個人の事業承継をスムーズに! 新制度『個人版事業承継税制』とは
2018年の4月1日から、『事業承継税制』について、これまでの措置に加え、法人の事業承継がしやすくなる特例措置が創設されました。
これにより、事業承継税制の認定申請が飛躍的に増加しています。
そして2019年度の税制改正では、個人事業主のための『個人版事業承継税制』も創設され、個人事業主も事業承継がしやすくなることが期待されています。
今回は、この『個人版事業承継税制』の詳細と、申請の際のポイントなどをご説明します。
これにより、事業承継税制の認定申請が飛躍的に増加しています。
そして2019年度の税制改正では、個人事業主のための『個人版事業承継税制』も創設され、個人事業主も事業承継がしやすくなることが期待されています。
今回は、この『個人版事業承継税制』の詳細と、申請の際のポイントなどをご説明します。
先行の法人向け特例措置では大きな効果が
『事業承継税制』とは、後継者である受贈者、相続人等が円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与または相続等により取得した場合において、その非上場株式等にかかる贈与税、相続について、一帯の用件のもと、その相続を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税、相続税の納付が免除される制度です。
非上場会社で、『経営承継円滑化法』による都道府県知事の認定を受けていれば、どの中小企業でも利用することができます。
この制度は、中小企業における事業承継を後押しするためのもので、承継の際に、贈与税や相続税などの税金が負担となり、承継が妨げられることのないようにするものでもあります。 そして、2018年度の税制改正では、この『事業承継税制』がさらに強化され、これまでの措置に加え、さまざまな特例措置が創設されました。
たとえば、これまでは贈与税や相続税の納税の猶予の対象になるのは、総株式の3分の2までが上限とされており、非上場企業の株式を引き継ぐ際に足かせとなっていました。 しかし、今年度からはこれを撤廃。総株式のすべてにかかる税負担を100%免除できることになりました。
また、これまでは後継者が廃業したり、株を売却したりする際に、環境の変化によって株価が下落しても、承継時の株価をもとに贈与税や相続税が課税されてきましたが、特例措置では、売却時や廃業時の株の評価額をもとに納税額を計算し、承継時の株価をもとにした納税額との差額を免除してもらえることになりました。
このほかにも、特例の創設によって『事業承継税制』が拡充され、事業承継がよりスムーズに行えるようになりました。
中小企業庁の統計によれば、特例が創設される前の2017年は年間400件ほどだった認定件数が、拡充後の2018年は年間4,000件近くと、実に10倍となっています。 新しい制度にメリットを見出している企業の多さがうかがえます。
個人事業者は事業承継時の税負担がゼロに
そして、2019年度の税制改正では、個人事業者が事業承継を行う際の税負担をゼロとする新しい制度が創設されます。
そもそも個人事業者とは、農業・漁業などから、小売業や飲食業、サービス業、会社に属していないコンサルタントやプログラマー、デザイナー、独立している各種士業まで、法人化せずに自ら事業を行っているすべての個人を指します。
法人ではないこれら個人事業者にとっても、次世代への事業承継が大きな課題となって立ちふさがっています。
この『個人版事業承継税制』は、2019年1月1日から2028年12月31日の間に行われる贈与や相続が対象となります。
法人向けの『事業承継税制』と同様に、個人版事業承継税制も2019年から10年間の時限措置となります。
時限措置とはいえ、個人事業者が事業承継を行う際の税負担をゼロにすることを目的とした制度ですので、この期間に贈与や相続が発生する個人事業者は、ぜひとも利用したいところです。
『事業承継税制』では、法人の株式が猶予の対象資産となりましたが、株を持たない個人事業主は、土地や建物、機械や器具備品などにかかる贈与税や相続税に対し、100%納税猶予されることになります。
土地・建物には条件があり、土地は400㎡、建物は800㎡までとなり、また、畜産農家であれば乳牛や馬、果樹なども資産になります。さらに、特許権など形のないものも、無形償却資産として対象になります。
事業の円滑な承継と持続的発展を目指して
個人事業主にとってみれば、子どもなどに事業を引き継がせるときに贈与税や相続税の納税を猶予してもらえるのは非常に助かります。
ただし、自動車などの個人の資産を事業の資産として納税を免れるというおそれがあるため、2019年から5年以内に、各都道府県にあらかじめ承継計画を提出する必要があります。 さらに、法人向けの『事業承継税制』と同じく、『経営承継円滑化法』による都道府県知事の認定を受けなければいけません。 認定されてはじめて、この制度を利用することができます。
総務省の調べでは、2025年までに70歳以上になる個人事業者は150万人と、個人事業者全体の73%にもなると予想され、現在すでに、高齢化や後継者難により、黒字経営でも廃業を余儀なくされる経営者が増えてきています。
円滑な世代交代と各事業の持続的な発展が喫緊の課題となっていることが、この数字からもおわかりいただけると思います。
このような時代にあって、納税負担をゼロにできるこれらの制度は、事業承継の準備に大きな後押しとなるはず。ぜひ活用し、スムーズな事業承継ができるよう、早めの準備をしておきましょう。
※本記事の記載内容は、2019年3月現在の法令・情報等に基づいています。
『事業承継税制』とは、後継者である受贈者、相続人等が円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与または相続等により取得した場合において、その非上場株式等にかかる贈与税、相続について、一帯の用件のもと、その相続を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税、相続税の納付が免除される制度です。
非上場会社で、『経営承継円滑化法』による都道府県知事の認定を受けていれば、どの中小企業でも利用することができます。
この制度は、中小企業における事業承継を後押しするためのもので、承継の際に、贈与税や相続税などの税金が負担となり、承継が妨げられることのないようにするものでもあります。 そして、2018年度の税制改正では、この『事業承継税制』がさらに強化され、これまでの措置に加え、さまざまな特例措置が創設されました。
たとえば、これまでは贈与税や相続税の納税の猶予の対象になるのは、総株式の3分の2までが上限とされており、非上場企業の株式を引き継ぐ際に足かせとなっていました。 しかし、今年度からはこれを撤廃。総株式のすべてにかかる税負担を100%免除できることになりました。
また、これまでは後継者が廃業したり、株を売却したりする際に、環境の変化によって株価が下落しても、承継時の株価をもとに贈与税や相続税が課税されてきましたが、特例措置では、売却時や廃業時の株の評価額をもとに納税額を計算し、承継時の株価をもとにした納税額との差額を免除してもらえることになりました。
このほかにも、特例の創設によって『事業承継税制』が拡充され、事業承継がよりスムーズに行えるようになりました。
中小企業庁の統計によれば、特例が創設される前の2017年は年間400件ほどだった認定件数が、拡充後の2018年は年間4,000件近くと、実に10倍となっています。 新しい制度にメリットを見出している企業の多さがうかがえます。
個人事業者は事業承継時の税負担がゼロに
そして、2019年度の税制改正では、個人事業者が事業承継を行う際の税負担をゼロとする新しい制度が創設されます。
そもそも個人事業者とは、農業・漁業などから、小売業や飲食業、サービス業、会社に属していないコンサルタントやプログラマー、デザイナー、独立している各種士業まで、法人化せずに自ら事業を行っているすべての個人を指します。
法人ではないこれら個人事業者にとっても、次世代への事業承継が大きな課題となって立ちふさがっています。
この『個人版事業承継税制』は、2019年1月1日から2028年12月31日の間に行われる贈与や相続が対象となります。
法人向けの『事業承継税制』と同様に、個人版事業承継税制も2019年から10年間の時限措置となります。
時限措置とはいえ、個人事業者が事業承継を行う際の税負担をゼロにすることを目的とした制度ですので、この期間に贈与や相続が発生する個人事業者は、ぜひとも利用したいところです。
『事業承継税制』では、法人の株式が猶予の対象資産となりましたが、株を持たない個人事業主は、土地や建物、機械や器具備品などにかかる贈与税や相続税に対し、100%納税猶予されることになります。
土地・建物には条件があり、土地は400㎡、建物は800㎡までとなり、また、畜産農家であれば乳牛や馬、果樹なども資産になります。さらに、特許権など形のないものも、無形償却資産として対象になります。
事業の円滑な承継と持続的発展を目指して
個人事業主にとってみれば、子どもなどに事業を引き継がせるときに贈与税や相続税の納税を猶予してもらえるのは非常に助かります。
ただし、自動車などの個人の資産を事業の資産として納税を免れるというおそれがあるため、2019年から5年以内に、各都道府県にあらかじめ承継計画を提出する必要があります。 さらに、法人向けの『事業承継税制』と同じく、『経営承継円滑化法』による都道府県知事の認定を受けなければいけません。 認定されてはじめて、この制度を利用することができます。
総務省の調べでは、2025年までに70歳以上になる個人事業者は150万人と、個人事業者全体の73%にもなると予想され、現在すでに、高齢化や後継者難により、黒字経営でも廃業を余儀なくされる経営者が増えてきています。
円滑な世代交代と各事業の持続的な発展が喫緊の課題となっていることが、この数字からもおわかりいただけると思います。
このような時代にあって、納税負担をゼロにできるこれらの制度は、事業承継の準備に大きな後押しとなるはず。ぜひ活用し、スムーズな事業承継ができるよう、早めの準備をしておきましょう。
※本記事の記載内容は、2019年3月現在の法令・情報等に基づいています。