社会保険労務士法人なか/労働保険事務組合福働会/福働会中部支部

外国企業と裁判に! 知っておきたい国際法律問題

19.11.26
ビジネス【企業法務】
dummy
国際化が進んだ現代では、国境を越えた企業間の取引も当たり前になっています。
しかし、言語や商慣習の違いなどから、国際取引ではトラブルが生じることも多いでしょう。
トラブルが訴訟にまで発展した場合、どの国の裁判所で訴訟を扱い、どの国の法律で判決が下されるのでしょうか。
万が一、紛争が起きたときのために準備をしておきましょう。
dummy
日本の裁判所で訴訟を起こせる条件は?

異なる国の者同士のトラブルが裁判にまで発展した場合、どこの国の裁判所が訴訟を取り扱うべきかという問題を『国際裁判管轄』といいます。
かつては、日本の民事訴訟法には国際裁判管轄に関する規定がありませんでしたが、2012年4月1日から施行された改正民事訴訟法に規定が追加されました。
それによれば、取引における債務の履行地(契約で決めた内容を実際に行う場所)が日本国内と定められている場合には、日本の裁判所に訴訟を提起することができます。
取引の相手と、事前に日本の裁判所で訴訟をすることを合意しておくこともできます。
また、外国の法律次第では、日本の裁判所にも外国の裁判所にも管轄が認められる場合も考えられます。


どこの国の法律で解決するかを契約書に明記

しかし、日本の裁判所に訴訟を提起したとしても、日本の法律を使って解決できるとは限りません。
国際的なトラブルを解決するために使う国の法律を、準拠法といいます。
準拠法について、日本では『法の適用に関する通則法』という法律を定めています。
それによると、まず、双方の当事者が準拠法を指定することができるとされています。
つまり、日本の法律で解決することを契約書に明記していれば日本の法律で解決することになりますし、外国の法律で解決することを契約書に明記していれば外国の法律で解決することになります。
当事者の合意がない場合には、取引の際、その取引に最も密接な関係がある場所の法律が準拠法になるとされています。
これを『最密接関係地法』と呼びます。
どの場所が取引と最も密接な関係があるかどうかはケースバイケースであり、事案ごとに判断するしかありません。
しかし、たとえば、売買契約であれば目的物を引き渡す当事者が通常居所している場所の法律が、不動産の取引であれば不動産の所在地の法律が最密接関係地法と推定されることになります。

このように、国際取引では日本の裁判所で訴訟ができないこともあれば、外国の法律で解決しなければならないこともあります。
取引を行う前にトラブルが起きたとき、日本の裁判所で、日本の法律で解決できるかをしっかり確認しておくことが重要です。


※本記事の記載内容は、2019年11月現在の法令・情報等に基づいています。