社会保険労務士法人なか/労働保険事務組合福働会/福働会中部支部

新設された『ベースアップ評価料』の中身と現状について

24.10.01
業種別【医業】
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2024年6月1日から施行された「令和6年度診療報酬改定」において、「ベースアップ評価料」が新設されました。
ベースアップ評価料は、看護師などの医療関係職種の賃上げを目的とした評価で、原則として算定した金額はすべて対象の職員に給与や手当として支給する必要があります。
ベースアップ評価料の算定には地方厚生局への届出が必要ですが、算定するかどうかは医療機関ごとの判断に任されるため、現状では届出を行なった医療機関と見送った医療機関に分かれています。
今回新設されたベースアップ評価料の中身と現状について解説します。

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ベースアップ評価料対象の医療関係職種

「令和6年度診療報酬改定」で新設されたベースアップ評価料は、医療に従事する職員の賃上げを行うことによって、人材を確保し、より良質な医療を提供し続けることを目的としています。
一般の労働者と比べて、賃金の水準が高いイメージのある医療従事者ですが、医師・歯科医師・薬剤師・看護師を除く医療関係職種の給与の平均は、全産業の平均よりも低いことがわかっています。

政府は2023年度と比較し、2024年度に+2.5%、2025年度に+2%の賃金上昇を目標に掲げており、今回のベースアップ評価料は、その政府目標の実現を目指し、医師や歯科医師、事務職員を除く医療関係職種の賃上げを行うためのものです。
対象となる医療関係職種は、看護師や助産師、栄養士や社会福祉士など、34種となっています。

ただし、このベースアップ評価料を算定するかどうかは任意であり、各医療機関の判断に委ねられることになります。
診療報酬改定は原則として2年ごとに行われるため、少なくとも次の改定が行われるまでは継続してベースアップ評価料を算定することができますが、それ以降も継続されるという補償はなく、また本評価料を算定することによって患者の診療費の自己負担額が増すことから、届出を見送った医療機関もあります。

一方、すでに届出を行なっている医療機関においては、ベースアップ評価料の算定のための計算を行なっていることと思われます。
外来医療または在宅医療を実施している医療機関については「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」を算定します。
この「(Ⅰ)」では、1日につき、初診時6点、再診時等2点、訪問診療時は同一建物居住者等以外の場合が28点、それ以外の場合7点が算定でき、この評価料の収入の全額を、対象となる医療関係職種の賃金改善に充てる必要があります。

ベースアップ評価料を算定している医療機関の懸念点

外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)で1.2%の賃上げを行うことのできない医療機関の場合、「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)」を算定できます。
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)は、直近3カ月に入院料などを算定していない保険医療機関が届出できます。
ただし、直近3カ月の1月あたり平均のべ入院患者数が30人未満の保険医療機関の場合にも届け出ることができます。

平たく言えば、「(Ⅱ)」は、「(Ⅰ)」の算定で基準値以上のベースアップが実施できない医療機関の救済措置のようなもので、医療機関の状況によって、8段階に分けられたなかから、評価料を選んで算定することができます。

そのほか、今回の診療報酬改定では、「入院ベースアップ評価料」「歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)及び(Ⅱ)」「訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)及び(Ⅱ)」も新設されました。

現状、これらの新設されたベースアップ評価料を算定している医療機関では、基本給の引上げではなく、各種手当の支給というかたちで賃上げを実施している医療機関が少なくないようです。
これはベースアップ評価料が次回改定となる2026年度以降も継続するかどうかが明確になっていないため、基本給の引上げについては消極的になった結果と見られています。

また、ベースアップ評価料の算定により、対象となる医療関係職種以外の職員についても賃上げを検討しなければならない医療機関もあり、その場合、その賃上げ分を自主財源から充てなければならないことも今後の課題としてあがっています。

ベースアップ評価料は、医療に従事する職員の賃上げに関わる重要な評価です。
継続されるかどうかも含め、今後の動きを注視しておきましょう。


※本記事の記載内容は、2024年10月現在の法令・情報等に基づいています。