり、夫婦で家事を行っているという表現も提示されてはいましたが、結果的には家事を“手伝う”男性と、家事をして“当たり前”の女性という構図があるように見えてしまい、「男女差別」「不快だ」という批判が集まってしまったのです。

このような性役割に関する偏見を指摘する炎上のほかに、海外では人種差別的な偏見を含んだ広告が炎上することもあります。
2017年にアメリカの日用品メーカー、ユニリーバが発表した『ダヴ』のCMは、黒人女性がシャツを脱ぐと白人女性に変わるというものでした。
この内容に批判が殺到し、ユニリーバは謝罪しました。

ほかにも、時代錯誤だったり、偏った思想が表現されていたり、モラルが欠如していたりすると解釈された広告やキャンペーンが、これまでいくつも炎上してきました。


差別的な表現がないかチェックを

企業側は、炎上を防ぐためにも、できるだけ差別と受け取られかねない表現は避ける必要があります。

1980年代にアメリカで生まれた『ポリティカル・コレクトネス』は、性別や人種、民族や宗教などに関する偏見や差別を防ぐために、公正で中立的な表現をするという概念です。
いまや、人種や民族のグローバル化の波に乗って、世界中で広がりを見せています。

たとえば、職業名では、性別を限定するようなものは避けられるようになりました。
看護婦は看護師、保母は保育士、スチュワーデスはキャビンアテンダントと、性別を限定しない名称で呼ばれるのが一般的になりました。

広告やキャンペーンを展開する上でもそれらの配慮が必要で、ビジネスマンであればビジネスパーソン、カメラマンであればフォトグラファーなどに言い替えたほうがよいとされています。
また、彼や彼女、私や僕などの代名詞も、特定のシチュエーションにはそぐわない場合があるので、注意しておきましょう。

もし、センシティブな内容が含まれていると思われる広告やキャンペーンを打つ場合は、企画段階から自社内で問題ないかをよく精査し、場合によっては第三者機関などにチェックしてもらってもよいでしょう。

そして、万が一炎上してしまった場合の対応策なども決めておく必要があります。
どのようなタイミングや方法で謝罪するのかをコンサルタントや専門家などとも相談しながら、想定を深めておけば、炎上した際も冷静に対処することができます。

SNSで炎上した案件を詳しく見てみると、実は批判的だったり、攻撃的だったりするコメントは、少数の人が大量に書き込んでいたということも多いそうです。
しかし、メディアなどで取り上げられることによって、炎上が広がり、収拾がつかない自体に発展することも少なくありません。
万が一のことではありますが、自分たちの広告やキャンペーンが批判の対象になってしまうというケースを想定し、予防策を講じながら、慎重に展開していくことが大切です。
 

※本記事の記載内容は、2021年3月現在の法令・情報等に基づいています。