本当に節税になっている? 『法人向け定期保険』のからくり
中小企業の経営者ともなれば、ひっきりなしに保険会社からの営業電話がかかってくることと思います。
保険の営業マンが「これに入れば法人税が節税できます」との謳い文句ですすめるのが、『法人向け定期保険』。
中には、法人税を4割も減税できるとする商品もあります。その口上は果たして本当なのでしょうか?
今回は、法人向けの定期保険について詳しくご紹介します。
保険の営業マンが「これに入れば法人税が節税できます」との謳い文句ですすめるのが、『法人向け定期保険』。
中には、法人税を4割も減税できるとする商品もあります。その口上は果たして本当なのでしょうか?
今回は、法人向けの定期保険について詳しくご紹介します。
加入することで節税になる仕組みとは?
ご存知の通り、法人税は会社の収益に法人税率をかけて算出されます。
たとえば資本金が1億円以下の企業で、その年の収益が500万円だった場合、法人税率が30%であれば、法人税は500万円×0.3で、150万円となります(実際の法人税率は条件によって変動しますが、ここではわかりやすく30%としています)。
収益が100万円なら法人税は30万円となり、収益が0円なら法人税は0円です。
つまり会社の収益が低ければ低いほど、法人税も安くなります。
この収益を下げるために、保険に加入するという方法があります。
『法人向け定期保険』は、主に経営者や役員が死亡した場合に保険金が支払われるもので、加入して毎月の保険料を損金として算入することで、課税所得を減らし、結果的に法人税を減らすことができるというわけです。
保険には、一定の条件を満たすことで全額を経費にできる“全損型”、半分が経費になる“半損型”、まったく経費にならない“全額資産計上型”の3通りがあります。
定期保険は、基本的には貯蓄性のない保障目的の掛捨保険であるため、支払った保険料は損金となります。
ところが保険の種類によっては、支払時に保険料の一部を前払費用として資産計上し一定期間経過後に損金に算入するものがあるため、必ずしも支払時に全額が損金となるとは限りません。
そして、定期保険であっても、加入後10年ほどで解約すると『解約返戻金(かいやくへんれいきん)』を受け取ることができるものもあり、これが注目を集めています。
つまり、毎月の保険料を支払うことで収益を減らし、法人税を節税する一方で、その支払っていた保険料は、高額の解約返戻金という形で戻ってくる仕組みです。
収益として計上される、解約返戻金の落とし穴
ここまで聞くと、すぐにでも全損型の法人向け定期保険に入って手元の資金を多くしたいと思えてきますが、そこに落とし穴があります。
実は、この解約した際に支払われる『解約返戻金』は、収益としてカウントされてしまうのです。
つまり、保険に加入してから解約するまでの期間は法人税を節税できたとしても、解約した際の『解約返戻金』によって、これまで節税してきた法人税と同等の法人税を解約した年に支払うことになります。
これを『課税の繰り延べ』と呼びます。
たとえば、毎年200万円の保険料を支払い、5年後に解約すると950万円の『解約返戻金』を受け取れる保険に入ったとします。
法人税率30%として200万円×0.3とすると、1年間の“節税効果”は、60万円。
これを5年続けると、300万円もの節税になります。
しかし解約時に950万円が支払われるので、これが収益として計上されると950万円×0.3となり、285万円もの法人税を支払わなければなりません。
結果、5年で300万円を節税し、5年後に支払う法人税が285万円(支払った保険料のうち資産計上すべき金額がある場合、節税額は減少します)。
こうしてみると、手元に残るお金は案外少ないといえます。
とはいえ、保険の解約時に赤字決算であれば、結果的に法人税は低くなるので、通常通りに法人税を支払うよりも、細かい節税にはなるかもしれません。
保険は、本来の意義に基づいた利用を
これら『法人向け定期保険』について、2018年6月、金融庁は、経営者や役員死亡時の保障を前面に出しながら、同時に節税のために中途解約を前提としているのは、商品設計的に本来の保険の趣旨から逸脱しているおそれがあるとして、調査に乗り出しました。
金融庁が指摘する通り、保険は節税するためのものではありません。
経営者や役員が倒れてしまうと、会社の運営上、大きな損害を与えます。
そのための危機回避策として、万が一の場合の死亡退職金や会社の運転資金に保険金を充てられるようにとの目的で加入するのが、正しい保険のあり方といえます。
本来の意味での保険への加入は、リスクヘッジになるだけでなく、会社運営に必要不可欠な、精神的安定感にもつながっていきます。
未加入の方は、自身の会社の状況に適したプランを一考してみることをおすすめします。
ご存知の通り、法人税は会社の収益に法人税率をかけて算出されます。
たとえば資本金が1億円以下の企業で、その年の収益が500万円だった場合、法人税率が30%であれば、法人税は500万円×0.3で、150万円となります(実際の法人税率は条件によって変動しますが、ここではわかりやすく30%としています)。
収益が100万円なら法人税は30万円となり、収益が0円なら法人税は0円です。
つまり会社の収益が低ければ低いほど、法人税も安くなります。
この収益を下げるために、保険に加入するという方法があります。
『法人向け定期保険』は、主に経営者や役員が死亡した場合に保険金が支払われるもので、加入して毎月の保険料を損金として算入することで、課税所得を減らし、結果的に法人税を減らすことができるというわけです。
保険には、一定の条件を満たすことで全額を経費にできる“全損型”、半分が経費になる“半損型”、まったく経費にならない“全額資産計上型”の3通りがあります。
定期保険は、基本的には貯蓄性のない保障目的の掛捨保険であるため、支払った保険料は損金となります。
ところが保険の種類によっては、支払時に保険料の一部を前払費用として資産計上し一定期間経過後に損金に算入するものがあるため、必ずしも支払時に全額が損金となるとは限りません。
そして、定期保険であっても、加入後10年ほどで解約すると『解約返戻金(かいやくへんれいきん)』を受け取ることができるものもあり、これが注目を集めています。
つまり、毎月の保険料を支払うことで収益を減らし、法人税を節税する一方で、その支払っていた保険料は、高額の解約返戻金という形で戻ってくる仕組みです。
収益として計上される、解約返戻金の落とし穴
ここまで聞くと、すぐにでも全損型の法人向け定期保険に入って手元の資金を多くしたいと思えてきますが、そこに落とし穴があります。
実は、この解約した際に支払われる『解約返戻金』は、収益としてカウントされてしまうのです。
つまり、保険に加入してから解約するまでの期間は法人税を節税できたとしても、解約した際の『解約返戻金』によって、これまで節税してきた法人税と同等の法人税を解約した年に支払うことになります。
これを『課税の繰り延べ』と呼びます。
たとえば、毎年200万円の保険料を支払い、5年後に解約すると950万円の『解約返戻金』を受け取れる保険に入ったとします。
法人税率30%として200万円×0.3とすると、1年間の“節税効果”は、60万円。
これを5年続けると、300万円もの節税になります。
しかし解約時に950万円が支払われるので、これが収益として計上されると950万円×0.3となり、285万円もの法人税を支払わなければなりません。
結果、5年で300万円を節税し、5年後に支払う法人税が285万円(支払った保険料のうち資産計上すべき金額がある場合、節税額は減少します)。
こうしてみると、手元に残るお金は案外少ないといえます。
とはいえ、保険の解約時に赤字決算であれば、結果的に法人税は低くなるので、通常通りに法人税を支払うよりも、細かい節税にはなるかもしれません。
保険は、本来の意義に基づいた利用を
これら『法人向け定期保険』について、2018年6月、金融庁は、経営者や役員死亡時の保障を前面に出しながら、同時に節税のために中途解約を前提としているのは、商品設計的に本来の保険の趣旨から逸脱しているおそれがあるとして、調査に乗り出しました。
金融庁が指摘する通り、保険は節税するためのものではありません。
経営者や役員が倒れてしまうと、会社の運営上、大きな損害を与えます。
そのための危機回避策として、万が一の場合の死亡退職金や会社の運転資金に保険金を充てられるようにとの目的で加入するのが、正しい保険のあり方といえます。
本来の意味での保険への加入は、リスクヘッジになるだけでなく、会社運営に必要不可欠な、精神的安定感にもつながっていきます。
未加入の方は、自身の会社の状況に適したプランを一考してみることをおすすめします。