ひかり税理士法人

取締役を解任する際の具体的な方法と注意点とは

21.04.13
ビジネス【企業法務】
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取締役は、株式会社における業務執行を担う機関で、株式会社内における地位はとても高いものです。
しかし、その地位は恒久的に守られるというわけではなく、突然、立場を追われることも十分にあり得ます。
なぜなら、株主総会の決議や訴えによって取締役を解任できることが会社法で定められているからです。
今回は、取締役を解任する方法について解説します。
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株主総会の決議で取締役を解任する

いくら社内で強い権限を持つ取締役といえど、会社の所有者である株主と、株主による株主総会には敵いません。
取締役は、事由のいかんを問わず、かつ、いつでも、株主総会の決議によって解任され得るのです。
その際の決議要件は選任決議の場合と同じで、通常は『出席株主の過半数が解任に賛成していること』となります。
つまり、株主の過半数が不支持を表明した取締役は、決議によって解任されることがあるというわけです。

解任の効力発生時期については、株主総会の決議によって取締役の地位が剥奪されることが決まれば、直ちにその効力が発生するとされています。
なお、当人への告知がなくても解任の効力は発生します。

ただし、取締役には任期があるため、その任期に対する期待も保護しなければなりません。
したがって、正当な理由なしに任期満了前に取締役を解任する場合は、会社が損害賠償責任を負うことになります。
ここでいう『損害』とは、もし取締役を解任されなかったとした場合に、任期満了時に得られた利益(役員報酬額)と考えられています。
そのため、仮に役員報酬額が0円とされていたような場合や、解任時に残存任期がほとんど残っていなかったような場合は、会社が賠償すべき金額の範囲も少なくなります。
これらを踏まえると、取締役を解任するにしても、その取締役の役員報酬額や解任のタイミングについては、会社の不利益にならないように慎重に判断する必要があるといえるでしょう。


裁判所に訴えることで取締役を解任する

取締役の職務執行に関して、不正行為または法令・定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、株主総会において解任決議案が否決されることがあります。

しかし、解任決議案が否決されたとはいえ、このような取締役を在任させ続けることは百害あって一利なしですので、やはり取締役を解任する必要が出てくるでしょう。
その方法として、会社法は『取締役解任の訴え』という制度を用意しています。
これは、総株主の議決権の100分の3または発行済株式の100分の3以上の株式を有する株主が、株主総会の日から30日以内に裁判所に訴えることで、その取締役の解任を請求できるという制度です。

この場合は、解任の判決が出た時点で取締役は解任されることになります。


訴えが決着するまで、職務執行を停止するには

取締役解任の訴えは、あくまでも訴訟ですので、決着するまでに時間がかかることがあります。
その間、取締役に職務を継続させることが会社にとって適当でないケースもあるでしょう。

その場合は、民事保全法上の『仮の地位を定める仮処分』の一種である『職務執行停止の仮処分』を申し立て、取締役の職務執行を早期に停止し、その職務を代行する者を選任します。
職務代行者には弁護士が選任されるのが通例です。

このように、取締役を解任するには、段階に応じて複数の手段があり得ます。
どのような手段を用いるか、適宜判断していくことが大切です。


※本記事の記載内容は、2021年4月現在の法令・情報等に基づいています。