社会保険労務士法人なか/労働保険事務組合福働会/福働会中部支部

怠ると怖い、歯科医療のインフォームドコンセント

19.08.01
業種別【歯科医業】
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歯科医院を選ぶ際に患者が重要視するのが、適切なインフォームドコンセント、すなわち『説明と同意』を行っているかどうかです。
これは、患者だけでなく、歯科医院にとっても大切なことです。
なぜならば、それが不十分であると、患者とのトラブルや訴訟に発展するケースもあるからです。
そこで、インフォームドコンセントの範囲、適切に行えているかどうかのチェック項目を紹介していきます。
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インフォームドコンセントの範囲とは?

患者が安心して治療を受けられる医院にするためには、インフォームドコンセントが重要です。
では、具体的に『説明』はどこまで必要なのでしょうか。
また、『同意』には何が含まれるのでしょうか。

説明には、ポジティブなものだけではなくネガティブなものも含まれます。
たとえば歯科の場合なら、虫歯がひどく神経を抜かなければ治療がむずかしいときには、神経を抜くためにどのような医療行為が選択できるのかを患者に説明しなければなりません。
あわせて、麻酔を使うときには、麻酔を使っても痛みが出る可能性があることや、麻酔を打つことによる副作用の可能性についても説明が必要です。
患者のなかには、神経を抜かない治療法を希望する人もいるでしょう。
その場合は神経を抜かない治療法が可能なのか、可能であればどのような治療法があるのかを提示し、それぞれの治療法についてリスクを説明する必要があります。
さらに、単にこれらの情報について説明するだけでなく、患者に理解を促さなければなりません。

また、説明と同じく欠けてはならないのが、患者の『同意』です。
この同意は本心から出るものでなければならず、医師から見て患者がよく理解できていないのに同意していると判断できるときは、理解を深めるために説明を重ねなければなりません。


トラブルや訴訟に発展するケースも

インフォームドコンセントが重要であることは理解できていても、経営上一人の患者に多くの時間を割くことができないという事情もあるでしょう。
しかし、それを怠ってしまったことで、トラブルになる例は少なくありません。
なかには患者が弁護士に相談し、損害賠償を請求するケースや、訴訟を起こすケースも出てきています。
たとえば、2019年の1月には、入国管理局に収容中の外国人男性が7本以上の歯を抜歯されたとして、歯科医院に1,100万円の損害賠償を求めて訴訟を起こしています。
また、ほかのケースでは「歯のかぶせものをレジンに変えて欲しい」と来院した男性に対し、抜歯したとして、160万円以上の損害賠償を支払うよう命じられています。
どちらもインフォームドコンセントがなかったために起こったケースです。


適切に説明と同意を行っているかチェックを

どこまで説明し、同意を得るかについては、歯科医院をはじめとする各医療機関に判断が委ねられています。
参考までに、以下のチェック項目を適切に行われているかの参考にしてみてください。

・患者が思ったことを発言できるような環境を整えている
・患者が十分な説明を受けて納得できる状況をつくっている
・専門用語を多用せず、素人である患者にもわかりやすいように説明を行っている
・医師とスタッフの間で情報を共有し、患者に対して同じ説明ができる環境をつくっている
・適切な診断ができるよう検査を行っている
・治療期間や治療にかかる費用について明示している
・よい情報だけでなく、治療を受けるに当たって不利益となる情報についても説明している
・代替治療がある場合はそれについても提示し、そのメリットやデメリットについても説明して理解を得ている
・歯科医がすすめる治療法を選択しない自由がある
・一度同意をしたとしても、あとから撤回できる環境がある

十分な説明を行うためには、どうしても患者一人あたりにかかる時間が増えてしまいます。
しかし後々のトラブルを防ぎ、患者の満足度が高い医療を提供するためにも、適切なインフォームドコンセントを行っているか、今一度見直しておきたいところです。


※本記事の記載内容は、2019年8月現在の法令・情報等に基づいています。