ひかり税理士法人

5月病と退職代行サービスの増加! 介護事業所の最適な対応方法は

24.07.02
業種別【介護業】
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GW明けは退職者が増える時期といわれています。
介護事業所においても5月、6月は新入社員や若手スタッフにとって、就職・配属・人事異動などによる環境の変化や仕事に対する期待と現実とのギャップなどによりストレスを感じて精神状態が不安定になりやすい時期です。
いわゆる『5月病』と呼ばれる適応障害が発症しやすい時期でもあり、5月病を発症することで、仕事に対する意欲が低下し、退職に至るという流れです。
また、近年では、5月病の発症と共に『退職代行サービス』を利用した退職が増える傾向にあるようです。
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GW明けに増える5月病の症状とは……

新しい生活や環境のスタートから1カ月程度過ぎた頃に、心身の疲れが原因となって発症する『5月病』は、主に次のような症状が出てくるといわれています。
・体調面
疲労感、体が重い、不眠、食欲不振、頭痛、肩こり、めまい、吐き気、下痢、腹痛 など
・情緒面
やる気がでない、集中力の低下、不安感、気分が落ち込む、イライラ感、情緒不安定 など

このように体調面、情緒面での症状が続き、深刻化してしまうと「うつ病」や「統合失調症」などの精神疾患に陥ってしまう可能性も高くなり、そうなってしまうと、仕事を続けることも困難になってしまいます。
そのため、5月病の発症をきっかけに退職を検討し始めるという傾向もあるようです。
さらに、最近では退職にあたって、退職の申出などを代行してくれる『退職代行サービス』会社も登場し、退職にあたってのハードルが下がったことで、そういったサービスを利用する退職者の数も増えています。

では、退職代行サービスとは、どういったサービスなのでしょうか。
それは、会社を辞めたいと考えている従業員本人に代わって会社へ退職の意思を申し出て、退職できるよう手続きを代行してくれるサービスを指します。
具体的には、退職の意思を直接会社に伝えるのがストレスとなる場合や、会社から引き止められて辞められない場合など、内心で退職の意思があるにもかかわらず、なかなか退職できない人の代理として、退職代行業者が退職手続きを行うサービスです。
大きく分けて「弁護士」が行うものと「民間企業」が行うものの2タイプがあります。

退職代行サービスへの対応のポイント

事業所側としては、本人からの退職の意思の連絡よりも前に、いきなり退職代行業者から連絡が入るため、戸惑うケースが多いと思われます。
なお、退職代行の利用につながりやすい事業所のポイントとしては、以下のようなものがあげられます。
・事業所と従業員のコミュニケーションが円滑に取れていない
・職場(会社、上司、先輩)の人間関係がよくない
・慢性的な長時間労働や休日労働が行われている
・日常的なハラスメント(セクハラ・パワハラなど)が横行している
・有給休暇等を申し出にくい環境になっている
・新人に対する教育プログラムがなく、適正な指導ができていない  など

では、退職代行業者から突然、連絡が入った場合、事業所として、どう対応すべきなのでしょうか。
代行業務を行なっている業者の母体が誰かによって、そのポイントは変わってきます。

1.民間企業が行なっている退職代行サービスの場合
民間企業の場合、法的には従業員本人の「代理人」となることはできません。
あくまで「使者」として本人の退職の意思を伝える行為までしか行うことができず、「代理人」として退職条件の要求や交渉を行なった場合は、『非弁行為』となり法律違反に問われます。
まずは本人からの委任状を要求し、代行業者が民間企業と思われる場合は、本人の意思が確認できないことを理由に交渉を拒否することができます。
ただし、退職について要求通り認めるということであれば、本人の意思に基づくことの証拠として本人が記載した『退職届』を求めたうえで手続きを行うことになります。

2.弁護士が行なっている退職代行サービスの場合
弁護士は、法的に従業員本人の「代理人」となって退職の交渉を行うことができるので、委任状により本人が依頼したことが確認できれば、弁護士と交渉を行うことになります。
退職自体については、労働者に職業選択の自由が保障されているため、有期雇用契約の場合を除き、原則拒否することはできません。
また、退職時の有給使用、未払い賃金の支払などの交渉を求められた場合、法的に正当な主張に関しては従う必要がありますので、正確な計算を行ったうえで、有給の消化、未払い賃金の精算を行わなければなりません。
弁護士を通じての退職交渉は、退職が本人の意思であることが明確であり、また、本人と直接話ができなくても業務の引き継ぎなどの確認や交渉を行うことができます。
顧問弁護士と契約している場合は、弁護士同士で対応してもらうのがよいでしょう。

このように、5月病を引き金として、退職代行サービスを利用した退職は今後も増えると予想されます。
人材不足問題を抱える介護事業所にとっては、スタッフ1人の退職でも、事業所に大きな影響を与える可能性があります。
「5月病だから仕方ない」という考えではなく、なぜ「5月病」の症状に陥ってしまうのか、なぜ直接相談せずに退職代行サービスを利用したのかについて事業所の課題としてとらえる必要があります。
今後に向けた対策を講じていくことで、退職者の減少、定着率の向上といった効果が現れてくるでしょう。


※本記事の記載内容は、2024年7月現在の法令・情報等に基づいています。