プレミアムフライデー導入で時間単位年休を一斉付与できる?
<ご質問>
当社で、「プレミアムフライデー」の導入を検討しています。
年休には計画的付与という仕組みがありますが、社員が早く帰れるように、午後3時以降を時間単位年休として一斉に付与することはできるのでしょうか?
【東京・R社】
当社で、「プレミアムフライデー」の導入を検討しています。
年休には計画的付与という仕組みがありますが、社員が早く帰れるように、午後3時以降を時間単位年休として一斉に付与することはできるのでしょうか?
【東京・R社】
<回答>
時間単位年休は労働者からの請求が前提で、計画的付与の対象から外れます。また、始業終業を繰り上げるにも課題があります。
プレミアムフライデーとは、経済産業省が主唱する消費喚起策で、月末金曜日の終業時刻を15時として早帰りを促す制度です。働き方改革にも好影響を与えると期待されています。
2月24日に第1回が実施され、現在では対応策に工夫を凝らす企業が続々と現れています。
計画的年休とは有給休暇の取得率を高めるための制度で、労使協定により、使用者が、年休を与える時季を指定できます(労働基準法39条6項※)。ただし、各労働者が保有する年間の有給休暇日数のうち5日を超える部分に限ります。裏を返せば、少なくとも年5日は労働者自らが自由に使うために残しておかなければなりません。
計画的年休として付与できるのは、労働基準法39条1項から3項までの規定による年休とされており、具体的に以下の3つです。
(1)6ヵ月間継続勤務した場合の10労働日(1項)
(2)6ヵ月を超えて継続勤務する日から起算した継続勤務年数1年ごとに加算した年休(2項)
(3)いわゆる「比例付与」の年休(3項)
4項の時間単位年休※は計画的付与の対象から除かれます。
大手企業の中には、全休や午後半休の「取得推奨日」を設ける場合があります。「労働時間等見直しガイドライン」(労働時間等設定改善指針、平成20・3・24厚生労働省告示108号)の中で、年休の取得促進に努めることを重要としており、推奨日を設けるのはその一環と言えるでしょう。
半日単位による付与は、労働者の時季指定による取得が原則です。 労働者が年休の取得を希望して時季を指定し、この時季に使用者が同意した場合しか計画的付与の対象になりません。本来の取得方法による休暇取得の阻害とならない範囲で適切に運用される限りにおいて、問題がないものとして取り扱う(平成7・7・27基監発)とされています。
一方、プレミアムフライデーの導入を、始業終業の繰り上げで対応する例も考えられます。一般の就業規則では、「会社は業務の必要性がある場合、始業・終業時刻を繰り上げまたは繰り下げることがある」などとしています。これは、所定労働時間を変えない前提です。
労働時間が9時から18時の会社で、プレミアムフライデーの日は終業を3時間繰り上げる分、始業を3時間繰り上げるというのは、現実的ではありません。この場合、1時間程度の繰り上げということになるでしょう。あるいは、「所定労働時間は短縮するけれど、賃金はカットしない」とするのがベターです。
※労働基準法39条6項
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項から第三項までの規定による有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、これらの規定による有給休暇の日数のうち5日を超える部分については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる。
※労働基準法39条4項
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、第1号に掲げる労働者の範囲に属する労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、前3項の規定による有給休暇の日数のうち第2号に掲げる日数については、これらの規定にかかわらず、当該協定で定めるところにより時間を単位として有給休暇を与えることができる。
1.時間を単位として有給休暇を与えることができることとされる労働者の範囲
2.時間を単位として与えることができることとされる有給休暇の日数(5日以内に限る)
3.その他厚生労働省令で定める事項
※基監発=厚生労働省労働基準局監督課長の通達
現場で気になる労働法Q&A
【記事提供元】
「安全スタッフ」2017年3月15日号
時間単位年休は労働者からの請求が前提で、計画的付与の対象から外れます。また、始業終業を繰り上げるにも課題があります。
プレミアムフライデーとは、経済産業省が主唱する消費喚起策で、月末金曜日の終業時刻を15時として早帰りを促す制度です。働き方改革にも好影響を与えると期待されています。
2月24日に第1回が実施され、現在では対応策に工夫を凝らす企業が続々と現れています。
計画的年休とは有給休暇の取得率を高めるための制度で、労使協定により、使用者が、年休を与える時季を指定できます(労働基準法39条6項※)。ただし、各労働者が保有する年間の有給休暇日数のうち5日を超える部分に限ります。裏を返せば、少なくとも年5日は労働者自らが自由に使うために残しておかなければなりません。
計画的年休として付与できるのは、労働基準法39条1項から3項までの規定による年休とされており、具体的に以下の3つです。
(1)6ヵ月間継続勤務した場合の10労働日(1項)
(2)6ヵ月を超えて継続勤務する日から起算した継続勤務年数1年ごとに加算した年休(2項)
(3)いわゆる「比例付与」の年休(3項)
4項の時間単位年休※は計画的付与の対象から除かれます。
大手企業の中には、全休や午後半休の「取得推奨日」を設ける場合があります。「労働時間等見直しガイドライン」(労働時間等設定改善指針、平成20・3・24厚生労働省告示108号)の中で、年休の取得促進に努めることを重要としており、推奨日を設けるのはその一環と言えるでしょう。
半日単位による付与は、労働者の時季指定による取得が原則です。 労働者が年休の取得を希望して時季を指定し、この時季に使用者が同意した場合しか計画的付与の対象になりません。本来の取得方法による休暇取得の阻害とならない範囲で適切に運用される限りにおいて、問題がないものとして取り扱う(平成7・7・27基監発)とされています。
一方、プレミアムフライデーの導入を、始業終業の繰り上げで対応する例も考えられます。一般の就業規則では、「会社は業務の必要性がある場合、始業・終業時刻を繰り上げまたは繰り下げることがある」などとしています。これは、所定労働時間を変えない前提です。
労働時間が9時から18時の会社で、プレミアムフライデーの日は終業を3時間繰り上げる分、始業を3時間繰り上げるというのは、現実的ではありません。この場合、1時間程度の繰り上げということになるでしょう。あるいは、「所定労働時間は短縮するけれど、賃金はカットしない」とするのがベターです。
※労働基準法39条6項
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項から第三項までの規定による有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、これらの規定による有給休暇の日数のうち5日を超える部分については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる。
※労働基準法39条4項
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、第1号に掲げる労働者の範囲に属する労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、前3項の規定による有給休暇の日数のうち第2号に掲げる日数については、これらの規定にかかわらず、当該協定で定めるところにより時間を単位として有給休暇を与えることができる。
1.時間を単位として有給休暇を与えることができることとされる労働者の範囲
2.時間を単位として与えることができることとされる有給休暇の日数(5日以内に限る)
3.その他厚生労働省令で定める事項
※基監発=厚生労働省労働基準局監督課長の通達
現場で気になる労働法Q&A
【記事提供元】
「安全スタッフ」2017年3月15日号