医療機関との連携で高齢者のニーズをつかむ医療とは?
通常の歯科診察以外の分野が求められることの多い昨今、インプラントやホワイトニングといった自由診療メニューが多くのクリニックで導入されています。
そして、ここ数年では高齢者の嚥下機能の診療が注目を集めるようになりました。
今回は、歯科医師が医科と連携できる新たな診療について紹介します。
そして、ここ数年では高齢者の嚥下機能の診療が注目を集めるようになりました。
今回は、歯科医師が医科と連携できる新たな診療について紹介します。
高齢化社会に伴う訪問診療のニーズ
今、歯科業界にも在宅医療が浸透しつつあります。
施設や個人宅へ出向いて処置をする往診や訪問歯科診療も、珍しくありません。
高齢や病気、障害のために外出が困難な人にとって、歯科医が来てくれる訪問診療は、とてもありがたいものです。
とはいえ、何かきっかけがないと『歯のお医者さんを呼ぼう』という考えは生まれません。
実際、最初に訪問診療を依頼するきっかけは、次のようなアクシデントが発生した場合がほとんどです。
・むし歯があるようだ
・かぶせ物が外れてしまった
・入れ歯が合わない
・入れ歯が壊れてしまった
訪問診療では、こうした主訴に対する処置が終わった後も、引き続き、口腔ケアのために定期的に診療を行います。
嚥下機能が低下する高齢者にとって、口腔内を清潔に保つことが、唾液の分泌促進や認知症の予防にとても有効だからです。
特に、口腔内の細菌が肺に入ることで起こる誤嚥性(ごえんせい)肺炎を予防するという面では、欠かせないケアとなっています。
単に、むし歯や入れ歯などのアクシデントを予防するだけが、訪問歯科診療の仕事ではありません。
口腔内のスペシャリストとして嚥下について詳しくなることは、今後ますます歯科医にとって大きな強みになります。
もちろん、医科の業界にも、摂食・嚥下機能検査をできる医師はいます。
しかし歯科医は、検査結果を踏まえたうえで、口腔内の状態を専門の立場から的確に評価できます。
他職種連携の時代であることを踏まえ、そうした情報提供のできる歯科医が地域の身近なところにいるというのは、患者にとっても、高齢者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ:人生や健康、生活の質)の向上を願う家族にとっても大変心強いものです。
医療機関連携で、歯科の新たな役割を確立
嚥下機能検査は、食べたもの(いつも食べているもの、あるいはゼリーや飲みもの)を飲み込む様子を、実際に観察して行います。
どのような食べものが、どの部分で引っかかっているのか、または誤嚥していないかなどを確認します。
これによって、安全に食べられる食事形態や、飲み込むときの姿勢などを指導できるようになります。
観察方法としては、まずX線で透過させる方法があります。
患者の負担が少なく、誤嚥の評価には最適なのですが、被ばくの危険性を考えると放射線管理区域のない在宅診療には不向きといえます。
そこで、在宅診療では、内視鏡による摂食・嚥下機能検査を行います。
持ち運べるサイズのポータブルタイプの嚥下内視鏡が一つあれば、施設でも個人宅でも、どこでも検査を実施できます。
内視鏡では、のどの状態を確認でき、咀嚼の評価も可能です。
その場で“直接”確認できることから、評価と指導をすぐに行えるメリットがあり、在宅診療においては患者からのニーズも高くなっています。
ただし、この嚥下内視鏡を使った検査は所定の研修を修了した者だけが実施できるもので、全国的に6,000名ほどが研修を受講していますが、臨床現場ではまだまだ実施者不足という現状です。
訪問診療ができる歯科としての「摂食・嚥下機能評価できます」というアピールは、患者本人や家族はもとより、関係機関にも歓迎されるでしょう。
たとえば、口腔・咽頭・食道を経由して食物や水分を摂取できなくなった場合に用いられる胃瘻(ろう)造設手術の前には、嚥下の評価を適切に行うことが推奨されています。
嚥下内視鏡を使える歯科は、医科からオーダーを受けて、この検査を行うことができます。
他機関であっても『摂食・嚥下機能検査』を行えば、『胃瘻造設時嚥下機能評価加算』を医科が算定し、診療や入院の段取りを組むことができるのです。
こうした医療機関連携は、歯科にとって活躍の場を広げるチャンスでもあります。
訪問診療は、必要性のある方であれば検査して終わりではなく、訪問診療をスタートさせることにもつながります。
この段階では、摂食嚥下リハビリテーションを行える『摂食機能療法専門歯科医師』の出番かもしれません。
高齢化社会への突入により、オーラルフレイル(口腔機能の低下)への懸念もぐっと高まっている今、『摂食・嚥下機能検査』の必要性は今後も上がり続けるでしょう。
※本記事の記載内容は、2020年4月現在の法令・情報等に基づいています。
今、歯科業界にも在宅医療が浸透しつつあります。
施設や個人宅へ出向いて処置をする往診や訪問歯科診療も、珍しくありません。
高齢や病気、障害のために外出が困難な人にとって、歯科医が来てくれる訪問診療は、とてもありがたいものです。
とはいえ、何かきっかけがないと『歯のお医者さんを呼ぼう』という考えは生まれません。
実際、最初に訪問診療を依頼するきっかけは、次のようなアクシデントが発生した場合がほとんどです。
・むし歯があるようだ
・かぶせ物が外れてしまった
・入れ歯が合わない
・入れ歯が壊れてしまった
訪問診療では、こうした主訴に対する処置が終わった後も、引き続き、口腔ケアのために定期的に診療を行います。
嚥下機能が低下する高齢者にとって、口腔内を清潔に保つことが、唾液の分泌促進や認知症の予防にとても有効だからです。
特に、口腔内の細菌が肺に入ることで起こる誤嚥性(ごえんせい)肺炎を予防するという面では、欠かせないケアとなっています。
単に、むし歯や入れ歯などのアクシデントを予防するだけが、訪問歯科診療の仕事ではありません。
口腔内のスペシャリストとして嚥下について詳しくなることは、今後ますます歯科医にとって大きな強みになります。
もちろん、医科の業界にも、摂食・嚥下機能検査をできる医師はいます。
しかし歯科医は、検査結果を踏まえたうえで、口腔内の状態を専門の立場から的確に評価できます。
他職種連携の時代であることを踏まえ、そうした情報提供のできる歯科医が地域の身近なところにいるというのは、患者にとっても、高齢者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ:人生や健康、生活の質)の向上を願う家族にとっても大変心強いものです。
医療機関連携で、歯科の新たな役割を確立
嚥下機能検査は、食べたもの(いつも食べているもの、あるいはゼリーや飲みもの)を飲み込む様子を、実際に観察して行います。
どのような食べものが、どの部分で引っかかっているのか、または誤嚥していないかなどを確認します。
これによって、安全に食べられる食事形態や、飲み込むときの姿勢などを指導できるようになります。
観察方法としては、まずX線で透過させる方法があります。
患者の負担が少なく、誤嚥の評価には最適なのですが、被ばくの危険性を考えると放射線管理区域のない在宅診療には不向きといえます。
そこで、在宅診療では、内視鏡による摂食・嚥下機能検査を行います。
持ち運べるサイズのポータブルタイプの嚥下内視鏡が一つあれば、施設でも個人宅でも、どこでも検査を実施できます。
内視鏡では、のどの状態を確認でき、咀嚼の評価も可能です。
その場で“直接”確認できることから、評価と指導をすぐに行えるメリットがあり、在宅診療においては患者からのニーズも高くなっています。
ただし、この嚥下内視鏡を使った検査は所定の研修を修了した者だけが実施できるもので、全国的に6,000名ほどが研修を受講していますが、臨床現場ではまだまだ実施者不足という現状です。
訪問診療ができる歯科としての「摂食・嚥下機能評価できます」というアピールは、患者本人や家族はもとより、関係機関にも歓迎されるでしょう。
たとえば、口腔・咽頭・食道を経由して食物や水分を摂取できなくなった場合に用いられる胃瘻(ろう)造設手術の前には、嚥下の評価を適切に行うことが推奨されています。
嚥下内視鏡を使える歯科は、医科からオーダーを受けて、この検査を行うことができます。
他機関であっても『摂食・嚥下機能検査』を行えば、『胃瘻造設時嚥下機能評価加算』を医科が算定し、診療や入院の段取りを組むことができるのです。
こうした医療機関連携は、歯科にとって活躍の場を広げるチャンスでもあります。
訪問診療は、必要性のある方であれば検査して終わりではなく、訪問診療をスタートさせることにもつながります。
この段階では、摂食嚥下リハビリテーションを行える『摂食機能療法専門歯科医師』の出番かもしれません。
高齢化社会への突入により、オーラルフレイル(口腔機能の低下)への懸念もぐっと高まっている今、『摂食・嚥下機能検査』の必要性は今後も上がり続けるでしょう。
※本記事の記載内容は、2020年4月現在の法令・情報等に基づいています。