時間も労力もそがれるクレーム対応! 対策を万全にするには?
医院に寄せられるクレームにはさまざまなものがあります。
正当な言い分であるケースももちろんありますが、自己中心的な理由によるものや根拠が不明瞭なクレーム、過剰な要求をしてくるといった悪質なクレームも存在し、対応に苦慮するところです。
医院としては、どのような対策をとっていけばよいのでしょうか。
正当な言い分であるケースももちろんありますが、自己中心的な理由によるものや根拠が不明瞭なクレーム、過剰な要求をしてくるといった悪質なクレームも存在し、対応に苦慮するところです。
医院としては、どのような対策をとっていけばよいのでしょうか。
まずはクレームにつながるミスを減らす
医療業界は、社交辞令も含めて相手に感謝されることの多い業界ですが、生死に関わる場面もあり、辛辣なクレームを受けることもあります。
その際、念頭に置いておきたいのは、『クレームを軽視すると賠償問題にまで発展しかねない』ということです。
たとえば、医師ならびにその他の医療従事者、および国民へ向け、医療安全にかかわる継続的な情報収集・発信を行っている『医療安全推進者ネットワーク』は、次のような医療判決例を常に発信しています。
●転院や他科への紹介義務を怠ったことから患者に重い後遺障害を生じさせたとして病院側の責任が認められた判決
●入院中の患者に対する適切な経過観察を怠ったため患者に重い機能障害を生じさせたとして、医師と病院側の責任が認められた判決
●予防接種担当医師が適切な問診を行わずに予防接種を実施したことにより、被接種者に重度の心身障害や後遺症が生じたとして、国側の責任が認められた判決
●医師が診断に必要な検査を実施せず、患者の死亡や重度の後遺症といった重大な結果を招いたとして病院側の過失が認められた判決
このような訴訟になるケースは、よほどの医療事故のようにも思えますが、決して他人事ではありません。
厚生労働省によると、『インシデント(ヒヤリハット)・アクシデント(医療事故)』は次のように分類されており、医療現場ではレベル1~2程度は常態化していたり、見過ごされていたりします。
レベル1:患者への実害はなかった(何らかの影響を与えた可能性は否定できない)
レベル2:処置や治療は行わなかった(患者観察の強化、バイタルサインの軽度変化、安全確認のための検査などの必要性は生じた)
レベル3a:簡単な処置や治療を要した(消毒、湿布、皮膚の縫合、鎮痛剤の投与など)
レベル3b:濃厚な処置や処置を要した(バイタルサインの高度変化、人工呼吸器の装着、手術、入院日数の延長、外来患者さんの入院、骨折など)
レベル4a:永続的な障害や後遺症が残ったが、有意な機能障害や美容上の問題は伴わない
レベル4b:永続的な障害や後遺症が残り、有意な機能障害や美容上の問題が伴う
レベル1や2のミスであっても患者から指摘を受けると言い逃れはできませんし、医院の評判を落とすには十分です。
また、軽微なミスの発生頻度が高いということは、いずれ大きなミスを招く素地があるということでもあります。
クレーム対策としては、クレームにつながるようなミスを減らすことが先決です。
マニュアルを用意し、対応方法の周知徹底を
とはいえ、もちろんクレームを受けることはあるでしょう。
その場合、円満解決を目指し、訴訟や金銭要求に発展させないことが肝心です。
すぐできる対策は、『クレーム対応マニュアルを用意しておくこと』です。
クレームをうまく収められるかどうかは、『スタッフの対応の仕方』も大きく影響します。
患者の話の聞き方、言葉の使い方、説明の仕方など、対応の如何によっては患者の怒りが増幅することすらあります。
世間には対応マニュアルがさまざまあるので、それを参考に自院に合わせて作成しましょう。
その際、どのような内容のクレームなのか、ケースに応じた対応方法を用意しておくことも重要です。
悪質なクレームに対しては毅然と対応する必要がありますし、クレームが悪質かどうかを見極めるためには、事実確認の手順もしっかりと立てておかなくてはなりません。
安易な約束などは禁物です。
また、基本のクレーム対応をスタッフに周知し、教育しておくことも肝要です。
このほか、クレームに対して組織として対応するスタンスを持つことも大切です。
クレーム対応にはストレスがかかりますから、対応者1人が抱え込むのはよくありません。
クレームを受けたら医院内で共有し、事後に同様の事態が起きないよう話し合うことも欠かせません。
クレーム炎上時のためのサポート利用
初動が肝心のクレーム対応ですが、人が介在することなので、スタッフの対応で穏便に済ませられないこともあります。
特に、悪質なクレームの場合は収めるのも一苦労です。
万が一、そのような事態になった場合には、外部の力を頼るという手段もあります。
最近は、クレーム対応を委託できるアウトソーシングが急増しています。
相手とのやりとりや、問題が悪化してしまったときの対処をアウトソーシングできれば、医療者は本来の業務に専念できるので、時間的にも、そして精神的にもとても助かります。
また、弁護士費用をカバーするクレーム対応保険などに加入していれば、そのオプションとして渉外担当がついてくれることもあります。
半数以上の医療者が、これまでにクレームに悩まされたことがあるという調査データもあるなか、医師賠償責任保険のほかに、クレーム対応保険に加入しておくことは、大切な備えになるでしょう。
特に美容医療の業界は、クレームやトラブルがつきものでもあるので、クレーム対応保険は必須といえるかもしれません。
スタッフの接遇教育、クレーム対応マニュアルの周知、ミスを防ぐ仕組みづくりなど、医院内でできる対策はもちろん進めていくべきです。
一方で、実際に起きてしまったクレームを鎮めるには、外部の力を借りることが有効な場合もあります。
自院ではどのような取り組みをしていくか、一度検討してみてはいかがでしょうか。
※本記事の記載内容は、2020年3月現在の法令・情報等に基づいています。
医療業界は、社交辞令も含めて相手に感謝されることの多い業界ですが、生死に関わる場面もあり、辛辣なクレームを受けることもあります。
その際、念頭に置いておきたいのは、『クレームを軽視すると賠償問題にまで発展しかねない』ということです。
たとえば、医師ならびにその他の医療従事者、および国民へ向け、医療安全にかかわる継続的な情報収集・発信を行っている『医療安全推進者ネットワーク』は、次のような医療判決例を常に発信しています。
●転院や他科への紹介義務を怠ったことから患者に重い後遺障害を生じさせたとして病院側の責任が認められた判決
●入院中の患者に対する適切な経過観察を怠ったため患者に重い機能障害を生じさせたとして、医師と病院側の責任が認められた判決
●予防接種担当医師が適切な問診を行わずに予防接種を実施したことにより、被接種者に重度の心身障害や後遺症が生じたとして、国側の責任が認められた判決
●医師が診断に必要な検査を実施せず、患者の死亡や重度の後遺症といった重大な結果を招いたとして病院側の過失が認められた判決
このような訴訟になるケースは、よほどの医療事故のようにも思えますが、決して他人事ではありません。
厚生労働省によると、『インシデント(ヒヤリハット)・アクシデント(医療事故)』は次のように分類されており、医療現場ではレベル1~2程度は常態化していたり、見過ごされていたりします。
レベル1:患者への実害はなかった(何らかの影響を与えた可能性は否定できない)
レベル2:処置や治療は行わなかった(患者観察の強化、バイタルサインの軽度変化、安全確認のための検査などの必要性は生じた)
レベル3a:簡単な処置や治療を要した(消毒、湿布、皮膚の縫合、鎮痛剤の投与など)
レベル3b:濃厚な処置や処置を要した(バイタルサインの高度変化、人工呼吸器の装着、手術、入院日数の延長、外来患者さんの入院、骨折など)
レベル4a:永続的な障害や後遺症が残ったが、有意な機能障害や美容上の問題は伴わない
レベル4b:永続的な障害や後遺症が残り、有意な機能障害や美容上の問題が伴う
レベル1や2のミスであっても患者から指摘を受けると言い逃れはできませんし、医院の評判を落とすには十分です。
また、軽微なミスの発生頻度が高いということは、いずれ大きなミスを招く素地があるということでもあります。
クレーム対策としては、クレームにつながるようなミスを減らすことが先決です。
マニュアルを用意し、対応方法の周知徹底を
とはいえ、もちろんクレームを受けることはあるでしょう。
その場合、円満解決を目指し、訴訟や金銭要求に発展させないことが肝心です。
すぐできる対策は、『クレーム対応マニュアルを用意しておくこと』です。
クレームをうまく収められるかどうかは、『スタッフの対応の仕方』も大きく影響します。
患者の話の聞き方、言葉の使い方、説明の仕方など、対応の如何によっては患者の怒りが増幅することすらあります。
世間には対応マニュアルがさまざまあるので、それを参考に自院に合わせて作成しましょう。
その際、どのような内容のクレームなのか、ケースに応じた対応方法を用意しておくことも重要です。
悪質なクレームに対しては毅然と対応する必要がありますし、クレームが悪質かどうかを見極めるためには、事実確認の手順もしっかりと立てておかなくてはなりません。
安易な約束などは禁物です。
また、基本のクレーム対応をスタッフに周知し、教育しておくことも肝要です。
このほか、クレームに対して組織として対応するスタンスを持つことも大切です。
クレーム対応にはストレスがかかりますから、対応者1人が抱え込むのはよくありません。
クレームを受けたら医院内で共有し、事後に同様の事態が起きないよう話し合うことも欠かせません。
クレーム炎上時のためのサポート利用
初動が肝心のクレーム対応ですが、人が介在することなので、スタッフの対応で穏便に済ませられないこともあります。
特に、悪質なクレームの場合は収めるのも一苦労です。
万が一、そのような事態になった場合には、外部の力を頼るという手段もあります。
最近は、クレーム対応を委託できるアウトソーシングが急増しています。
相手とのやりとりや、問題が悪化してしまったときの対処をアウトソーシングできれば、医療者は本来の業務に専念できるので、時間的にも、そして精神的にもとても助かります。
また、弁護士費用をカバーするクレーム対応保険などに加入していれば、そのオプションとして渉外担当がついてくれることもあります。
半数以上の医療者が、これまでにクレームに悩まされたことがあるという調査データもあるなか、医師賠償責任保険のほかに、クレーム対応保険に加入しておくことは、大切な備えになるでしょう。
特に美容医療の業界は、クレームやトラブルがつきものでもあるので、クレーム対応保険は必須といえるかもしれません。
スタッフの接遇教育、クレーム対応マニュアルの周知、ミスを防ぐ仕組みづくりなど、医院内でできる対策はもちろん進めていくべきです。
一方で、実際に起きてしまったクレームを鎮めるには、外部の力を借りることが有効な場合もあります。
自院ではどのような取り組みをしていくか、一度検討してみてはいかがでしょうか。
※本記事の記載内容は、2020年3月現在の法令・情報等に基づいています。