社会保険労務士法人なか/労働保険事務組合福働会/福働会中部支部

小規模企業こそ『経理のアウトソーシング』を検討したい理由

24.08.13
ビジネス【税務・会計】
dummy

企業を経営するうえで欠かせない経理業務ですが、創業間もない会社や個人事業主などは、経験のある経理担当者を雇用する余裕がなく、経営者みずからが経理業務を行うことも少なくありません。
しかし、経理業務は専門的な知識が必要なうえに、ミスが許されない業務です。
作業も複雑で手間がかかるため、経理業務に追われて本業に注力できなくなるという本末転倒な状況は避けたいところです。
そこで、検討したいのが経理のアウトソーシングです。
経理業務に追われている経営者に向けて、経理のアウトソーシング導入のポイントを解説します。

dummy

経営者が経理業務を担当するリスク

経理業務は日々の取引やお金の流れを数値化して管理する業務のことです。
おおかまには、売上(売掛金)や仕入(買掛金)の記録、請求書や領収書の処理など「社外取引に伴う入出金などの管理」と、給料の支払や預金・現金管理などの「社内の資金などの管理」に分けることができます。
また、企業の規模によっても異なりますが、課税に必要な所得額を算出する税務会計や、株主や銀行などに向けて経営状況を報告する財務会計なども、経理業務に含まれます。
こうした膨大で煩雑な経理業務を、小規模な企業では少人数もしくは一人で行わなければいけません。
人員に限りがある会社では、経営者が経理担当者を兼任するケースも珍しくありません。

しかし、経営者は必ずしも経理の専門家ではないため、思わぬミスが発生してしまったり、かえって手間がかかってしまったりすることもあります。
また、経理業務は会社法や法人税法、金融商品取引法などの法知識が求められるため、法改正に合わせた知識のアップデートも必要不可欠です。
こうした経理業務が大きな負担となり、本業に力を入れることができないという経営者も少なくありません。

ある会計事務所の調査によれば、顧問税理士がいない会社の経営者と個人事業主のうち、約7割が経営者みずから経理業務を行なっていることがわかりました。
もちろん、経営者と経理担当者の二足のわらじで順調に業績を伸ばしている会社もありますが、通常は本業に支障が出てしまうことがほとんどです。
さらに、専門性のない経営者が一人で作業を行うことから、経理上のミスが生じやすくなるだけでなく、ミスが起きても発覚しづらくブラックボックス化してしまうという危険もあります。
こうしたさまざまなリスクを解消し、経営者を助けてくれる方法の一つが経理のアウトソーシングです。

経理のアウトソーシングのメリットは?

経理のアウトソーシングとは、社内の経理業務を外部の会計事務所や経理アウトソーシング会社に委託することを意味します。
業務を委託できる範囲は、契約内容や会社によってさまざまです。
たとえば、会社から派遣されたスタッフが社内に常駐して、すべての経理業務を受け持つこともできますし、記帳代行などの一部の業務だけを依頼することも可能です。

経理をアウトソーシングするメリットのなかに、経営者が本業に専念することができ、ミスが発生しづらくなるという点があります。
経理の正確性が増すということは、対外的な信用や従業員の信用なども増すということです。
具体的な例でいえば、給与計算の間違いによって意図せず未払賃金が生じていた場合、労働基準法違反になるばかりか、従業員の信頼を失うことにもなりかねません。
経理をアウトソーシングすることによって、給与計算の間違いなどが起きづらくなり、こうしたリスクも大幅に低減するでしょう。

また、経理をアウトソーシングすることは、属人化やブラックボックス化を防ぐことにもつながります。
一人の経理担当者が経理業務のすべてを取り仕切っている場合、その人ではないと入出金の管理や社内の資金管理ができないという状況に陥りがちです。
もし、その経理担当者が突然、退職してしまうと、大きな混乱を招いてしまうかもしれません。
アウトソーシングによって外部のスタッフが経理業務を担当することで、これらの事態を避けることができます。

こうしたメリットがある一方で、経理のアウトソーシングにはデメリットもあります。
その一つがコストです。
業種や業態、業務量にもよりますが、経理担当者を雇用する人件費よりも、外注費のほうが高くついてしまうこともあり、派遣されたスタッフに常駐してもらう場合はさらに単価が上がるケースもあります。

経理のアウトソーシングの平均的な相場は、1カ月で15万円から利用可能といわれています。
コストを抑えるのであれば、依頼する業務を絞ったり、一時的に利用したりするなど、委託する内容や時期をよく検討しましょう。

そのほかのデメリットとして、経営者が数字をリアルタイムで把握できない、経理のノウハウを蓄積できない、突発的なトラブルに対応できないなどの懸念点もあります。

また、税務の代理や税務書類の作成などは税理士の独占業務なので、税理士がいない経理アウトソーシング会社などには税務関係業務を依頼できないので注意が必要です。

大切なのは、経理をアウトソーシングするメリットとデメリットをよく理解しておくことです。
もし、利用するのであれば、自社の状況に合わせた適切な範囲や時期で、業務の委託を行うようにしましょう。


※本記事の記載内容は、2024年8月現在の法令・情報等に基づいています。