社会保険労務士法人なか/労働保険事務組合福働会/福働会中部支部

紙の領収書の保存が不要になる『電子帳簿保存法』とは

21.02.09
ビジネス【税務・会計】
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テレワークが普及しつつある現在、紙で保存していた帳簿を電子データでの保存に切り替える企業が増えています。
こうした帳簿の電子化については、かなり前から関連法案の整備が進んでおり、2020年度税制改正では、より実用レベルで活用しやすい法律に改正されました。
今回は、電子帳簿導入の要点や導入のためのポイントなどについて解説します。
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コスト削減に大きく貢献する紙の電子化

これまで多くの企業で、税務関係の帳簿・請求書・領収書などの書類は、紙で管理されてきました。
税務上では帳簿などの書類を7年間(※)保管することが義務づけられているため、当然その書類を保管するためのスペースも、管理するコストもかかっています。
※:平成20年4月1日以後に終了した欠損金の生じた事業年度においては9年間、平成30年4月1日以後に終了した欠損金の生じた事業年度においては10年間に延長

そこで、政府は1998年に、国税関係の書類については電子データでの保管を認める、電子帳簿保存法を制定しました。
この法律では、『国税に関する会計帳簿や、請求書や領収書などを、紙ではなく電子データで保管してもよく、その電子データを原本として取り扱うことができる』ということが定められています。
最初からPCなどで作成した書類はもちろん、もともと紙だった請求書や領収書などをスキャンしたものも電子データとして認められることになりました。

その後、電子署名の省略が可能になり、デジタルカメラやスマートフォンなどで撮影された一定の要件を満たした請求書や領収書などの書類も電子データとして認められるようになるなど、電子帳簿に関連するさまざまな法律が、より実務的なものに変わってきています。

このように、スペースやコストの削減に大きく貢献する電子帳簿ですが、自社で導入する前に、所轄の税務署長に対して、申請書を提出する必要があります。

具体的には電子保存をはじめる3カ月前までに、申請書類や電子保存のためのシステム概要を記載した書類などを提出し、税務署長の承認を受けることで、はじめて電子帳簿を使い始めることができるようになるのです。
もし、これから電子帳簿を導入する際には、その点に留意しておいてください。


理解しておきたい『タイムスタンプ』のこと

請求書や領収書などの電子データ化によって利便性は高まりましたが、一方で、紙と比べて改ざんのリスクも大きくなりました。
そこで、電子帳簿保存法では、電子データにタイムスタンプを付与することを義務としています。

タイムスタンプとは、ある特定の時刻に電子データが存在し、特定の時刻以降に不正な改ざんや修正がされていないことを証明する技術です。
タイムスタンプに記載された情報を、オリジナルデータと照合すると、タイムスタンプが付けられた時刻から、データが改ざんされていないことを証明することができます。

したがって、タイムスタンプがあれば、その書類に改ざんが行われていないかどうかを証明することが可能になるのです。

このタイムスタンプについても、より実務に即した法改正が進められています。

2020年度税制改正では、電子データの保存条件が緩和され、領収書や請求書の発行者側と受領者側の両方でタイムスタンプの付与が必要だったところ、発行者側でタイムスタンプを付与していた場合には、受領者側で付与する必要はなくなりました。

ちなみに、このタイムスタンプを付与するには、タイムスタンプ発行のためのサービスを利用する必要があります。
複数のサービス事業者がタイムスタンプの発行ビジネスを手がけており、スタンプを付与する回数や、月額・年額利用など、さまざまなプランを提供しています。
導入を考えているならば、自社に合うプランを比較、検討してみるとよいでしょう。

ほかにも、クラウド型会計・経費精算システムを導入して、各電子データにタイムスタンプを付与するという方法もあります。

これまでの経費精算は、各社員が領収書をまとめ、紙やエクセル等に入力し、経理担当者が一つずつ手作業で確認しながら仕訳するのが一般的でした。
クラウド型会計・経費精算システムでは、社員が外出先で領収書をスマホなどで撮影し、アップロードすることで、自動的に仕訳が行われ、いつでも経費精算が可能というサービスが提供されています。
そして、スマホやスキャナで取り込んだ領収書をクラウドシステムにアップロードする際に、タイムスタンプを自動で付与してくれるため、その後、タイムスタンプを付与する手間が一切不要になるのです。

これまで行ってきた帳簿作業を変更するには手間や時間がかかります。
しかし、電子帳簿はスペースの確保やコストの削減、業務の効率化など、長い目で見れば大きなメリットをもたらしてくれます。
自社の実情を踏まえながら、導入を検討してみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2021年2月現在の法令・情報等に基づいています。