介護事業所が『リファラル採用』を成功させるポイントとは!?
「令和5年度介護労働実態調査」によると、2023年度の訪問介護員、介護職員をあわせた採用率は16.9%で、2年連続で対前年度比増となっており、離職率も13.1%で2012年度以来減少傾向にあると報告されています。
しかし、要介護認定者数は約715万人と年々増加している一方、介護関係職種の有効求人倍率は4.02倍と、全職業の1.13倍より3倍以上の水準で推移しており、人材不足の問題は解決にはほど遠く、さらなる採用の強化が必要不可欠となります。
この状況を打開するための採用手法の一つとして注目されているのが『リファラル採用』です。
紹介で人材を集めるリファラル採用とは?
リファラル採用とは、自社に勤務している職員の友人や知人を紹介してもらう採用制度で、近年注目を集めている採用手法です。
介護労働実態調査においても、直近1年間に採用された者の採用経路について、訪問介護員は「職員等からの紹介(縁故)」が最も多く(31.1%)、介護職員の採用経路でも「ハローワークの紹介」(21.8%)に次いで2番目に多い結果(21.2%)となっており、すでに取り入れている事業所が増加していることがわかります。
リファラル採用は、介護業界の人材不足問題を解消するための対策として期待されていますが、メリットとデメリットを十分に把握したうえで制度を導入することが重要です。
●リファラル採用のメリット
(1)採用コストの削減
求人広告費用や人材紹介会社への紹介料などがかからないので、大幅なコスト削減につながります。
ただし、職員からの紹介を活性化させるために紹介者に対する報酬制度を設けている事業所が多く、報酬額の設定などを工夫する必要があります。
(2)採用のミスマッチが防止できる
自社の職員からの紹介が主となるので、紹介される人材は事前に職員から仕事内容や事業所の雰囲気などを聞いたうえでの応募となります。
そのため、採用におけるミスマッチを防ぎやすくなります。
(3)離職率の低下が期待できる
すでに社内に知人や友人が在籍しているため、相談しやすい環境にあり、離職率の低下につながる傾向にあります。
(4)採用競争の回避と潜在的な人材採用が可能
介護職員の友人・知人にアプローチすることになるので、介護業界で働いていた方だけでなく、ほかの業界で働きつつも潜在的に転職への意識がある人材に対しての直接的なコンタクトにより、採用競争を回避しながらの人材獲得が可能となります。
●リファラル採用のデメリット
(1)採用までに時間がかかる、大量採用には不向き
職員からの紹介を待つことになるので、欠員補充で急遽人材が必要な場合や、新部署の立ち上げで多数の採用を予定している場合などには向いていない手法のため、計画的な採用とは相性が悪いといえます。
(2)採用方針に対する職員の理解が必要
職員がリクルーターとなるため、職員自身が自社の採用方針や求めている人材像、資格、スキルなどを理解しておく必要があります。
充分に理解していないと、人材のミスマッチが生じる可能性がありますので注意が必要です。
(3)人間関係が悪化するリスクがあるため不採用時の配慮が必要
リファラル採用であっても、自社の選考基準を満たさなければ不採用となるケースがあります。
そのような場合、紹介した職員と紹介者された採用候補者の人間関係が悪化するリスクがありますので、不採用にする際の配慮を事前に検討しておく必要があります。
(4)ほかの職員への配慮が必要
リファラル採用の場合、職員の個人的な紹介となるため、性格や考え方、スキルなどが偏った人材が集まりやすい傾向にあります。
また、入職後に友人同士でグループ化してしまうと、ほかの職員が反感を覚えたり、居づらくなったりする可能性がありますので、勤務時間帯や配属部署などの配慮が必要です。
リファラル採用の成功へのポイント
リファラル採用を有効活用するためには、次のポイントを意識して取り組むことが必要です。
(1)紹介ツールを準備し、紹介しやすい環境を作ること
職員が友人・知人に向けて自社の経営方針や仕事内容、募集要項などを説明しやすいように、紹介用の会社パンフレットや紹介カードを作成するなど、紹介ツールを事前に準備しておきましょう。
(2)紹介された場合はできるだけ面接を実施すること
採用候補者を紹介しても、書類選考のみで不合格にしてしまった場合、紹介した職員と採用候補者の関係に亀裂が生じてしまう可能性があります。
また、紹介した職員が会社に対して不満や不信感を持つ可能性がありますので、採用がむずかしい人材であっても、できるだけ面接試験を実施することが望ましいでしょう。
(3)紹介報酬制度を定めておくこと
リファラル採用を制度化する場合、多くの事業所が紹介報酬制度を設けています。
制度内容を決めずに曖昧なままだと、トラブルに発展する可能性があります。
一括での支給のほか、段階的な支給など、状況に応じた報酬制度を定めておくことが重要となります。
(4)魅力的な職場環境を整備すること
リファラル採用を有効活用するには、職員が友人・知人に紹介したくなるような魅力的な職場環境を整備することが重要です。
労働基準法などの遵守、教育・研修制度の充実やICT活用など働きやすい環境を構築することで、紹介しやすい会社になります。
以上のポイントを踏まえたうえで、自社の採用方針と目的にあったリファラル採用制度を構築されることをおすすめします。
※本記事の記載内容は、2024年11月現在の法令・情報等に基づいています。