社会保険労務士法人なか/労働保険事務組合福働会/福働会中部支部

新人介護スタッフへの教育で気をつけるポイントとは!?

24.10.01
業種別【介護業】
dummy

介護業界の人材不足が深刻化する状況下において、人材の安定的な確保と定着は介護事業所のサービス向上のために重要な課題となっています。
この課題を解決するためには、新人教育を含めた人材教育が適切に実施されているかがポイントとなります。
現在の自社の教育・育成が適切な指導方法・指導内容で行われているか確認して実践することが、介護事業所が成長するために求められます。

dummy

介護業界の現状と抱える課題とは

『令和4年度介護労働実態調査』によると、「離職者の勤務年数」は「1年未満の者」が34.4%、「1年以上3年未満の者」が25.5%、「3年以上の者」が40.2%となっており、3年未満の者が全体の半数以上を占めています。
また、「事業所規模別の離職率」では、19人以下の事業所の離職率が最も高く、人数規模が大きくなるにつれて離職率が低下しています。
そして、「介護サ-ビス事業を運営する上での問題点」に対して、「良質な人材の確保が難しい」と回答した事業所は約51%で、「教育・研修の時間が十分に取れない」は約27%となっています。
これらの調査結果から、人材確保・教育で悩んでいる介護事業所が多いこと、また、小規模の事業所では人材教育に関わる人的・時間的余裕のないことが読み取れます。
このように採用と定着に苦労し、たとえ採用できたとしても3年未満で退職してしまったり、教育システムが十分に整備できておらず、人材がなかなか育たなかったりするといったことなどが介護事業所の共通の課題としてあげられるでしょう。

新人教育時の内容と気をつけるポイント

介護事業の業態や規模にかかわらず、一般的な新人教育では「介護職としての心構え」「介護事故の防止」「介護職としての技術向上」「社会人としてのビジネスマナー」などが実施されています。
しかし、同じ教育内容でも、指導方法や育成に対する事業所の姿勢によって新人教育の成否は大きく左右されます。
新人教育を成功につなげるための7つのポイントを説明しますので、参考にしてみてください。
(1)教育計画や教育マニュアルの策定
人によって教え方が異なると、新人職員の不安感は増大します。
教育計画や教育マニュアルを作成し、誰が教えても一定の基準を満たせるようにすることが重要です。
(2)介護職としての心構えと事業所の経営理念・方向性の説明
新人職員に介護職としての利用者への接し方や心構えを教育すると共に、事業所の考え方・経営方針などを元に介護業務の目的や背景を伝えることも重要です。
これらを伝え共有することで、意欲的に仕事に取り組めるようになります。
(3)介護事故の防止とリスクマネジメントについて
転倒や誤嚥、誤薬など、介護現場で多い事故を例に防止策の重要性やリスクマネジメントの基礎知識を理解させ、事故発生時の具体的な対応方法・手順や再発防止策などを教育することが大切です。
(4)介護職の技術向上に向けての取り組み
介護職はさまざまな技術を習得しなければなりませんが、言葉で説明するだけでは理解することはむずかしいでしょう。
身体の基本的な動きを理解することが一つのポイントとなりますので、実際にOJTを通じて教育を行うことが理解度向上につながります。
また、この際に利用者との接し方やコミュニケーションの取り方などを教えることで、より効果があるでしょう。
(5)一定期間におけるチェックポイントの評価を共有
新入時はチェック表に基づいた評価を短期間に区分して行うようにしましょう。
その際に、本人との面談でフィードバックを行うことも大切です。
よかった点は褒めて評価し、改善すべき点は具体的に指摘したうえでアドバイスを与えることで、新人職員の進むべき道が明確になります。
(6)評価内容に基づく目標設定
面談時に評価とあわせて個人ごとの目標を設定します。
次回の面談時には、設定した目標の達成レベルを伝え、現状できている点、できていない点を本人に自覚してもらうことも大切です。
(7)相談しやすい環境を作る
多くの新人職員は、経験不足から日々不安や緊張感を抱えて仕事をしています。
不安や悩みが大きくなると離職につながりやすくなりますので、表情や言動の変化に目を配り、声がけなどコミュニケーションを取って、些細なことでも上司や先輩、同僚に相談しやすい環境をつくることが大切です。

新人教育・育成プログラムを計画する際には、自社がどのような人材を必要としているかをイメージして構築することが重要です。
また、個人ごとに思考、能力、性格が異なりますので、教育・育成計画はトライ&エラーを繰り返しながら、常にブラッシュアップした自社に最適な教育システムをつくり上げることが人材育成の成功につながるのではないでしょうか。


※本記事の記載内容は、2024年10月現在の法令・情報等に基づいています。