ひかり税理士法人

交通事故を起こした際に支払う『示談金』、その内訳は?

21.05.25
ビジネス【法律豆知識】
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示談とは、民事裁判によらずに、当事者同士の話し合いで解決することをいいます。
交通事故においては、任意保険に入っている場合は、保険会社が示談交渉を代わりに行ってくれることもあります。
しかし、賠償責任は加害者が負うことになります。
こうして示談交渉によって決められた『示談金』がいくらになるのかは、ケースによって異なりますが、ある程度の目安となる基準が存在します。
万が一の事態に備えて、示談金の算出方法を知っておきましょう。
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示談交渉によって示談金が決まる

警察庁の発表によれば、2020年の交通事故件数は約30万9,178件になることがわかりました。
交通事故による死者数は、2,839人と統計開始以来最小となっており、負傷者数も年々減少傾向にありますが、それでも交通事故はなくなりません。
誰もが突然、加害者にも被害者にもなってしまう可能性があります。
もし、交通事故の加害者になってしまった場合には、被害者との示談交渉によって取り決められた示談金を支払う必要があります。

慰謝料のほかに、ケガの治療費や入院費、休業補償や通院のための交通費などの総額である損害額に、加害者の過失割合を乗じ、その金額から既払い金を差し引いたものが加害者が賠償責任を負うべき金額になりますから、この金額が示談金の目安となります。

過失の割合は、示談交渉で加害者と被害者の双方の過失がどれくらいかを話し合い、その割合に応じて示談金を算出することもできます。
たとえば、事故原因となった過失の割合が、被害者が30%、加害者が70%だった場合に、損害賠償金が100万円であれば、被害者の過失割合の30%を引いた70万円を示談金として被害者に支払うことになります。

それでは、示談金の内訳をチェックしていきましょう。
示談金の金額は、被害者のケガの程度や後遺症の有無などにより異なりますが、基本的には慰謝料と、実際に交通事故で生じた損害に対応する項目となります。
たとえば、

●治療費
●付添看護費
●入院雑費
●通院交通費
●文書料
●診断書発行費
●休業損害
●慰謝料

などです。
交通事故の損害が確定するのは、後遺障害がない人身事故なら完治時、後遺障害がある人身事故なら症状固定時です。
また、被害者の治療にかかる費用を支払うことになるので金額は明確ですが、治療費や入院費に関しては、治療と並行して加害者側の保険会社が病院に支払うケースがほとんどです。
その場合は損害確定後、加害者側の任意保険会社から提示額を記載した示談案が届きます。


複雑な算出基準と慰謝料の種類

示談金のなかで交渉が難しいものが、慰謝料です。
慰謝料は、被害者が受けた精神的な苦痛に対する補償のことで、交渉内容によっても金額は異なり、明確な相場というものはありません

慰謝料を算出するための基準も『任意保険基準』『自賠責基準』『弁護士基準(裁判基準)』があり、同じ状況や同じ治療日数だったとしても、それぞれの基準によって金額は異なります。

●自賠責基準
任意保険に加入していない加害者の自賠責保険から支払われる金額の基準です。
自賠責保険は、交通事故被害者が最低限の補償を受けとれるよう整備された保険で、車ごとに加入が義務づけられています。
自賠責基準は、任意保険に加入していない加害者の自賠責保険から支払われる金額で、任意保険基準や弁護士基準よりも低くなる傾向があります。

●任意保険基準
加害者側の保険会社が被害者に提示する慰謝料を算定するための基準で、一般的には、自賠責基準よりは高く、弁護士基準よりは低くなる傾向があります。

●弁護士基準(裁判基準)
過去の交通事故の判例から導く基準で、任意保険基準や自賠責基準の2~5割増しの金額になることもあります。
交通事故被害者の方が本来もらうべき賠償金の基準といえます。

さらに、慰謝料は『入通院慰謝料(傷害慰謝料)』『後遺障害慰謝料』『死亡慰謝料』の3つに分けられ、これら3つの慰謝料も、それぞれ自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準で算出されます。

●入通院慰謝料
治療の期間によって変動する慰謝料で、⼊通院期間が長引けば、それだけ金額も増すことになります。

●後遺障害慰謝料
被害者が事故で後遺症を負い、『後遺障害等級』が認定された場合に支払うことになります。
等級によってだいたいの金額は決まっています。

●死亡慰謝料
被害者が事故で死亡した場合に、被害者の相続人に支払われる慰謝料になります。
自賠責基準であれば、死亡した本人につき400万円、遺族(父母、配偶者、子)の慰謝料は1人の場合には550万円、2人の場合は650万円、3人の場合は750万円となります。
他方で、任意保険基準や弁護士基準(裁判基準)では、被害者の年齢や立場などでも変わってきます。
たとえば被害者が一家の大黒柱だった場合には、任意保険基準で1,700万円ほど、裁判基準で2,800万円ほどになります。

また、休業補償でも上記3つの基準が使われます。
自賠責基準の場合は、原則として1日6,100円と定められており、休業した日数×6,100円で求めることができます。
一方で、弁護士基準(裁判基準)では被害者の職業や収入に合わせて補償額が決められるため、自賠責基準よりも実際に被害者の得ていた収入に近い金額を支払うことになります。

このように、それぞれの項目ごとに算出方法が決まっており、加害者は示談交渉によって決められた示談金を被害者に支払うことになります。

示談交渉や交通事故の示談金の決定はとても複雑で時間もかかるため、もし任意保険に入っているのであれば、まずは保険会社に相談するのが得策といえるでしょう。
契約している保険のプランによっては、保険会社が示談より先に保険金を支払ってくれることもあります。
したがって、もし事故を起こしてしまった場合には、必要な措置を行ったうえで、警察と保険会社に速やかに連絡することが重要になります。

まずは事故を起こさない、事故に遭わないことを心がけながら、毎日を過ごすことが大切です。
そのうえで保険会社の契約内容や連絡先を把握しておくなど、万が一の事態に備えておきましょう。


※本記事の記載内容は、2021年5月現在の法令・情報等に基づいています。