広告ビジネス界における世界最高峰の国際賞“カンヌライオンズ”2017の受賞作品から④
全4回にわたり、世界最高峰の国際賞“カンヌライオンズ”の2017年話題作をご紹介しています。
すでに、第1の視点“起点創造クリエイティブ”と、第2の視点“データ体感クリエイティブ”については、ご説明しました。
ラストとなる今回は、“ソーシャルグッドの逆襲”という第3の視点から、話題作を見ていきましょう。
すでに、第1の視点“起点創造クリエイティブ”と、第2の視点“データ体感クリエイティブ”については、ご説明しました。
ラストとなる今回は、“ソーシャルグッドの逆襲”という第3の視点から、話題作を見ていきましょう。
第3の視点“ソーシャルグッドの逆襲”とは?
“ソーシャルグッド”とは、社会貢献活動を促進する取り組みのことを指し、数年前にカンヌライオンズを席巻しました。
それ以降、NPOのゴールド受賞など“社会に良いことをすることで、そのブランドの価値が高めるような作品”が数多く受賞する傾向にあります。
ただし、その傾向が続きすぎたため、2016年の審査では公共的な応募作に逆風が吹いたという話も聞きました。
しかし、2017年は“ソーシャルグッド”という言葉自体はあまり聞かれなかったものの、公共的な内容を含んだ話題作が例年にも増して多かったように感じます。
そういう意味では、これまで紹介して来た“Fearless Girl(恐れを知らぬ少女)”も“Meet Graham(交通事故に遭っても生き延びるグラハム氏)”も、ソーシャルグッドな受賞作といえるでしょう。
“ソーシャルグッド”な受賞作が増えた理由
元々、広告コミュニケーションやマーケティングは、世の中の動きに敏感に反応し、影響を受けるべきものです。
近年は、テロ多発や難民の発生、イギリスのEU離脱、トランプ政権の誕生、ポスト・トゥルース時代など、世界にさまざまな動きがありました。
こういった世界情勢を受けて、2017年にソーシャルグッド作品が多く受賞したのは当然の傾向といえるでしょう。
では、その中でも最も話題となった受賞作をご紹介します。
オグルヴィ・ニューヨークが制作した、国際人権NGOアムネスティ・インターナショナルの『The Refugee Nation』(デザイン、PR、プロモ&アクティベーション、プロダクトデザインのゴールド、そしてチタニウム他受賞)。
これは、2016年のリオ・オリンピックに“難民選手団”として参加した10人の難民アスリートを支援するために“この旗のもとでひとつになれること”を意図して“結束の旗”を制作し、それを世界中に広めた受賞作です。
この“結束の旗”は、難民を象徴するライフジャケットを使用し、自らも難民であるアーティストによって制作されました。
ニューヨーク近代美術館にも展示され、スポーツイベントを越えて、難民キャンプなどの国際イベントでも掲揚されています。
まさに“ソーシャルグッド”を体現し、クリエイティビティのパワーを見せつけるような受賞作といえるでしょう。
日本の受賞作品
今回の日本の受賞作品は合計38作品で、なかでもリクルートライフスタイルによる『The Family Way』はグランプリ(モバイル部門ほか)を受賞しました。
リクルートライフスタイルは“SEEM(シーム)”というスマートフォンを活用した“不妊検査キット”を開発。
男性の非積極的な不妊治療に一石を投じたことが、『The Family Way』の受賞につながりました。
これもまさに“ソーシャルグッド”な意味合いを持つ作品といえるでしょう。
次回:強みや弱みを分析する“SWOT(スウォット)分析”とは? ①
佐藤達郎のマーケティング論
●プロフィール●
佐藤達郎(さとう・たつろう)
多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論)、コミュニケーション・ラボ代表。2004年カンヌ国際広告祭日本代表審査員。浦和高校、一橋大学、アサツーDK、(青学MBA)、博報堂DYを経て、2011年4月より現職。著書に、『NOをYESにする力!』『アイデアの選び方』『自分を広告する技術』『教えて!カンヌ国際広告祭』がある。
“ソーシャルグッド”とは、社会貢献活動を促進する取り組みのことを指し、数年前にカンヌライオンズを席巻しました。
それ以降、NPOのゴールド受賞など“社会に良いことをすることで、そのブランドの価値が高めるような作品”が数多く受賞する傾向にあります。
ただし、その傾向が続きすぎたため、2016年の審査では公共的な応募作に逆風が吹いたという話も聞きました。
しかし、2017年は“ソーシャルグッド”という言葉自体はあまり聞かれなかったものの、公共的な内容を含んだ話題作が例年にも増して多かったように感じます。
そういう意味では、これまで紹介して来た“Fearless Girl(恐れを知らぬ少女)”も“Meet Graham(交通事故に遭っても生き延びるグラハム氏)”も、ソーシャルグッドな受賞作といえるでしょう。
“ソーシャルグッド”な受賞作が増えた理由
元々、広告コミュニケーションやマーケティングは、世の中の動きに敏感に反応し、影響を受けるべきものです。
近年は、テロ多発や難民の発生、イギリスのEU離脱、トランプ政権の誕生、ポスト・トゥルース時代など、世界にさまざまな動きがありました。
こういった世界情勢を受けて、2017年にソーシャルグッド作品が多く受賞したのは当然の傾向といえるでしょう。
では、その中でも最も話題となった受賞作をご紹介します。
オグルヴィ・ニューヨークが制作した、国際人権NGOアムネスティ・インターナショナルの『The Refugee Nation』(デザイン、PR、プロモ&アクティベーション、プロダクトデザインのゴールド、そしてチタニウム他受賞)。
これは、2016年のリオ・オリンピックに“難民選手団”として参加した10人の難民アスリートを支援するために“この旗のもとでひとつになれること”を意図して“結束の旗”を制作し、それを世界中に広めた受賞作です。
この“結束の旗”は、難民を象徴するライフジャケットを使用し、自らも難民であるアーティストによって制作されました。
ニューヨーク近代美術館にも展示され、スポーツイベントを越えて、難民キャンプなどの国際イベントでも掲揚されています。
まさに“ソーシャルグッド”を体現し、クリエイティビティのパワーを見せつけるような受賞作といえるでしょう。
日本の受賞作品
今回の日本の受賞作品は合計38作品で、なかでもリクルートライフスタイルによる『The Family Way』はグランプリ(モバイル部門ほか)を受賞しました。
リクルートライフスタイルは“SEEM(シーム)”というスマートフォンを活用した“不妊検査キット”を開発。
男性の非積極的な不妊治療に一石を投じたことが、『The Family Way』の受賞につながりました。
これもまさに“ソーシャルグッド”な意味合いを持つ作品といえるでしょう。
次回:強みや弱みを分析する“SWOT(スウォット)分析”とは? ①
佐藤達郎のマーケティング論
●プロフィール●
佐藤達郎(さとう・たつろう)
多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論)、コミュニケーション・ラボ代表。2004年カンヌ国際広告祭日本代表審査員。浦和高校、一橋大学、アサツーDK、(青学MBA)、博報堂DYを経て、2011年4月より現職。著書に、『NOをYESにする力!』『アイデアの選び方』『自分を広告する技術』『教えて!カンヌ国際広告祭』がある。