知っておきたい裁判の基本! 『裁判所』は何をするところ?
皆さんは『裁判所』についてどのようなイメージをお持ちでしょうか。
「絶対に許さない!訴えてやる!」と奮い立ち、積年の恨みを果たすべく弁護士を立てて骨肉の争いをする……。
このような法廷ドラマによくある描写を想像する方もいるかもしれません。
しかし、現実の裁判所はそんなイメージとは少し違います。
今回は、裁判所という場所について簡単にご紹介します。
「絶対に許さない!訴えてやる!」と奮い立ち、積年の恨みを果たすべく弁護士を立てて骨肉の争いをする……。
このような法廷ドラマによくある描写を想像する方もいるかもしれません。
しかし、現実の裁判所はそんなイメージとは少し違います。
今回は、裁判所という場所について簡単にご紹介します。
裁判では、必ず『判決』が下されるわけではない
裁判をしたら、その先に何が起こるのでしょうか。
「当然、裁判官が公正な判断をして、判決を下してくれるのでは?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、実際はそうとも限りません。
『裁判所データブック2019』によると、2018年に実際に終了した裁判(地方裁判所で扱われた第一審民事通常訴訟事件)の数は13万8,681件。
そのうち判決により終了したものは5万7,376件、和解により終了したものは5万1,445件。
半分近くの裁判が『和解』という終わり方をしています。
そのほかは裁判の取下げなどで終了しているものです。
このように、実際の裁判所では、持ち込まれる事件のうち、その多くが『和解』という手続で終了しています。
さらにいえば、判決で終了している5万7,376件のうち、2万3,843件は、いわゆる『欠席裁判』です。
これは、被告が裁判に出頭しなかったために、原告の主張が認められたものになります(単純な貸金返還請求事件などが典型例です)。
こうして見ると、原告と被告が激しく主張を闘わせ、最終的に裁判官が判決を書くという事件は、全体の約25%しかないということがわかるでしょう。
裁判所で行われる『和解』はどのようなものか
「白黒つけたいから裁判をするんじゃないの?」「話し合いで済むなら裁判所なんていらなくない?」と思われる方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。
実は、裁判所ほど話し合いに適した場所はないのです。
具体例をあげましょう。
A子さんは、B男さんと夫婦として生活していましたが、B男さんがC子さんと不倫をしていたことが原因で離婚に至りました。そこで、A子さんは弁護士に依頼し、C子さんに対して、200万円の慰謝料を請求しました。C子さんも弁護士を立て、「そもそもA子さんとB男さんはものすごく仲が悪くて夫婦としては冷え切っていた。慰謝料としてはせいぜい100万円が妥当だ」との反論をしました。これではA子さんは納得しません。結局、A子さんは、裁判所に訴訟を提起しました。応訴したC子さんは、ここでもA子さんとB男さんの夫婦関係が破綻していたことを主張します。証拠を見ると、確かにA子さんとB男さんの夫婦関係は悪かったようだけれども、不貞によって壊してよいほどのものであったかについては疑問が残りました。
裁判では、当事者の主張立証がある程度尽くされた段階で、裁判官が和解を試みることが往々にしてあります。
そして、この段階では、当事者が個別に裁判官と話をすることになります。
裁判官は、A子さんの弁護士に対して、「B子さんが提出した証拠を見ると、確かに夫婦関係には問題があったと認定する余地はある。まだわからないが、判決で200万円と書くのは難しいのではないか」といった話をしました。
一方で、C子さんの弁護士に対しては、「確かに夫婦仲は悪かったかもしれないが、慰謝料を減額するほどであったかは、当事者を尋問してみないとわからない。不貞が原因で離婚に至ったという事実は重大であり、200万円の判決もあり得る」と話します。
その結果、この事件は、C子さんがA子さんに150万円を支払う形で和解となりました。
裁判所は『和解』に適した場である
以上の話を見て、「裁判官が二枚舌を使って無理やり和解させているじゃないか!」と思われる方もいるでしょう。
しかし、そんな単純なことではないのです。
裁判になるまでの紛争というのは、原告にも被告にも、それぞれに相応の言い分があります。
裁判官が一刀両断することが適切な事件というのは、必ずしも多くはありません。
ただ、最終的には、裁判官が何らかの結論を出さなくてはなりませんし、逆にいえば、裁判官は、この世で唯一、結論を強制的に決めることができる存在なのです。
裁判所の外でいくら話をしても、どちらも自分の正当性を信じて譲らないというのは往々にしてあることでしょう。
しかし、裁判所であれば、裁判官という決定権者のもと、双方が自身にとって不利な事情と向き合わざるを得ない状況が生まれ、和解の芽が生じやすいのです。
和解はお互いに譲歩し、納得したうえで成立します。
もしかしたらC子さんは、判決で200万円といわれた場合は納得できずに支払をしなかったかもしれません。
しかしながら、この事件では、和解という手続により納得して終了したからこそ、スムーズに慰謝料の支払を行いました。
つまり、裁判官は“よい和解”を目指して仕事をしているともいわれます。
皆さんも、紛争に巻き込まれた際には、“和解の場”として裁判所を利用してみてもよいかもしれません。
※本記事の記載内容は、2020年7月現在の法令・情報等に基づいています。
裁判をしたら、その先に何が起こるのでしょうか。
「当然、裁判官が公正な判断をして、判決を下してくれるのでは?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、実際はそうとも限りません。
『裁判所データブック2019』によると、2018年に実際に終了した裁判(地方裁判所で扱われた第一審民事通常訴訟事件)の数は13万8,681件。
そのうち判決により終了したものは5万7,376件、和解により終了したものは5万1,445件。
半分近くの裁判が『和解』という終わり方をしています。
そのほかは裁判の取下げなどで終了しているものです。
このように、実際の裁判所では、持ち込まれる事件のうち、その多くが『和解』という手続で終了しています。
さらにいえば、判決で終了している5万7,376件のうち、2万3,843件は、いわゆる『欠席裁判』です。
これは、被告が裁判に出頭しなかったために、原告の主張が認められたものになります(単純な貸金返還請求事件などが典型例です)。
こうして見ると、原告と被告が激しく主張を闘わせ、最終的に裁判官が判決を書くという事件は、全体の約25%しかないということがわかるでしょう。
裁判所で行われる『和解』はどのようなものか
「白黒つけたいから裁判をするんじゃないの?」「話し合いで済むなら裁判所なんていらなくない?」と思われる方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。
実は、裁判所ほど話し合いに適した場所はないのです。
具体例をあげましょう。
A子さんは、B男さんと夫婦として生活していましたが、B男さんがC子さんと不倫をしていたことが原因で離婚に至りました。そこで、A子さんは弁護士に依頼し、C子さんに対して、200万円の慰謝料を請求しました。C子さんも弁護士を立て、「そもそもA子さんとB男さんはものすごく仲が悪くて夫婦としては冷え切っていた。慰謝料としてはせいぜい100万円が妥当だ」との反論をしました。これではA子さんは納得しません。結局、A子さんは、裁判所に訴訟を提起しました。応訴したC子さんは、ここでもA子さんとB男さんの夫婦関係が破綻していたことを主張します。証拠を見ると、確かにA子さんとB男さんの夫婦関係は悪かったようだけれども、不貞によって壊してよいほどのものであったかについては疑問が残りました。
裁判では、当事者の主張立証がある程度尽くされた段階で、裁判官が和解を試みることが往々にしてあります。
そして、この段階では、当事者が個別に裁判官と話をすることになります。
裁判官は、A子さんの弁護士に対して、「B子さんが提出した証拠を見ると、確かに夫婦関係には問題があったと認定する余地はある。まだわからないが、判決で200万円と書くのは難しいのではないか」といった話をしました。
一方で、C子さんの弁護士に対しては、「確かに夫婦仲は悪かったかもしれないが、慰謝料を減額するほどであったかは、当事者を尋問してみないとわからない。不貞が原因で離婚に至ったという事実は重大であり、200万円の判決もあり得る」と話します。
その結果、この事件は、C子さんがA子さんに150万円を支払う形で和解となりました。
裁判所は『和解』に適した場である
以上の話を見て、「裁判官が二枚舌を使って無理やり和解させているじゃないか!」と思われる方もいるでしょう。
しかし、そんな単純なことではないのです。
裁判になるまでの紛争というのは、原告にも被告にも、それぞれに相応の言い分があります。
裁判官が一刀両断することが適切な事件というのは、必ずしも多くはありません。
ただ、最終的には、裁判官が何らかの結論を出さなくてはなりませんし、逆にいえば、裁判官は、この世で唯一、結論を強制的に決めることができる存在なのです。
裁判所の外でいくら話をしても、どちらも自分の正当性を信じて譲らないというのは往々にしてあることでしょう。
しかし、裁判所であれば、裁判官という決定権者のもと、双方が自身にとって不利な事情と向き合わざるを得ない状況が生まれ、和解の芽が生じやすいのです。
和解はお互いに譲歩し、納得したうえで成立します。
もしかしたらC子さんは、判決で200万円といわれた場合は納得できずに支払をしなかったかもしれません。
しかしながら、この事件では、和解という手続により納得して終了したからこそ、スムーズに慰謝料の支払を行いました。
つまり、裁判官は“よい和解”を目指して仕事をしているともいわれます。
皆さんも、紛争に巻き込まれた際には、“和解の場”として裁判所を利用してみてもよいかもしれません。
※本記事の記載内容は、2020年7月現在の法令・情報等に基づいています。