社会保険労務士法人なか/労働保険事務組合福働会/福働会中部支部

決算書の『決算修正』を行うケースと修正申告の手続き

25.01.28
ビジネス【税務・会計】
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事業者はその事業年度における収益と費用を計算して損益を割り出し、資産や負債を確定させる「決算」を行うことが法律で義務づけられています。
作成した決算書をもとに、法人税の申告などを行うため、原則として決算書に誤りがあってはいけません。
しかし、もし後になって過去の決算書に間違いが見つかった場合は、どうすればよいのでしょうか。
決算書の間違いは、「決算修正」という処理によって、さかのぼって修正することができます。
会計担当者であれば、知っておきたい決算修正の手順について説明します。

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決算修正の科目は「前期損益修正」を使用

法人は事業年度の決算期に決算を行う必要があります。
決算業務の際に作成する損益計算書や貸借対照表などの決算書は、税金を納付するための決算申告に使用するため、定められた申告期限までに間に合うように作成する必要があります。
法人税などの申告期限は、原則として事業年度の終了日である決算日の2カ月後となっているので、遅れないようにしましょう。

基本的に、決算書には間違いがあってはいけませんが、まれに前期の決算書に誤りが見つかることがあります。
すでに確定している決算書でも、本来計上すべき収益や費用が計上されていないなどの誤りがあれば、「決算修正」といって、さかのぼって間違いを正す処理を行わなければいけません。
前期の損益計算の誤りは、当期の利益余剰金残高の増減といった影響を与えてしまうのがその理由です。

ただし、勘定科目の振り分けミスや負債科目の分類ミス、流動資産と固定資産の分類ミスなど、財務諸表の正確性に欠けるものの、損益計算に影響を与える誤りではないものは、決算修正を行わなくても問題ない場合があります。

決算修正を行う場合は、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」という基準に従いますが、中小企業に限り、「中小企業の会計に関する指針(中小会計指針)」や「中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)」といった簡便的な基準に基づく決算修正が適当とされています。

「中小会計指針」や「中小会計要領」で決算修正を行う場合は、「前期損益修正」という科目を使用します。
当期の損益計算書に前期のミスを計上してしまうと、正確性が保たれないため、この前期損益修正という特別な科目を使用するというわけです。

未計上の売上や余分に計上していた費用などが判明した場合には、修正した金額を前期損益修正益として貸方に計上し、未計上の費用などが判明した場合は修正した金額を前期損益修正損として借方に計上します。
また、資産や負債の移動の金額間違いがあった場合も決算修正が必要となり、修正した金額を資産または負債科目として、借方と貸方に計上します。

決算修正と税務署への修正申告はセット

決算修正によって損益計算に変化があると、すでに納めている税金の額も変わってしまうため、税務署に対して、過去の申告内容を修正する手続きを行わなければいけません。
納めた税額が多かった場合には「更生の請求」の手続きを行い、逆に納めた税額が不足していた場合には「修正申告」の手続きを行います。

更生の請求の手続きは、更正の請求書を所轄税務署長に提出するというもので、請求できるのは原則として、法定申告期限から5年以内とされています。
調査の結果、更生の請求が妥当なものであれば、納め過ぎている税金が還付されます。

一方、修正申告の手続きは、税金の不足分を追加で納めるためのもので、すでに還付を受けている場合は、差額を返還することになります。

修正申告を行う前に税務調査や税務署による更正指導などを受けてしまうと、「過少申告加算税」や「重加算税」などがかかる場合があります。
過少申告加算税は新たに納めることになった税額の10%、重加算税は35%の割合を乗じた金額になるので注意が必要です。
ただし、加算税の加重措置や軽減措置の適用がある場合は税率が異なります。

ペナルティによる課税額を抑えるためにも、前期の損益計算の誤りを発見したら、速やかに決算修正と修正申告を行うようにしましょう。


※本記事の記載内容は、2025年1月現在の法令・情報等に基づいています。