需要が高まる『スペシャルニーズ』に対応する障害者歯科医療とは
社会全体でユニバーサル化が進むなか、歯科業界においても、さまざまな事情で歯科治療を受けることが困難だった人たちに対して、きちんとした歯科治療を受けられる環境をつくろうとする動きがあります。
最近では、これまで十分な歯科治療を受けられなかった『スペシャルニーズ(特別な配慮が必要な患者)』に対応し、その人に合った歯科治療を提供するクリニックが、全国各地に増えています。
病気や障害を持つ人を受け入れる診療体制は、新しい患者層を開拓する一つのカギになるかもしれません。
最近では、これまで十分な歯科治療を受けられなかった『スペシャルニーズ(特別な配慮が必要な患者)』に対応し、その人に合った歯科治療を提供するクリニックが、全国各地に増えています。
病気や障害を持つ人を受け入れる診療体制は、新しい患者層を開拓する一つのカギになるかもしれません。
診療以外に多くを求められる障害者歯科医療
何らかの理由で、通常の歯科診療スタイルでは歯科治療を受けられない方々がいます。
それが身体機能による問題であれば、地元の訪問歯科を探すことによって解決するでしょう。
しかし、外出困難ではないけれども、歯科治療を受けるのが難しいという人もいます。
たとえば知的障害や認知症の方は、歯科治療の必要性を理解するのが難しかったり、自閉症や発達障害による感覚過敏症状がある方は、歯科特有の金属音や歯を削るような感覚が苦手だったりします。
たとえば、自閉症・発達障害だけでも以下のような傾向があります。
●コミュニケーションの問題
言葉の遅れ、独特な表現やオウム返し、会話が困難などコミュニケーションの障害があり、症状や痛みのフィードバックを受けにくいことがあります。
●多動症
診察椅子にじっと座っていられない、診察室内を走り回る、勝手に部屋を出入りする、器具などを触りたがるといった行動が見られます。
●感覚障害
次のような感覚が過敏なため、強く嫌がったり、頑なに拒んだりします。
また、逆に感覚が鈍く、質問をしても本人から正確なフィードバックが得られないことがあります。
聴覚過敏:子供の泣き声、バキューム音
視覚過敏:蛍光灯の点滅
触角過敏:歯磨き
味覚過敏:サフォライド、セメント、フッ素の味
痛覚が鈍い:痛みに鈍感
自己受容覚が鈍い:手足の位置がわからない
●こだわりの強さ
環境変化への対応力が低く、『いつも同じ状態であること』や『特定のものや環境』に強くこだわり、その状況下でないと落ち着かず、場合によってはパニックを起こすこともあります。
こういった障害を持つ方は、治療はもとより待合室で過ごすことも難しいかもしれません。
ほかにも、以下のような理由で通常の歯科治療が難しい方がいます。
●身体の不自由や緊張から、治療を受ける姿勢を保つのが困難な人
●歯科診療に極度の恐怖感をいだき、受診できない人
●口に器具などが入ると吐きそうになったり、むせてしまったりする人
●歯みがきやお口の中を清潔に保つことが困難な人
しかし、それでも歯科治療は必要です。
こうした方々に歯科治療を提供するために、さまざまな工夫や取り組みが研究されています。
それが、歯科医に求められる『スペシャルニーズ』なのです。
患者それぞれに合ったオーダーメイド対応を
では、スペシャルニーズへの対応法とはどんなものがあるのでしょうか。
基本的には、病気や障害への理解をもとに、保護者や介助者と連携しながら、治療を受けるべき患者それぞれに合った対応を見つけることになります。
環境変化に弱い方には、まず診察室やスタッフ、器具類や治療の体勢に慣れてもらうところから始める必要があるでしょう。
治療の姿勢を保つために、クッションなどを用いたり、身体が不用意な動きをしないように対策をする場合もあります。
治療の説明を、絵カードや視覚支援カードなどを使って説明するのも効果的といえます。
点滴注射や安定剤を利用して、緊張を緩和したり痛みを感じない状態で治療に入る方法もよいでしょう。
また、自閉症特有のブランケット法などのリラックス方法を治療に取り入れている医療機関もあると聞きます。
患者のなかには複数の病気や障害を併せ持っている方もいますので、一人ひとりへのオーダーメイド対応を模索する形になるでしょう。
こうした対応は、時によっては治療よりも難しいかもしれません。
しかし、どこの歯科医でも対応できるというものではありません。
障害の種類や程度によっては、専門的な知識や技術、設備が必要な場合があり、高次医療機関での診察が必要なことがあります。
そのため、それぞれに適した全身管理方法や行動調整法、治療内容の選択が必要なのです。
1973年に設立された『日本障害者歯科学会』では、障害者歯科医療の向上を目指し、認定医制度と認定歯科衛生士制度を設けています。
病気や障害を持つ方々の役に立ちたいと思う歯科医であれば、障害者歯科医療の専門性を身に付け、認定を受けてもよいかもしれません。
地域のスペシャルニーズを求める方の役に立てれば、リピーターが増え、クリニックの評判もぐっと高まるでしょう。
※本記事の記載内容は、2020年10月現在の法令・情報等に基づいています。
何らかの理由で、通常の歯科診療スタイルでは歯科治療を受けられない方々がいます。
それが身体機能による問題であれば、地元の訪問歯科を探すことによって解決するでしょう。
しかし、外出困難ではないけれども、歯科治療を受けるのが難しいという人もいます。
たとえば知的障害や認知症の方は、歯科治療の必要性を理解するのが難しかったり、自閉症や発達障害による感覚過敏症状がある方は、歯科特有の金属音や歯を削るような感覚が苦手だったりします。
たとえば、自閉症・発達障害だけでも以下のような傾向があります。
●コミュニケーションの問題
言葉の遅れ、独特な表現やオウム返し、会話が困難などコミュニケーションの障害があり、症状や痛みのフィードバックを受けにくいことがあります。
●多動症
診察椅子にじっと座っていられない、診察室内を走り回る、勝手に部屋を出入りする、器具などを触りたがるといった行動が見られます。
●感覚障害
次のような感覚が過敏なため、強く嫌がったり、頑なに拒んだりします。
また、逆に感覚が鈍く、質問をしても本人から正確なフィードバックが得られないことがあります。
聴覚過敏:子供の泣き声、バキューム音
視覚過敏:蛍光灯の点滅
触角過敏:歯磨き
味覚過敏:サフォライド、セメント、フッ素の味
痛覚が鈍い:痛みに鈍感
自己受容覚が鈍い:手足の位置がわからない
●こだわりの強さ
環境変化への対応力が低く、『いつも同じ状態であること』や『特定のものや環境』に強くこだわり、その状況下でないと落ち着かず、場合によってはパニックを起こすこともあります。
こういった障害を持つ方は、治療はもとより待合室で過ごすことも難しいかもしれません。
ほかにも、以下のような理由で通常の歯科治療が難しい方がいます。
●身体の不自由や緊張から、治療を受ける姿勢を保つのが困難な人
●歯科診療に極度の恐怖感をいだき、受診できない人
●口に器具などが入ると吐きそうになったり、むせてしまったりする人
●歯みがきやお口の中を清潔に保つことが困難な人
しかし、それでも歯科治療は必要です。
こうした方々に歯科治療を提供するために、さまざまな工夫や取り組みが研究されています。
それが、歯科医に求められる『スペシャルニーズ』なのです。
患者それぞれに合ったオーダーメイド対応を
では、スペシャルニーズへの対応法とはどんなものがあるのでしょうか。
基本的には、病気や障害への理解をもとに、保護者や介助者と連携しながら、治療を受けるべき患者それぞれに合った対応を見つけることになります。
環境変化に弱い方には、まず診察室やスタッフ、器具類や治療の体勢に慣れてもらうところから始める必要があるでしょう。
治療の姿勢を保つために、クッションなどを用いたり、身体が不用意な動きをしないように対策をする場合もあります。
治療の説明を、絵カードや視覚支援カードなどを使って説明するのも効果的といえます。
点滴注射や安定剤を利用して、緊張を緩和したり痛みを感じない状態で治療に入る方法もよいでしょう。
また、自閉症特有のブランケット法などのリラックス方法を治療に取り入れている医療機関もあると聞きます。
患者のなかには複数の病気や障害を併せ持っている方もいますので、一人ひとりへのオーダーメイド対応を模索する形になるでしょう。
こうした対応は、時によっては治療よりも難しいかもしれません。
しかし、どこの歯科医でも対応できるというものではありません。
障害の種類や程度によっては、専門的な知識や技術、設備が必要な場合があり、高次医療機関での診察が必要なことがあります。
そのため、それぞれに適した全身管理方法や行動調整法、治療内容の選択が必要なのです。
1973年に設立された『日本障害者歯科学会』では、障害者歯科医療の向上を目指し、認定医制度と認定歯科衛生士制度を設けています。
病気や障害を持つ方々の役に立ちたいと思う歯科医であれば、障害者歯科医療の専門性を身に付け、認定を受けてもよいかもしれません。
地域のスペシャルニーズを求める方の役に立てれば、リピーターが増え、クリニックの評判もぐっと高まるでしょう。
※本記事の記載内容は、2020年10月現在の法令・情報等に基づいています。