税法上の抜け穴? 節税や脱税と異なる“租税回避”とは?
アメリカのトランプ大統領が自国企業における大規模な法人税の減税を行ったことで、アメリカが“タックスヘイブン”(租税回避地)扱いにならないよう、財務省は税制を見直すことを発表しました。
ニュースなどでよく聞く“タックスヘイブン”や“租税回避”という言葉。いったいどういう意味なのでしょうか。節税とは異なるものなのでしょうか。
今回は、具体例を盛り込みつつ、租税回避の意味や方法、注意点などをご紹介します。
ニュースなどでよく聞く“タックスヘイブン”や“租税回避”という言葉。いったいどういう意味なのでしょうか。節税とは異なるものなのでしょうか。
今回は、具体例を盛り込みつつ、租税回避の意味や方法、注意点などをご紹介します。
節税と脱税、租税回避の違いとは?
納税の義務はもちろん守らなければいけませんが、1円でも納税額を減らしたいというのが経営者の本音ではないでしょうか。
そのため、企業の財務管理者は支出を経費にしたり、決算で調整したりとさまざまな手段を講じて“節税”に努めます。
節税は税法の範囲内で、税負担を軽減させることを指し、それこそ巷にはノウハウ本や情報が山ほど出ており、経営者であれば誰もが一度は節税を行った、もしくは考えたことがあるのではないでしょうか。
一方で、税金の一部やすべての納税を逃れるため、所得隠しや架空計上など、税法に背く違法な行為のことを“脱税”といいます。
ニュースなどで多くの会社が国税局から告発されているのは、この脱税行為です。
脱税はそれぞれのケースによって判断が異なりますが、告発されると“法人税法違反”などの罪に問われます。
ちなみに、2018年度に国税局が摘発した脱税事件は182件で、脱税額の総額は約140億円でした。
この脱税と非常に似ている部分がありますが、違法ではないケースとして“租税回避”があります。
租税回避とは、税法や国税局が意図していない方法で税金の負担を軽減、または逃れようとする方法のことで、税法や国税局の認識している範囲で行われる節税とは区別されます。
また、違法ではないので、脱税とも異なります。
大まかにいうと、節税と脱税の間の税負担の軽減または逃れる方法が租税回避なのです。
税法や国税局が意図していない方法とは、つまり“法の抜け穴”のこと。
租税回避のほとんどが国際的な税取引を利用したものがメインで、国内では行うことができないと考えていいでしょう。
なぜならば、国内においては税法も整備されており、法の抜け穴を見つけることは困難になってきているからです。
しかし、世界にはさまざまな税取引があり、日本の税法が他国における税取引まで関与することは実質的に不可能です。
その法の抜け穴を突いたのが、租税回避というわけです。
タックスヘイブンを利用した租税回避の方法
租税回避の方法はさまざまですが、今回は、ニュースなどでもおなじみのタックスヘイブンを利用した租税回避についてご説明したいと思います。
タックスヘイブンとは、日本語で“租税回避地”と訳される通り、法人税などの課税が著しく低いか、もしくは免除される地域のことを指します。
これらの税率の低いタックスヘイブンの地域に子会社をつくり、親会社の所得をその子会社の所得として申告することによって、日本からの課税を避けることができます。
タックスヘイブンは、自国以外の企業に向けて、戦略的に設定している地域がほとんどです。
企業側は租税回避に利用できるというメリットがあり、タックスヘイブンに設定してある地域は、その企業による雇用の創生や手数料、地域の活性化などの恩恵が受けられるというメリットがあります。
ただし、反社会的組織のマネーロンダリングの温床になっているといった批判も多く、日本でも決してよいイメージではとらえられていません。
また、一時期は“パナマ文書”の流出問題が世界的な話題になりました。
パナマ文書とは、パナマの法律事務所“モサック・フォンセカ”から流出した内部文書のことで、世界各国のトップや富裕層による、パナマやバハマなどのタックスヘイブンを利用した金融取引を記録したものでした。
パナマ文書には、日本の企業や個人の情報も記されており、国税局の調査によって、所得税など総額31億円の申告漏れがあったことが発覚しました。
さらに、現在は、“タックスヘイブン対策税制”によって、タックスヘイブンに子会社を設立しても、租税回避に利用できない可能性も出てきました。
タックスヘイブン対策税制では、法人税が0、または税負担率が20%未満になる海外の子会社の所得が対象になり、該当すると、子会社の所得と日本国内の親会社の所得を合算して課税されてしまいます。
ただし、これはタックスヘイブンにペーパーカンパニーの子会社をつくって租税回避に利用させないための制度で、実際に海外に店舗や事務所があり、現地で子会社が経済活動を行っている場合は、制度の適用除外となる場合もあります。
また、香港においては、現地に子会社を設立した場合、“海外法人の株式の50%以上を日本の非居住者が保有する”か、“すべての株主の持ち株の比率を5%未満にする”というどちらかの条件を満たせば、タックスヘイブン対策税制は適用されません。
香港やシンガポールなどは法人税率が16~17%です。
日本の法人税率29.74%(2018年4月1日以後)に比べると大幅に低いことがわかります。
細かい取り決めや手続きは必要ですが、タックスヘイブン対策税制への措置も講じられています。
自社の租税回避の可能性について、一度、考えてみてはいかがでしょうか。
※本記事の記載内容は、2019年6月現在の法令・情報等に基づいています。
納税の義務はもちろん守らなければいけませんが、1円でも納税額を減らしたいというのが経営者の本音ではないでしょうか。
そのため、企業の財務管理者は支出を経費にしたり、決算で調整したりとさまざまな手段を講じて“節税”に努めます。
節税は税法の範囲内で、税負担を軽減させることを指し、それこそ巷にはノウハウ本や情報が山ほど出ており、経営者であれば誰もが一度は節税を行った、もしくは考えたことがあるのではないでしょうか。
一方で、税金の一部やすべての納税を逃れるため、所得隠しや架空計上など、税法に背く違法な行為のことを“脱税”といいます。
ニュースなどで多くの会社が国税局から告発されているのは、この脱税行為です。
脱税はそれぞれのケースによって判断が異なりますが、告発されると“法人税法違反”などの罪に問われます。
ちなみに、2018年度に国税局が摘発した脱税事件は182件で、脱税額の総額は約140億円でした。
この脱税と非常に似ている部分がありますが、違法ではないケースとして“租税回避”があります。
租税回避とは、税法や国税局が意図していない方法で税金の負担を軽減、または逃れようとする方法のことで、税法や国税局の認識している範囲で行われる節税とは区別されます。
また、違法ではないので、脱税とも異なります。
大まかにいうと、節税と脱税の間の税負担の軽減または逃れる方法が租税回避なのです。
税法や国税局が意図していない方法とは、つまり“法の抜け穴”のこと。
租税回避のほとんどが国際的な税取引を利用したものがメインで、国内では行うことができないと考えていいでしょう。
なぜならば、国内においては税法も整備されており、法の抜け穴を見つけることは困難になってきているからです。
しかし、世界にはさまざまな税取引があり、日本の税法が他国における税取引まで関与することは実質的に不可能です。
その法の抜け穴を突いたのが、租税回避というわけです。
タックスヘイブンを利用した租税回避の方法
租税回避の方法はさまざまですが、今回は、ニュースなどでもおなじみのタックスヘイブンを利用した租税回避についてご説明したいと思います。
タックスヘイブンとは、日本語で“租税回避地”と訳される通り、法人税などの課税が著しく低いか、もしくは免除される地域のことを指します。
これらの税率の低いタックスヘイブンの地域に子会社をつくり、親会社の所得をその子会社の所得として申告することによって、日本からの課税を避けることができます。
タックスヘイブンは、自国以外の企業に向けて、戦略的に設定している地域がほとんどです。
企業側は租税回避に利用できるというメリットがあり、タックスヘイブンに設定してある地域は、その企業による雇用の創生や手数料、地域の活性化などの恩恵が受けられるというメリットがあります。
ただし、反社会的組織のマネーロンダリングの温床になっているといった批判も多く、日本でも決してよいイメージではとらえられていません。
また、一時期は“パナマ文書”の流出問題が世界的な話題になりました。
パナマ文書とは、パナマの法律事務所“モサック・フォンセカ”から流出した内部文書のことで、世界各国のトップや富裕層による、パナマやバハマなどのタックスヘイブンを利用した金融取引を記録したものでした。
パナマ文書には、日本の企業や個人の情報も記されており、国税局の調査によって、所得税など総額31億円の申告漏れがあったことが発覚しました。
さらに、現在は、“タックスヘイブン対策税制”によって、タックスヘイブンに子会社を設立しても、租税回避に利用できない可能性も出てきました。
タックスヘイブン対策税制では、法人税が0、または税負担率が20%未満になる海外の子会社の所得が対象になり、該当すると、子会社の所得と日本国内の親会社の所得を合算して課税されてしまいます。
ただし、これはタックスヘイブンにペーパーカンパニーの子会社をつくって租税回避に利用させないための制度で、実際に海外に店舗や事務所があり、現地で子会社が経済活動を行っている場合は、制度の適用除外となる場合もあります。
また、香港においては、現地に子会社を設立した場合、“海外法人の株式の50%以上を日本の非居住者が保有する”か、“すべての株主の持ち株の比率を5%未満にする”というどちらかの条件を満たせば、タックスヘイブン対策税制は適用されません。
香港やシンガポールなどは法人税率が16~17%です。
日本の法人税率29.74%(2018年4月1日以後)に比べると大幅に低いことがわかります。
細かい取り決めや手続きは必要ですが、タックスヘイブン対策税制への措置も講じられています。
自社の租税回避の可能性について、一度、考えてみてはいかがでしょうか。
※本記事の記載内容は、2019年6月現在の法令・情報等に基づいています。