最低賃金が適用されない『減額特例』に該当する条件とは
最低賃金とは、最低賃金法に基づいて定められた賃金の最低限度額のことで、各都道府県によって決められている『地域別最低賃金』と、特定の産業ごとに決められている『特定最低賃金』の2種類があります。
たとえば、東京都における地域別最低賃金は、2020年10月現在、時給1,013円と定められており、これを下回っている場合には、違法となります。
しかし、特定の労働者に限り、この最低賃金が適用されない場合があります。
これを『最低賃金の減額の特例許可制度』といいます。
今回は、最低賃金法でも定められているこの制度について解説します。
たとえば、東京都における地域別最低賃金は、2020年10月現在、時給1,013円と定められており、これを下回っている場合には、違法となります。
しかし、特定の労働者に限り、この最低賃金が適用されない場合があります。
これを『最低賃金の減額の特例許可制度』といいます。
今回は、最低賃金法でも定められているこの制度について解説します。
最低賃金の減額の特例許可制度とは
最低賃金制度とは、国の定めた最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。
『地域別最低賃金』と『特定最低賃金』とでは、より高いほうが適用され、地域別最低賃金を下回っていた場合には、使用者に50万円以下の罰金が科せられ、特定最低賃金を下回っていた場合には、使用者に30万円以下の罰金が科されると定められています。
もし、最低賃金以下の金額しか支払われていない労働者がいた場合は、たとえ双方の合意があり、雇用契約が結ばれていたとしても、法律上は無効とされます。
雇用主は必ず、最低賃金を守らなければならないのです。
しかし、最低賃金には『特例』が存在します。
最低賃金を一律に適用すると、柔軟性を失い、かえって雇用の機会を奪いかねないため、特定の労働者については、個別に最低賃金よりも減額してよいとされているのです。
特例の対象となるのは、以下の条件に当てはまる労働者です。
(1)精神または身体の障害により著しく労働能力の低い者
(2)試の使用期間中の者
(3)基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている者のうち厚生労働省令で定める者
(4)軽易な業務に従事する者
(5)断続的労働に従事する者
このような場合、使用者が所轄の都道府県労働局長の許可を受けることを条件に、最低賃金を下回る報酬で雇用契約を結ぶことが許されています。
減額率については、厚生労働省によって上限が決まっています。
雇用主は減額対象となる労働者の職務の内容、職務の成果、労働能力、経験等を総合的に勘案して、減額率を定めることになります。
労働局の許可を受けられる条件とは
雇用者が減額率を定めたら、実際に運用する前に、都道府県労働局長の個別の許可を取らなければなりません。
申請する際には、本当に許可を受けられる条件を満たしているかどうかを確認しましょう。
(1)精神または身体の障害により著しく労働能力の低い者を雇用する場合
単に障害があるだけでは、許可の対象とはなりません。
その障害が業務の遂行に直接著しい支障を与えているかどうかを確認します。
障害の程度については、厚生労働省が指定する比較対象労働者の労働能率のレベルに達していないことが条件です。
さらには、特例の許可を受けていても、許可された業務以外の業務に従事する場合には、一般の労働者と同じ最低賃金が適用されることになります。
(2)試の使用期間中の者を雇用する場合
本採用をするか否かの判断をするための、試用期間中の労働者に適用されます。
ただし、許可を得られるのは、本採用労働者の賃金水準が最低賃金と同程度であることや、申請した会社の業種や職種で、試用期間中の労働賃金を、本採用労働者に比較して著しく低額に定める慣行が存在するなど、合理的な理由がある場合に限ります。
(3)基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている者を雇用する場合
認定職業訓練とは、普通課程と短期課程の普通職業訓練、または専門課程の高度職業訓練がそれに当たります。
職業を転換するための職業訓練は対象外です。
ただし、訓練期間中であっても、1日の生産活動に従事する時間が所定労働時間の3分の2以上である訓練年度や、訓練期間が2~3年であるものの最終年度は、許可がおりません。
(4)軽易な業務に従事する者を雇用する場合
業務の進行や能率について、ほとんど規制を受けない物の片付けや、所属事業所の本来の業務ではない清掃作業などをする労働者が対象で、最低賃金の適用を受けるほかの労働者と比べると、軽易な業務をしている場合が対象です。
たとえば、清掃業の会社における清掃業務であったり、業務の進行や能率について規制を受けたり、精神的緊張のある業務は『軽易な業務』ではないので、許可の対象になりません。
(5)断続的労働に従事する者を雇用する場合
作業が長く継続することなく、中断を挟んでまた同様の作業があり、再び中断するような、作業時間と手待ち時間が繰り返されることが常態の業務に従事する者が対象です。
たとえば、守衛や学校の用務員、専属の運転手、マンションの管理人など、巡回があったり、送迎をしている時間以外は待機したり休憩しているような職種が対象となります。
この場合、手待ち時間が作業時間を下回る場合には許可が下りません。
このように、雇用の形によっても、最低賃金の減額の特例許可制度の適用条件はさまざまです。
もし、当てはまる条件で求人を出す際は、一度詳しく調べてみるとよいでしょう。
ただし、故意でなくても作業内容や労働状態などの要件に違反していた場合、あとあと会社の信用問題にもつながりかねません。
労働者側へのきちんとした説明も大切です。
※本記事の記載内容は、2020年10月現在の法令・情報等に基づいています。
最低賃金制度とは、国の定めた最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。
『地域別最低賃金』と『特定最低賃金』とでは、より高いほうが適用され、地域別最低賃金を下回っていた場合には、使用者に50万円以下の罰金が科せられ、特定最低賃金を下回っていた場合には、使用者に30万円以下の罰金が科されると定められています。
もし、最低賃金以下の金額しか支払われていない労働者がいた場合は、たとえ双方の合意があり、雇用契約が結ばれていたとしても、法律上は無効とされます。
雇用主は必ず、最低賃金を守らなければならないのです。
しかし、最低賃金には『特例』が存在します。
最低賃金を一律に適用すると、柔軟性を失い、かえって雇用の機会を奪いかねないため、特定の労働者については、個別に最低賃金よりも減額してよいとされているのです。
特例の対象となるのは、以下の条件に当てはまる労働者です。
(1)精神または身体の障害により著しく労働能力の低い者
(2)試の使用期間中の者
(3)基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている者のうち厚生労働省令で定める者
(4)軽易な業務に従事する者
(5)断続的労働に従事する者
このような場合、使用者が所轄の都道府県労働局長の許可を受けることを条件に、最低賃金を下回る報酬で雇用契約を結ぶことが許されています。
減額率については、厚生労働省によって上限が決まっています。
雇用主は減額対象となる労働者の職務の内容、職務の成果、労働能力、経験等を総合的に勘案して、減額率を定めることになります。
労働局の許可を受けられる条件とは
雇用者が減額率を定めたら、実際に運用する前に、都道府県労働局長の個別の許可を取らなければなりません。
申請する際には、本当に許可を受けられる条件を満たしているかどうかを確認しましょう。
(1)精神または身体の障害により著しく労働能力の低い者を雇用する場合
単に障害があるだけでは、許可の対象とはなりません。
その障害が業務の遂行に直接著しい支障を与えているかどうかを確認します。
障害の程度については、厚生労働省が指定する比較対象労働者の労働能率のレベルに達していないことが条件です。
さらには、特例の許可を受けていても、許可された業務以外の業務に従事する場合には、一般の労働者と同じ最低賃金が適用されることになります。
(2)試の使用期間中の者を雇用する場合
本採用をするか否かの判断をするための、試用期間中の労働者に適用されます。
ただし、許可を得られるのは、本採用労働者の賃金水準が最低賃金と同程度であることや、申請した会社の業種や職種で、試用期間中の労働賃金を、本採用労働者に比較して著しく低額に定める慣行が存在するなど、合理的な理由がある場合に限ります。
(3)基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている者を雇用する場合
認定職業訓練とは、普通課程と短期課程の普通職業訓練、または専門課程の高度職業訓練がそれに当たります。
職業を転換するための職業訓練は対象外です。
ただし、訓練期間中であっても、1日の生産活動に従事する時間が所定労働時間の3分の2以上である訓練年度や、訓練期間が2~3年であるものの最終年度は、許可がおりません。
(4)軽易な業務に従事する者を雇用する場合
業務の進行や能率について、ほとんど規制を受けない物の片付けや、所属事業所の本来の業務ではない清掃作業などをする労働者が対象で、最低賃金の適用を受けるほかの労働者と比べると、軽易な業務をしている場合が対象です。
たとえば、清掃業の会社における清掃業務であったり、業務の進行や能率について規制を受けたり、精神的緊張のある業務は『軽易な業務』ではないので、許可の対象になりません。
(5)断続的労働に従事する者を雇用する場合
作業が長く継続することなく、中断を挟んでまた同様の作業があり、再び中断するような、作業時間と手待ち時間が繰り返されることが常態の業務に従事する者が対象です。
たとえば、守衛や学校の用務員、専属の運転手、マンションの管理人など、巡回があったり、送迎をしている時間以外は待機したり休憩しているような職種が対象となります。
この場合、手待ち時間が作業時間を下回る場合には許可が下りません。
このように、雇用の形によっても、最低賃金の減額の特例許可制度の適用条件はさまざまです。
もし、当てはまる条件で求人を出す際は、一度詳しく調べてみるとよいでしょう。
ただし、故意でなくても作業内容や労働状態などの要件に違反していた場合、あとあと会社の信用問題にもつながりかねません。
労働者側へのきちんとした説明も大切です。
※本記事の記載内容は、2020年10月現在の法令・情報等に基づいています。