6ヶ月分の定期代、いつ、いくらで支給すればいい?
【相談内容】
当社では、通勤手当に関して、6ヶ月分まとめて購入した場合の定期券代に相当する金額を一度に支払っています。賃金には、法律で毎月払の原則がありますが、問題でしょうか?
当社では、通勤手当に関して、6ヶ月分まとめて購入した場合の定期券代に相当する金額を一度に支払っています。賃金には、法律で毎月払の原則がありますが、問題でしょうか?
【結論】
6ヶ月分をまとめて支払うことに関して、前払いをしていれば問題はありません。
1ヶ月定期券代の6倍の金額ではなく、6ヶ月定期券代を支払うことに関して、賃金規定にあらかじめ定めておけば認められます。
通勤手当は会社が任意で払う“賃金”
賃金とは、賃金、給与、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいいます(労基法11条)。
通勤定期券代は、通勤手当に該当し、『法11条の賃金』としています(昭25・1・18基収130号、昭33・2・13基発90号)。
賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければなりません(労基法24条)。
ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので省令で定める賃金については、この限りではないとしています。通勤手当は、上記ただし書きの賃金(労基則8条)に含まれていません。
通勤手当2つの支払い方法
1ヶ月分の通勤手当の支払い方法として、『先払い』と『後払い』があります。一般的なのは『後払い』で、採用後、最初の給料日に基本給や通勤手当も含む各種手当を支払うというケースです。
こちらは従業員が一度立て替えたものを後で精算するイメージです。
一方、本人が立て替えずに済むように、定期券の現物支給を含め、月の初めに支払ってしまう(先払いする)会社もあります。
例えば6ヶ月分の定期代を、4月に9月までの半年分を前払いしているという規定だとします。賃金支払いの原則によれば、本来確実に支払えば足りるものを4月に“前払い”することは、とくに労基法に違反するものではないと解されます。
支払う金額は『賃金規定』次第
では、1ヶ月定期券代の6倍の金額ではなく、6ヶ月定期券代を支払うことについては問題ないのでしょうか?
実はこの通勤手当、会社として補助するかしないかは任意になっているのです。通勤に必要な費用を会社が負担しなくてはいけない、という法律は存在しません。
そのため、あらかじめ賃金規定に定めておけば、6ヶ月定期券代を支給することや、通勤代の上限を設定して支給することが認められています。
まとめて後払いはNG!
覚えておきたいNGパターン
支払いタイミングに関しては気をつけるべきポイントがあります。
仮に、4月から9月までの半年分の定期代を9月に支給する“後払い”とした場合、4月分として支払われるべき分が4月に支払われておらず、「毎月払いの原則に触れ、違法」(中川恒彦「賃金の法律知識」)としたものがあります。
6ヶ月に一度支払うものは支払い方法として違法にはなりませんが、もともと毎月払いすべきであるという賃金の法的性格には変わりがないということです。
仮に、6ヶ月分の定期代を一括で前払いする方法から、6で割って毎月1/6を支給するように変更したとします。そうすると、定期代が10~20%近くまで安くなります。会社にとっては大きなメリットです。仮に、1ヶ月10,000円の定期代が15%安くなれば、年間で18,000円削減できます。従業員数が100名なら年間で1,800,000円も削減できます。
ただし、就業規則の不利益変更問題(労働契約法第10条)との関連性も考慮しながら、慎重に進める必要があるでしょう。
現場に身近な労働法 Q&A
6ヶ月分をまとめて支払うことに関して、前払いをしていれば問題はありません。
1ヶ月定期券代の6倍の金額ではなく、6ヶ月定期券代を支払うことに関して、賃金規定にあらかじめ定めておけば認められます。
通勤手当は会社が任意で払う“賃金”
賃金とは、賃金、給与、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいいます(労基法11条)。
通勤定期券代は、通勤手当に該当し、『法11条の賃金』としています(昭25・1・18基収130号、昭33・2・13基発90号)。
賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければなりません(労基法24条)。
ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので省令で定める賃金については、この限りではないとしています。通勤手当は、上記ただし書きの賃金(労基則8条)に含まれていません。
通勤手当2つの支払い方法
1ヶ月分の通勤手当の支払い方法として、『先払い』と『後払い』があります。一般的なのは『後払い』で、採用後、最初の給料日に基本給や通勤手当も含む各種手当を支払うというケースです。
こちらは従業員が一度立て替えたものを後で精算するイメージです。
一方、本人が立て替えずに済むように、定期券の現物支給を含め、月の初めに支払ってしまう(先払いする)会社もあります。
例えば6ヶ月分の定期代を、4月に9月までの半年分を前払いしているという規定だとします。賃金支払いの原則によれば、本来確実に支払えば足りるものを4月に“前払い”することは、とくに労基法に違反するものではないと解されます。
支払う金額は『賃金規定』次第
では、1ヶ月定期券代の6倍の金額ではなく、6ヶ月定期券代を支払うことについては問題ないのでしょうか?
実はこの通勤手当、会社として補助するかしないかは任意になっているのです。通勤に必要な費用を会社が負担しなくてはいけない、という法律は存在しません。
そのため、あらかじめ賃金規定に定めておけば、6ヶ月定期券代を支給することや、通勤代の上限を設定して支給することが認められています。
まとめて後払いはNG!
覚えておきたいNGパターン
支払いタイミングに関しては気をつけるべきポイントがあります。
仮に、4月から9月までの半年分の定期代を9月に支給する“後払い”とした場合、4月分として支払われるべき分が4月に支払われておらず、「毎月払いの原則に触れ、違法」(中川恒彦「賃金の法律知識」)としたものがあります。
6ヶ月に一度支払うものは支払い方法として違法にはなりませんが、もともと毎月払いすべきであるという賃金の法的性格には変わりがないということです。
仮に、6ヶ月分の定期代を一括で前払いする方法から、6で割って毎月1/6を支給するように変更したとします。そうすると、定期代が10~20%近くまで安くなります。会社にとっては大きなメリットです。仮に、1ヶ月10,000円の定期代が15%安くなれば、年間で18,000円削減できます。従業員数が100名なら年間で1,800,000円も削減できます。
ただし、就業規則の不利益変更問題(労働契約法第10条)との関連性も考慮しながら、慎重に進める必要があるでしょう。
現場に身近な労働法 Q&A