社会保険労務士法人なか/労働保険事務組合福働会/福働会中部支部

建設業で注目を集めるBIMとは? 導入のメリットと課題

19.10.01
業種別【建設業】
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BIM(ビム)はBuilding Information Modeling(ビルディングインフォメーションモデリング)を略したもので、建設業界ではCAD(コンピュータで図面作成ができるソフトウェア)に代わる新しい技術として注目を集めています。
BIMは立体的に建造物を管理・把握できるという点が大きなメリットですが、導入のハードルが高いために様子見をしている企業も多いのではないでしょうか。
一般的に『メリットも大きいがハードルも高い』と言われるBIM。
その魅力と課題はどこにあるのでしょうか? 今回は、その特徴やメリット、課題について紹介します。
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BIMを導入するメリットとは?

BIMの大きな特徴は、三次元で全方向から建造物の構造を確認できることです。
BIMのなかに建具や家具などのパーツをデータとして設計して、それらを組み合わせてパソコン上で建造物を構築していきます。
実際に建造物を建てるのと同じ手順で、パーツを組み合わせて構築していくため、現実の建造物とBIMによるバーチャルな建造物との間の数値的誤差が生まれにくいという特徴もあります。
また、BIMでは最初から立体でパーツを作成していき、作られたデータは立体図や断面図、平面図などのあらゆる図面に切り出すことが可能です。
この点が、平面から設計するCADとの大きな違いです。
では、建設業にBIMを導入するメリットはどこにあるのでしょうか?

各作成図面が連動している
各図面(平面図・立体図など)が連動していない場合は、設計に修正が生じると、それぞれのデータを操作して修正し、整合性を保たなければなりません。
しかしBIMであれば、3次元モデルに修正を加えることで、連動している図面も自動で修正されます。

工期やコストなどを可視化できる
BIMでは各パーツのサイズや重量といったデータだけでなく、工期やコストを連動させることで進捗状況を立体的に見ることができます。
数値ではなく立体的なアニメーションで進捗がわかれば、『どこの作業が遅れているのか』『現時点でどの作業が完了しているのか』などが一目瞭然というわけです。

設計ミスを減少できる
建造物が大きくなればなるほど、設計ミスが取り返しのつかない致命傷を与える可能性が高まります。
すでに建設中の段階で設計ミスが見つかった場合、作業を中止したり、後退してやり直したりする必要も出てくるでしょう。
この点、パソコン上で実際と同じように建物を組み立てていくBIMでは、『どの段階で不具合が出るか』が設計段階で見つけやすいため、設計ミスを早期に修正することができるのです。

多くの関係者の意見を反映できる
CADで作られた平面図の場合、図面に精通した人であれば、図面から実際の建造物をイメージすることができます。
しかし建設業のクライアントの多くは、そうした図面に精通していません。
そのため、早い段階でデザインや構造についての具体的な意見を交わすことがむずかしいのが実情です。
しかし、BIMであれば建造物の完成予想図が3Dでリアルに可視化されるため、クライアントをはじめとした多くの関係者の意見を設計段階で反映することが可能です。


BIMが抱える課題とは?

このようにメリットの多いBIM。
導入したいと考えている建設業者も多いと思いますが、やはり課題も残っています。

初期段階での手間がかかる
BIMの課題としては、設計初期段階で必要ない作業まで発生し、設計者に負荷がかかるという点があります。
たとえば、各段階で必要な情報が異なるため、最初の頃に求められる情報はそこまで多くはありません。
しかしBIMの場合は、初期の段階でかなりの量の情報を設計図面に入れ込む必要があります。
なぜなら、BIMは設計段階でミスを見つけ、問題を解決することができるということが大きなメリットとなっているからです。
しかし、そうすると設計者はBIMに多くの情報を入れ込む作業を行わなければなりません。

人材育成にコストがかかる
BIMはまだ日本では普及しているとは言いがたいのが現状です。
その理由として、ツール自体の開発が欧米に比べて遅れていることや、導入コストが高いということがあげられます。
そのため、CADとは違ってBIMを使いこなせる技術者の数が絶対的に少ないのです。
BIMを導入するのであれば、技術者の育成は避けて通れません。
導入コストとして人材育成コストも必要となる点が、BIMの課題の一つといえます。

建造物の構造をリアルに可視化できるBIM。
コストや人材不足などでまだまだ課題が残っていますが、活用できるシーンは徐々に広がっています。
上にあげたBIMのメリットと今後の課題を参考に、ぜひ一度、自社での導入を考えてみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2019年10月現在の法令・情報等に基づいています。