ひかり税理士法人

法人が破産する際の従業員への対応について

21.11.09
ビジネス【企業法務】
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長引くコロナ禍の影響で、倒産する企業が後を絶たないというニュースをよく目にします。
事業者が経営を続けていけないと判断したら、倒産を選ぶのもやむを得ないことといえるでしょう。
そこでまず考えるべきことは、これまで会社のために尽力してくれた従業員のことです。
会社を畳むときには従業員が困らないよう、迅速な対応や手続きをとらなければいけません。
今回は、法人の破産により従業員を解雇する際に、事業者がするべきことについて説明します。
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法人破産の場合、従業員は全員解雇となる

東京商工リサーチの調査によると、2021年上半期(1~6月)の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)の件数は3,044件で前年同期比マイナス23.9%となり、過去50年間で2番目に低い水準であることがわかりました。

一見、少なく見えますが、これは新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)に関する補助金や融資制度等により倒産件数が抑えられているためといわれています。

今後、法人の資金繰りが悪化し、支払不能または債務超過に陥る企業が増える可能性があり、補助金等の終期を迎えた段階で大幅に倒産・破産の件数が増加することも懸念されています。
もし自社がそのような状況になったら、代表者としては法人の破産を検討せざるを得なくなります。

では、法人破産となった場合、従業員はどうなるのでしょうか。
結論からいうと、会社がなくなってしまう以上、従業員も解雇せざるを得ません
どのようなタイミングで従業員の解雇を行うべきか、解雇に伴い、必要な手続きはどのようなものがあるかを説明します。

破産申立て前に事業を完全に停止する場合は、残務処理等のために従業員を残す必要はありません。
また、破産申立て後に、管財人の業務を円滑にするため、会社の経理に詳しい従業員を残すかどうかで悩む場合もありますが、代表者等が事情を把握していれば、そのためにあえて解雇を先延ばしにする必要はありません。

そのような理由から、従業員に対しては破産申立て前になるべく早く解雇し、早期に失業保険の給付を受けられるようにしてあげるのがよいでしょう。
特に、破産に至る過程で給与が支払えていない場合は、早期に解雇する方がメリットになることもあります。

また、どうしても破産申立て後の管財業務に協力を得る必要がある従業員に対しては、破産申立て前に解雇予告のみを行い、速やかに破産申立てをした後、解雇予告の効力が生じる30日後までの間に協力を得るのがよいでしょう。


従業員の解雇に際して必要な手続き

まず、従業員の解雇に際しては、『解雇通知書』の準備をする必要があります。
併せて、解雇された従業員が再就職先での年末調整や確定申告の際に困らないように、源泉徴収票を解雇と同時、もしくは解雇後速やかに交付できるようにしておくことも大切です。

さらに、元従業員が失業保険の受給資格を得るために、雇用保険被保険者離職証明書、雇用保険被保険者資格喪失届を準備しておかなければなりません。
なお、解雇理由は『会社都合』となります。
会社都合であれば、元従業員は特定受給資格者として通常よりも長期間、失業手当を受給できるようになります。

このほかにも、住民税を特別徴収から普通徴収に切り替えるための手続きや、社会保険や厚生年金の切り替えのための手続きなどがあります。

法人破産の際、事業主がすべき手続きは非常にたくさんあります。
それまで自社に尽くしてくれた従業員のことを思うのであれば、従業員の解雇手続は迅速に行う必要があります。

解雇時期や、破産申立て後に協力を仰ぐ従業員の必要性については、判断が難しい点もあります。
従業員にできる限り迷惑をかけないためにも、誠意のある解雇手続を行いましょう。


※本記事の記載内容は、2021年11月現在の法令・情報等に基づいています。