ひかり税理士法人

法人税の前払い! 中間申告の中身を理解しておこう

23.03.06
ビジネス【税務・会計】
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法人税の納付には、税金の前払いである『中間申告』が採用されています。
起業したばかりで最初の事業年度である企業や、中間申告時の納付額が10万円以下の企業などでなければ、中間申告を行って法人税を納付しなければなりません。
今回は、この中間申告の概要について解説します。
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中間申告のメリットと対象企業

中間申告制度とは、事業年度開始から6カ月経過時点を『中間』とし、事業年度開始から中間までの半年分の法人税を申告・納付する制度です。
1年分の法人税をまとめて納付するのではなく、年2回に分けて納付するため、国にも企業にもメリットがあるといわれています。
国にとっては、税収が年間を通じて平準化できるとともに、倒産や業績悪化による滞納や未納のリスクを軽減することにつながります。
一方、企業にとっては、一度に多額の法人税を納付する必要がないため、納税資金確保が容易になるほか、期末に現預金残高が極端に減少することも防止できます。

では、どのような企業が中間申告の対象となるのでしょうか。
それは、前事業年度の法人税額が20万円を超えた場合です。
前事業年度の法人税額が20万円を超えると、当該事業年度の半年分の申告額が10万円を超えると見込まれるため対象となります。
つまり、起業したばかりの最初の事業年度の企業や、予定申告額が10万円以下の企業などは、中間申告を行う必要はありません。


中間申告の方法は『予定申告』と『仮決算』

法人税の中間申告・中間納付は、事業年度開始後6カ月後から2カ月以内に、申告・納付を行うこととされています(法人税法第71条)。
たとえば、10月1日に事業年度がはじまる場合、6カ月後である翌年の3月31日の翌日である4月1日から5月31日までの2カ月間で、申告と納付を行う必要があります。
中間申告の方法は、『予定申告』と『仮決算』の2種類があります。

●予定申告
前年度実績をもとに予定納税額を算出して、申告・納付する方法です。
納める額は前事業年度の法人税額のほぼ半分となります。
中間申告の時期になると、税務署から送付された『予定申告書』に、予定申告額を記入して提出すれば申告が完了します。
手続きが簡単なのがメリットです。
予定申告では、実際の法人税額が確定する前に法人税を納付するため、下半期に業績が下がったなどの理由から、税金を納め過ぎるケースもあります。
その場合は、年度末に確定申告を行うことで、過払い分の還付を受けることができます。

<予定申告額の計算式>
前期実績基準額(予定申告額)
=前事業年度の確定法人税額÷前事業年度の月数(12カ月)×中間期間(6カ月)


●仮決算
半期で仮決算を行い、申告する方法です。
仮決算による中間申告では、損益計算書・貸借対照表・勘定科目内訳明細書など、決算に必要な書類の提出も行うため事務負担が大きくなります。
それでも、前期よりも業績が悪化し、予定申告による法人税の納付が難しい場合などには有効な方法となります。
ただし、予定申告による納付額より仮決算による納付額のほうが高くなった場合には、仮決算による中間申告・納付はできないので注意しましょう。

<仮決算による中間申告額の計算式>
益金-損金=課税所得
課税所得×税率=法人税額(中間納付で納める法人税の納付税額)

たとえば、半期分の利益が830万円、損金(経費)が150万円、法人税率が15%と仮定して計算をすると、中間申告で申告する法人税額は102万円になります。

利益830万円-損金150万円=課税所得680万円
680万円×法人税率15%=102万円 (中間納付で納める法人税の納付税額)


予定申告の納税方法とその他の注意点

予定申告による法人税の納付方法は、以下の3種類です。

(1)現金納付
税務署から送付されてきた予定申告書を税務署に持参し、現金で納付することができます。

(2)クレジットカード納付
『国税クレジットカードお支払サイト』を利用して、クレジットカードでの納付が可能です。ただし、領収書が発行されないので注意が必要です。

(3)ダイレクト(e-Tax)納付
国税電子申告・納税システムであるe-Taxでも、法人税を納付することができます。事前にソフトウエアの準備などが必要なので、詳しくはe-Taxサイトをご確認ください。
なお、e-Taxを利用した場合、翌事業年度以降は予定申告書が送付されなくなります。その代わりにe-Taxソフトにメッセージで法人税予定申告についての案内が届きます。「予定申告書が送付されない=中間申告が不要である」というわけではないので、納税することを忘れないようにしましょう。

中間申告をしなかった場合、特にペナルティはありません。
なぜならば、申告期限内に中間申告をしなかった場合、「予定申告を行った」とみなされるからです。
これを『みなし申告』といいます。
ただし、申告をしなかったとしても、法人税の納付は必要なので注意が必要です。

注意したいのは、業績悪化などの理由から、「中間申告は仮決算で申告し、現預金を残しておきたい」と検討している場合などです。
期日までに仮決算で中間申告をしないと予定申告として扱われるため、予定申告額で納付しなければなりません。
また、仮決算をした結果、法人税の納付額が0円となった場合も申告は必要です。

いずれの場合も、中間申告をしなかったことが確定した時点で納付期日を過ぎているため、法人税の納付に加え、延滞税などが課せられます。

このほか、吸収合併があった場合は、中間申告による納付額が変わる可能性があります。
合併した際の納税額計算は複雑なため、専門家の助けを得たほうが賢明といえます。
また、仮決算による申告か予定申告か迷う場合なども、早めに専門家に相談し、検討を進めていきましょう。


※本記事の記載内容は、2023年3月現在の法令・情報等に基づいています。