社会保険労務士法人なか/労働保険事務組合福働会/福働会中部支部

アルバイトも有給休暇を取得できる! 知っておきたい権利の詳細

19.10.08
ビジネス【労働法】
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会社やお店を経営している際に、繁忙期などの短期間だけアルバイトを雇っている事業主は少なくありません。
アルバイトは正社員と違って権利が少なく、雇用が楽だと考えてはいませんか? 
労働基準法により、アルバイトにも正社員と同様に認められている権利はいくつもあります。
今回はそのなかでも、アルバイト側でも特に権利意識が低いと思われる有給休暇について、2019年に改正された付与日数などの点も含めてご説明します。
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有給休暇はどのような人に与えられるのか

労働基準法では、労働者の心身の健康を守るため、業種業態にかかわらず、雇い入れの日から起算して6カ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に有給休暇の権利(以下、年休権)を与えています(同法39条1項)。
この年休権を行使するには、雇い主側の承認などは不要ですし、年休を何のために使うかも労働者の自由です。
年休権は、パートタイマーやアルバイトの場合も例外ではありません。
正社員よりも少なくはなりますが、所定の労働時間及び日数に比例した日数の有給休暇が最低限付与されることになっています(労基法39条3項、労基規則24条の3)。
年休権の文言にある“全労働日”とは、フルタイムで働いている人を10割としたものではなく、雇用契約上の労働日に当たります。
つまり週3日で契約をしている人であれば、それをもとに6カ月分の勤務状況を見て、8割以上の勤務の有無を判断します。

年休権を行使すると、その日の労働者の労働義務が消滅しますが、賃金は発生します。
有給休暇とは文字通り、『給料が有る』休暇ということです。
アルバイトから急に有給休暇を取りたいと話をされたときでも、うろたえたりせずに、そのアルバイトが年休権発生の要件を満たしているかどうかを検討しましょう。


繁忙期に「明日から有休を」と言われたら?

労働者は、年休権を行使する時季について、使用者に対して請求します(労基法39条5項本文)。
これを『時季指定権』といいます。

では、労働者が繁忙期に年休権を行使したいとして時季指定権を行使してきたとき、使用者は、これを拒めないのでしょうか?
そのようなことはありません。
使用者は、労働者の請求した時季に有給休暇を与えることが“事業の正常な運営を妨げる場合”には、ほかの時季に与えることができます(労基法39条5項但書)。
これを『時季変更権』といいます。

では、“事業の正常な運営を妨げる場合”とは、どのような場合なのでしょうか。
たとえば、アルバイトをまとめるバイトリーダーがいないと店が回らないといった場合、そのバイトリーダーが有給休暇を取れば、常に“事業の正常な運営を妨げる”ことにはならないのでしょうか。
使用者は労働者全員が年休を取れるように配慮する必要があり、判例では、『状況に応じた配慮』、たとえば、シフトが組まれた後でも、シフト変更により代替勤務者を配置するくらいの通常の配慮はしなくてはならないと示しています。
雇い主は、バイトリーダーがいないと店が回らないといった事態にならないように、日頃からサブリーダーを育成したり、代替勤務者を見つけておいたりするようにして、バイトリーダーにも快く休みを取らせることが大切です。


有休を希望しないアルバイトへの対応は?

従来は、年次有給休暇の取得日数について、雇い主側に特に義務がありませんでした。
そのため、有給休暇を希望しない労働者に対して、有給休暇を取らせないことも可能でした。
しかし労働基準法が改正され、2019年4月からすべての企業において年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが必要となりました。
付与日数は勤続年数、週所定労働日数、年間所定労働日数に応じて細かく取り決めされていますが、たとえば、週の所定労働時間が30時間未満、週の所定労働日数が3日のアルバイトの場合、年10日以上の年次有給休暇が付与されるのは、勤務期間が5年6カ月以上の場合です。
また、法改正後、使用者は労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存しなければならなくなりました(労基法規則第24条の7)。
年次有給休暇管理簿は、労働者ごとに年次有給休暇の、時季(年次有給休暇を取得した日付)、日数(年次有給休暇を取得した日数)、基準日(労働者に年次有給休暇を取得する権利が生じた日)を管理するための書類です。
年次有給休暇管理簿の管理には十分注意し、雇い入れた日から6カ月以上働いているパートタイマーやアルバイトには、雇い主側から休みを取るように促しましょう。

労働者にとって有給休暇は、心身を回復させ、労働力の維持向上を図り、ゆとりある生活を実現するための大切な権利です。
使用者は、労働者が所定の有給休暇をしっかり取れているか、日頃から十分に配慮するようにしましょう。

出典:https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdf


※本記事の記載内容は、2019年10月現在の法令・情報等に基づいています。