社会保険労務士法人なか/労働保険事務組合福働会/福働会中部支部

原則禁止とされる日雇い派遣。例外的に雇用できる条件とは?

20.01.07
ビジネス【人的資源】
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多くの企業が人手不足のなか、“長期的に人を雇用する余裕はないけれど、数日だけの日雇い派遣ならお願いしたい”というときもあるでしょう。
しかし、2012年10月に施行された改正労働者派遣法で『日雇い派遣の原則禁止』が定められ、現在、労働契約の期間が30日以内の労働者派遣は禁止されています。
では、数日だけ人手が欲しいときなどは諦めるしかないのでしょうか。
実は、『日雇い派遣の原則禁止』にはいくつかの例外があり、条件を満たしていれば日雇い派遣を雇用することが可能になります。
今回は、その各種条件などをご紹介していきます。
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日雇い派遣の原則禁止の背景に『派遣切り』

リーマンショック後の2008年頃から、世界的な不況を背景に、派遣労働者が派遣会社から解雇されたり、派遣先の企業が派遣会社との契約を解除したりする、いわゆる『派遣切り』という現象が発生。
『年越し派遣村』や『ワーキングプア』という用語も流行りました。
任期満了を待たずに契約が解除されたり、理不尽な理由で解雇されたりする派遣労働者が社会問題として大きくクローズアップされました。

これを受け、2012年10月に施行されたのが改正労働者派遣法です。
改正法では、『30日以内の雇用契約』を『日雇い派遣』と定義し、これを原則禁止とすることが定められました。
短い期間の仕事をつないでいくような働き方では、生活は不安定になりがちです。
こうした人たちの雇用の不安定さを改善し、ワーキングプアを救済することが、この『日雇い派遣の原則禁止』の主な目的です。
また、派遣会社には、社会保険加入や労働環境を整備するなど雇用者としての責任を果たすことが求められました。

このように、労働者の生活の安定のために施行された改正法ですが、施行された当時は、働き口がなくなって困ってしまう派遣労働者が出てくるという事態に陥るなど、なかなか理想通りにはいきませんでした。
また、それまで30日以内の短期で派遣会社に労働者派遣をお願いしていた企業は、人材の確保に困ってしまいました。


例外的に日雇い派遣が認められる『業務』と『人』

ただ、『日雇い派遣の原則禁止』にはいくつかの例外があり、その条件に当てはまれば、30日以内の短期の派遣契約でも働いてもらうことが可能になります。
『例外的に認められている業務』と『例外的に認められている人』があるので、それぞれ見ていきましょう。

(1)例外的に認められている業務
・ソフトウェアの開発
・機械設計
・事務用機器操作
・通訳、翻訳、速記
・秘書
・ファイリング
・調査、分析
・財務処理
・取引文書作成
・デモンストレーション
・旅行の添乗、送迎
・受付、案内
・研究開発
・事業の実施体制の企画、立案
・書籍などの制作、編集
・広告デザイン
・OAインストラクション
・セールスエンジニアの営業、金融商品の営業

以上の業務は専門性が高く、代わりがなかなか見つからないことから、派遣切りの可能性が低いとされ、例外的に日雇い派遣が認められています。
つまり、自社の業務がこれらのいずれかである場合には、派遣会社と契約を結び、日雇い派遣の労働者に働いてもらうことが可能になるというわけです。

(2)例外的に認められている人
・60歳以上の高齢者
・昼間学生
・本業の年収500万円以上で派遣を副業とする人
・世帯年収が500万円以上で主たる生計者以外の人

なお、『昼間学生』とは、昼に学校へ行く、雇用保険の適用を受けない学生を指します。
夜間学部や定時制の学生、通信教育を受けている学生など、昼間学生に含まれない人は、日雇い派遣で働くことはできません。
また、『本業の年収500万円以上で派遣を副業とする人』でいう『本業』とは、複数の収入源のうち最も大きな収入源のことをいいます。
複数の収入源を合わせないと年収500万円以上にならない場合は、日雇い派遣で働くことはできません。

これらの条件を満たす人が例外なのは、日雇い派遣が主な収入源とならないとされ、雇用の安定という面から見ても問題がないと判断されているためです。
この条件のうちに、どれか一つでも当てはまっていれば、企業側は業種に限らず、その人を日雇い派遣の労働者として迎え入れることができます。

つまり、(1)の業務以外の企業は、この『例外的に認められている人』に絞れば、30日以内の短期でも派遣労働者を受け入れることが可能になるわけです。


直接雇用なら30日以内でも問題なし

もちろん、派遣会社はこれらの各種条件を把握しています。
自社が日雇い派遣をお願いしたいとなった場合、それが可能かどうかを教えてくれますし、条件を満たす人を探してくれるでしょう。
一方で、直接雇用という選択肢もあります。
派遣会社を通さずに会社が労働者と直接パートやアルバイト契約を結ぶのであれば、30日以内の期間で雇用しても問題はありません。

急に人材不足に陥るなど、いざというときにどのような手を打つことができるのか、自社であらかじめ整理し、検討しておくとよいでしょう。


※本記事の記載内容は、2020年1月現在の法令・情報等に基づいています。