年休取得日の時給が最低賃金を下回っていた! これは違法? 違法じゃない?
【相談内容】
私はパートとして時給で働いており、月の労働日数はまちまちです。
先日、給与明細に掲載されていた年次有給休暇(以下、年休)取得日の賃金を時間換算したところ、最低賃金を下回っていました。
これは、違法ですか?
また、なぜこのようなことが発生してしまったのでしょうか?
私はパートとして時給で働いており、月の労働日数はまちまちです。
先日、給与明細に掲載されていた年次有給休暇(以下、年休)取得日の賃金を時間換算したところ、最低賃金を下回っていました。
これは、違法ですか?
また、なぜこのようなことが発生してしまったのでしょうか?
【結論】
年休の賃金は、労働基準法第39条7項に定められている計算方法から、会社が選択した計算方法に基づき金額が決定します。
賃金の計算方法として、『平均賃金』もしくは『健康保険法の標準報酬日額』を選択した場合は、最低賃金を下回る可能性もあります。
年休の賃金計算方法は3種類!
年休の賃金計算は、労働基準法第39条7項に定められている以下の3種の方法から、いずれかを会社が選択できます。
(1)平均賃金
(2)所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
(3)健康保険法の標準報酬日額
どの計算方法を用いるかは就業規則などで決めておく必要があります。
なお(3)については労使協定を締結することが必要です。
では、1つずつ概要や条件などを見ていきましょう。
(1)平均賃金の場合
原則として、過去3ヵ月の総賃金をその期間の総暦日数(土日祝等も含む)で割った額が支給されます(労働基準法第12条1項2項)。
なお、総賃金には残業代や各種手当も含みます(ボーナスや結婚手当など一時的な特別手当は除く)。
しかし、今回のケースのように、実労働日数が少ない人は3ヵ月の総暦日数で割ってしまうと1日当たりの額が低くなってしまいます。
そのため、以下の方法が適用されるのです。
A:3ヵ月の総賃金 ÷ その期間の総暦日数
B:総賃金額を、同じ期間の労働日数で割った金額の60%
Aの額<Bの額なら、Bの額を支給。
一方、Bの額<Aの額なら、Aの額が支給金額となります。
<例>
3ヵ月間の総賃金が60万円、その期間の総暦日数が90日、同期間の労働日数が60日だったケースで考えてみましょう。
Aの計算式→60万円 ÷ 90日=6,666.66円
Bの計算式→60万円 ÷ 60日×60%=6,000円
この場合、Bの額<Aの額となるので、Aの計算式の額が年休支給額となります。
なお、総賃金を総暦日数で割るため、通常よりも支払われる額は少なくなり、結果として最低賃金を下回る可能性もあるでしょう。
(2)通常通りの賃金の場合
年休取得日に出勤していた場合に支払われるはずだった、通常通りの賃金が支払われます。
本件のような時給の場合は、『年休取得日の所定労働時間 × 時給の金額』が支給額となります。
そのため、日によって働く時間が異なる場合は、所定労働時間が短い日に年休を取得すると支給額も少なくなってしまいます。
(3)健康保険法の標準報酬日額の場合
毎月の健康保険料は“標準報酬月額”をベースに支払い金額が決まります。
たとえば、会社から支払われる報酬月額が14万6,000円~15万5,000円の人は、標準報酬月額が15万(12等級)です(東京都における『平成30年4月納付分からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表』参照)。
この標準報酬月額を30分の1にした額が標準報酬日額で、1日当たりの年休支給額となります。
そのため、仮に標準報酬月額が15万円の場合、年休支給額は5,000円となるのです。
なお、この方法で年休支給額を決定する場合も、所定労働時間の組み合わせによっては最低賃金を下回る可能性があります。
年休の取扱いについてご心配なことがあれば、専門家へお問い合わせください。
現場に身近な労働法 Q&A
年休の賃金は、労働基準法第39条7項に定められている計算方法から、会社が選択した計算方法に基づき金額が決定します。
賃金の計算方法として、『平均賃金』もしくは『健康保険法の標準報酬日額』を選択した場合は、最低賃金を下回る可能性もあります。
年休の賃金計算方法は3種類!
年休の賃金計算は、労働基準法第39条7項に定められている以下の3種の方法から、いずれかを会社が選択できます。
(1)平均賃金
(2)所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
(3)健康保険法の標準報酬日額
どの計算方法を用いるかは就業規則などで決めておく必要があります。
なお(3)については労使協定を締結することが必要です。
では、1つずつ概要や条件などを見ていきましょう。
(1)平均賃金の場合
原則として、過去3ヵ月の総賃金をその期間の総暦日数(土日祝等も含む)で割った額が支給されます(労働基準法第12条1項2項)。
なお、総賃金には残業代や各種手当も含みます(ボーナスや結婚手当など一時的な特別手当は除く)。
しかし、今回のケースのように、実労働日数が少ない人は3ヵ月の総暦日数で割ってしまうと1日当たりの額が低くなってしまいます。
そのため、以下の方法が適用されるのです。
A:3ヵ月の総賃金 ÷ その期間の総暦日数
B:総賃金額を、同じ期間の労働日数で割った金額の60%
Aの額<Bの額なら、Bの額を支給。
一方、Bの額<Aの額なら、Aの額が支給金額となります。
<例>
3ヵ月間の総賃金が60万円、その期間の総暦日数が90日、同期間の労働日数が60日だったケースで考えてみましょう。
Aの計算式→60万円 ÷ 90日=6,666.66円
Bの計算式→60万円 ÷ 60日×60%=6,000円
この場合、Bの額<Aの額となるので、Aの計算式の額が年休支給額となります。
なお、総賃金を総暦日数で割るため、通常よりも支払われる額は少なくなり、結果として最低賃金を下回る可能性もあるでしょう。
(2)通常通りの賃金の場合
年休取得日に出勤していた場合に支払われるはずだった、通常通りの賃金が支払われます。
本件のような時給の場合は、『年休取得日の所定労働時間 × 時給の金額』が支給額となります。
そのため、日によって働く時間が異なる場合は、所定労働時間が短い日に年休を取得すると支給額も少なくなってしまいます。
(3)健康保険法の標準報酬日額の場合
毎月の健康保険料は“標準報酬月額”をベースに支払い金額が決まります。
たとえば、会社から支払われる報酬月額が14万6,000円~15万5,000円の人は、標準報酬月額が15万(12等級)です(東京都における『平成30年4月納付分からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表』参照)。
この標準報酬月額を30分の1にした額が標準報酬日額で、1日当たりの年休支給額となります。
そのため、仮に標準報酬月額が15万円の場合、年休支給額は5,000円となるのです。
なお、この方法で年休支給額を決定する場合も、所定労働時間の組み合わせによっては最低賃金を下回る可能性があります。
年休の取扱いについてご心配なことがあれば、専門家へお問い合わせください。
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