法人税が戻ってくる! 欠損金の繰戻しによる還付制度とは?
会社の期ごとの決算は、経営者にとって重要なことの一つです。
前期が黒字であっても、経営状態によっては今期も黒字とは限らず、赤字になってしまうことも。
そんなときは、『欠損金の繰戻しによる還付制度』で少しでも欠損金の穴埋めを行いましょう。
この制度は、前期に出した黒字分と、今期の赤字分を相殺して、前期に納めた法人税の一部を戻してもらえるという制度です。
そこで、適用される条件や還付金額の計算方法、制度を利用する上での注意点などについて、説明します。
前期が黒字であっても、経営状態によっては今期も黒字とは限らず、赤字になってしまうことも。
そんなときは、『欠損金の繰戻しによる還付制度』で少しでも欠損金の穴埋めを行いましょう。
この制度は、前期に出した黒字分と、今期の赤字分を相殺して、前期に納めた法人税の一部を戻してもらえるという制度です。
そこで、適用される条件や還付金額の計算方法、制度を利用する上での注意点などについて、説明します。
欠損金の繰戻しで還付を受けるための条件
『欠損金の繰戻しによる還付制度』は、どの法人にも適用されるわけではありません。
適用対象法人は、青色申告書を提出する法人、災害損失欠損金を有する法人とされています。
ただし青色申告書を提出する法人については、解散事業年度に生じた欠損金および中小企業者等の各事業年度において生じた欠損金を除き、平成4年4月1日から令和2年3月31日までの間に終了する事業年度において生じた欠損金について適用が停止されています。
まず、青色申告書を提出する法人については、還付所得事業年度から欠損事業年度の前事業年度までの各事業年度について連続して青色申告書で確定申告を行っている必要があり、欠損金が発生した事業年度の青色申告書の提出を提出期限までにきちんと行っていること。
さらに、青色申告書と同時に『欠損金の繰戻しによる還付請求書』を提出していることも条件になります。
なお、中小企業者等とは、普通法人のうち、各事業年度終了の時において資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるもの、または資本若しくは出資を有しないものと規定されています。
さらに、資本金が1億円以下であったとしても、相互会社及び外国相互会社や、資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人の100%子会社である場合等は、この制度は適用されないので注意しましょう。
ちなみに、災害欠損金を有する法人については、還付所得事業年度から欠損事業年度の前事業年度までの各事業年度について連続して確定申告を行っており、さらに、災害欠損金が発生した事業年度の確定申告書または仮決算による中間申告書を提出していることと、申告書と同時に『欠損金の繰戻しによる還付請求書』を提出していることが条件になります。
これらの請求に必要な『欠損金の繰戻しによる還付請求書』は、ひな形が国税庁のホームページで公開されているほか、市販の申告書作成ソフトにも入っています。
戻ってくる法人税の計算方法とは?
自社に『欠損金の繰戻しによる還付制度』が適用される場合、いったい、どのくらい法人税が戻ってくるのか知りたいところです。
還付請求できる法人税の額は、次の計算式で求めることができます。
還付請求できる法人税の額=前期(還付所得事業年度)の法人税額×今期(欠損事業年度)の欠損金額÷前期(還付所得事業年度)の所得金額
ただし、欠損事業年度の欠損金額は、分母の還付事業年度の所得金額が限度とされます。
具体例を出しながら、実際に算出してみましょう。
ある会社が前期で500万円の黒字を出して、75万円の法人税を納めたとします。
しかし、経営状態の悪化などによって、今期は200万円の赤字を出してしまいました。
この会社のケースを上記の式に当てはめると、『75万×200万÷500万』となり、30万円の法人税が戻ってくることがわかります。
前期の黒字分500万円から今期の赤字分である200万円を引いた300万円にだけ、法人税がかかると考えてみてください。
現在の法人税率は1億円以下の普通法人の場合800万円以下の部分については15%なので、300万円にかかる法人税は45万円です。
すでに75万円を前期に納めているので、その差額である30万円が戻ってくるというわけです。
ちなみに、『欠損金の繰戻しによる還付制度』はあくまで法人税にのみ適用されるものなので、都道府県税や市町村民税などの地方税、その他、法人事業税、法人住民税などには適用されません。
ただし、欠損金が発生した年度にかかる法人住民税に関しては、『住民税の繰越控除』という制度があり、減税の処置を受けることができます。
一度、国税局のホームページなどをチェックしてみてください。
また、もう一つの注意点として、『欠損金の繰戻しによる還付制度』を利用すると、税務調査が入りやすくなるということがあげられます。
これは還付申請を受けた税務署が、赤字の発生した年度における企業の欠損金額を調べたうえで、法人税の還付手続きを行うためです。
もちろん、必ずしも税務調査が行われるわけではありませんが、一般的にその可能性が高くなることが指摘されています。
『欠損金の繰戻しによる還付制度』は、赤字になってしまった企業にとっては、法人税の一部が返ってくるありがたい制度です。
その一方で、税務調査によって細かい不備を指摘されてしまう可能性もあります。
制度を利用する際には、税務調査が入りやすくなるということを念頭に置いたうえで、還付申請を行うようにしましょう。
※本記事の記載内容は、2020年2月現在の法令・情報等に基づいています。
『欠損金の繰戻しによる還付制度』は、どの法人にも適用されるわけではありません。
適用対象法人は、青色申告書を提出する法人、災害損失欠損金を有する法人とされています。
ただし青色申告書を提出する法人については、解散事業年度に生じた欠損金および中小企業者等の各事業年度において生じた欠損金を除き、平成4年4月1日から令和2年3月31日までの間に終了する事業年度において生じた欠損金について適用が停止されています。
まず、青色申告書を提出する法人については、還付所得事業年度から欠損事業年度の前事業年度までの各事業年度について連続して青色申告書で確定申告を行っている必要があり、欠損金が発生した事業年度の青色申告書の提出を提出期限までにきちんと行っていること。
さらに、青色申告書と同時に『欠損金の繰戻しによる還付請求書』を提出していることも条件になります。
なお、中小企業者等とは、普通法人のうち、各事業年度終了の時において資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるもの、または資本若しくは出資を有しないものと規定されています。
さらに、資本金が1億円以下であったとしても、相互会社及び外国相互会社や、資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人の100%子会社である場合等は、この制度は適用されないので注意しましょう。
ちなみに、災害欠損金を有する法人については、還付所得事業年度から欠損事業年度の前事業年度までの各事業年度について連続して確定申告を行っており、さらに、災害欠損金が発生した事業年度の確定申告書または仮決算による中間申告書を提出していることと、申告書と同時に『欠損金の繰戻しによる還付請求書』を提出していることが条件になります。
これらの請求に必要な『欠損金の繰戻しによる還付請求書』は、ひな形が国税庁のホームページで公開されているほか、市販の申告書作成ソフトにも入っています。
戻ってくる法人税の計算方法とは?
自社に『欠損金の繰戻しによる還付制度』が適用される場合、いったい、どのくらい法人税が戻ってくるのか知りたいところです。
還付請求できる法人税の額は、次の計算式で求めることができます。
還付請求できる法人税の額=前期(還付所得事業年度)の法人税額×今期(欠損事業年度)の欠損金額÷前期(還付所得事業年度)の所得金額
ただし、欠損事業年度の欠損金額は、分母の還付事業年度の所得金額が限度とされます。
具体例を出しながら、実際に算出してみましょう。
ある会社が前期で500万円の黒字を出して、75万円の法人税を納めたとします。
しかし、経営状態の悪化などによって、今期は200万円の赤字を出してしまいました。
この会社のケースを上記の式に当てはめると、『75万×200万÷500万』となり、30万円の法人税が戻ってくることがわかります。
前期の黒字分500万円から今期の赤字分である200万円を引いた300万円にだけ、法人税がかかると考えてみてください。
現在の法人税率は1億円以下の普通法人の場合800万円以下の部分については15%なので、300万円にかかる法人税は45万円です。
すでに75万円を前期に納めているので、その差額である30万円が戻ってくるというわけです。
ちなみに、『欠損金の繰戻しによる還付制度』はあくまで法人税にのみ適用されるものなので、都道府県税や市町村民税などの地方税、その他、法人事業税、法人住民税などには適用されません。
ただし、欠損金が発生した年度にかかる法人住民税に関しては、『住民税の繰越控除』という制度があり、減税の処置を受けることができます。
一度、国税局のホームページなどをチェックしてみてください。
また、もう一つの注意点として、『欠損金の繰戻しによる還付制度』を利用すると、税務調査が入りやすくなるということがあげられます。
これは還付申請を受けた税務署が、赤字の発生した年度における企業の欠損金額を調べたうえで、法人税の還付手続きを行うためです。
もちろん、必ずしも税務調査が行われるわけではありませんが、一般的にその可能性が高くなることが指摘されています。
『欠損金の繰戻しによる還付制度』は、赤字になってしまった企業にとっては、法人税の一部が返ってくるありがたい制度です。
その一方で、税務調査によって細かい不備を指摘されてしまう可能性もあります。
制度を利用する際には、税務調査が入りやすくなるということを念頭に置いたうえで、還付申請を行うようにしましょう。
※本記事の記載内容は、2020年2月現在の法令・情報等に基づいています。