社会保険労務士法人なか/労働保険事務組合福働会/福働会中部支部

『越境EC』を成功に導くために必要なマーケティング戦略

25.01.28
ビジネス【マーケティング】
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海外の消費者に向けて、商品を販売する電子商取引のことを「越境EC」といいます。
グローバル化やインターネットの普及などによって、日本の企業や個人が簡単に国境を超えて、世界中に人々に商品を提供できるようになりました。
ただし、国内だけではなく海外にも販路が広がるのは大きなメリットですが、越境ECは手を出しやすくなった分、マーケティング的な観点で戦略を組み立てないと成功を収めることはむずかしいでしょう。
越境ECの基礎や現状、失敗しないためのポイントなどを解説します。

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拡大を続ける越境EC市場の現状と将来

ECとは「Electronic Commerce(エレクトロニック・コマース)」の略で、日本語では電子商取引と訳されます。
インターネットやスマートフォンの普及と共に、多くの人がネットショップやオークションサイト、フリマアプリなどを介して、商品を購入・販売しています。

EC事業に取り組む企業も増加しており、EC市場も拡大傾向にあります。
経済産業省がまとめた「電子商取引に関する市場調査」によれば、2023年の日本国内の消費者向けのEC市場規模は、前年の22.7 兆円から24.8兆円に拡大しました。

また、近年は国内だけではなく、海外に販路を求め、越境ECに取り組む企業も増えてきました。
世界的に見ても、越境EC市場は拡大しており、国境を超えた電子商取引が盛んになりつつあります。
先述の同資料によれば、2021年時点の世界の越境EC市場は7,850億USドルと見られており、2030年には7兆9,380億USドルまで拡大する見込みです。

さらに、日本ではインバウンドの増加によって、訪日外国人観光客が日本の商品やサービスに触れる機会が増えています。
これまでの傾向から、インバウンド増加の動きに少し遅れて越境ECの波が来ると予測されており、今後のさらなる需要への期待も高まってきています。

海外のECモールに出店することのメリット

将来性の高い越境ECですが、新規参入には自社で独自ドメインを取得してECサイトを立ち上げる方法と、既存のECモールに出店する方法の2種類があります。
ECサイトの立ち上げは運営も自社で行うため、自由度が高く、海外のユーザーに直接リーチできるというメリットがあります。
一方で、サイトの構築や多言語化への対応などにコストや手間がかかるというデメリットは無視できません。

海外のECモールへの出店は、自社のECサイトと比べると、販売手数料などがかかる、モールのルールに従うなどの制限があるものの、そもそもの知名度や信頼性が高く、手間をかけずにユーザーへの訴求ができるというメリットがあります。

近年は、海外のECモールで新規顧客を獲得した後に、自社のECサイトを立ち上げて、リピーターの囲い込みを図るというビジネスモデルも増えています。
ECモールへの出店は自社の独自性を出しにくい分、顧客の育成がむずかしいという弱点があるため、将来的な展開を考えたうえで適切な方法を選択することが重要です。

ECモールに出店する場合は、ターゲットにしている国や地域の市場に合わせてプラットフォームを選びましょう。
北米市場で集客を図るのであれば、eBay(イーベイ)、Walmart Marketplace(ウォルマートマーケットプレイス)などが定番です。
東南アジア市場を狙うのであれば、インドネシアやマレーシア、タイなどで利用されているShopee(ショッピー)やアリババグループ傘下のLazada(ラザダ)などが有名ですし、アジア市場であれば、同じアリババグループのTmall Global(天猫国際)や、韓国のCoupang(クーパン)なども選択肢に入ります。

もちろん、ECサイト大手である各国のAmazonに出店するという方法もあります。
2022年時点でAmazonはアメリカを筆頭に、イギリスやインド、メキシコ、オーストラリアなど、世界21ヵ国で事業を展開しています。

越境ECの成功のために知っておきたいこと

越境ECを成功させるために重要視するべきなのは、ターゲットの国のニーズです。
その国の消費者が求めるものを把握したうえで、自社がそのニーズに応じた商品を提供できるのか、よく考えましょう。
日本の企業だからこそ提供できるもので、配送コストや売上なども釣り合う商品ではないと事業としての成功は望めません。

また、国によって言語や文化、商習慣なども異なるため、その国に関する基礎的な知識も必要不可欠です。
ターゲットとなる国の文化を理解しておけば、ECサイト上でセールやプロモーションなどを展開することも可能です。
たとえば、アメリカのブラックフライデーに実施されるセールなどは有名ですが、中国では11月11日を「独身の日」として、各ECサイトが大規模なセールを行うことが慣例となっています。
ほかにも、中国では中秋節や旧正月のセールがありますし、カナダやイギリスではクリスマスの翌日をボクシングデーとしてセールを行う慣習があります。 こうしたイベントを知らないままだと、競合他社に後れを取ってしまうかもしれません。

越境ECを成功させるためには、海外に実店舗を構えるのと同様、その国の文化や伝統を学んで理解する必要があります。
その国の消費者の立場になって、何が求められているのか探るところから始めてみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2025年1月現在の法令・情報等に基づいています。