ひかり税理士法人

金銭トラブルで困ったときに役立つ『少額訴訟』のすすめ

21.03.30
ビジネス【法律豆知識】
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貸したお金を返してもらえないなどの金銭トラブルが起きた場合、裁判所に訴えて解決することがあります。
もし、相手方に請求するのが60万円以下であれば『少額訴訟』という方法があります。
少額訴訟は、費用がそれほどかからず、迅速に判決を得ることができるので、誰でも比較的簡単に行えるのがメリットです。
今回は、金銭トラブルの対策としても知っておきたい、少額訴訟について説明します。
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どのようなケースが少額訴訟に向いている?

「知人にお金を貸して、何度も催促したが返してくれない」「車をぶつけられたが、なかなか修理代を払ってもらえない」「商品の代金を払ってくれない」「給料が支払われない」などの金銭トラブルが起きた場合、まずは当事者同士で話し合い、解決への道を模索することが大切です。
しかし、話し合いが長期化したりこじれたりすると疲弊してしまい、実生活にも影響が出てしまいます。
そのような場合には、『少額訴訟』を検討してみるのも一つの方法です。

少額訴訟は60万円以下の金銭の支払いを求める場合に利用できる裁判で、費用負担も軽く、原則的に1日で審理が終わります

ただし、60万円以下の請求に関わる全ての事柄について少額訴訟を起こせるわけではありません。
少額訴訟が起こせるのは、自分の言い分と証拠となる書類を期日までに揃えることができ、証人に審理の日に出席してもらえる場合です。
逆に、事実が不明瞭で争いに発展する可能性があるなど、1日で結審できない複雑な紛争は、たとえ請求金額が60万円以下だったとしても、少額訴訟には向いていません。

さらに、少額訴訟を起こしたら、訴状を被告に送付する必要があるため、被告の住所が分からない場合にも、少額訴訟を利用することができません。
ほかにも、相手側が少額訴訟を希望しない場合や、裁判所が少額訴訟には適さないと認めた場合などは、通常の民事訴訟での裁判になります。


少額訴訟を起こすための手続き

少額訴訟に適した案件であれば、いよいよ訴訟の手続きを行います。
原告は被告の住所を確認し、被告の住所の管轄となる簡易裁判所に訴状と証拠となる資料、申し立て手数料、相手方に書類を送るための郵便切手などを提出します

訴状のフォーマットは、『貸金請求』『売買代金請求』『給料支払請求』など、案件ごとに分かれており、それぞれ裁判所のWebサイトからダウンロードすることができます。
記載例も掲載されているので、参考にしながら書き進めていきましょう。

また、申し立て手数料は、請求する金額に応じた収入印紙で納めます。
たとえば、10万円以下の請求であれば1,000円、10万円~20万円以下の請求であれば2,000円となります。

訴状が受理されると、原告と被告に審理の日時が伝えられ、双方が裁判所の指示に従って、答弁書や追加の証拠書類を用意します。
そして審理の当日には簡易裁判所に出向き、裁判官や司法委員とともに審理を進めていきます。

裁判といっても、いわゆるドラマやニュースなどで見るような大きな法廷ではなく、会議室のような小さい部屋で行われることがほとんどで、原告と被告、裁判官、司法委員が丸いテーブルに着席する形式で進められます。

裁判官や司法委員は、双方から提出された証拠や証人尋問などを参考にして、審理を進めていきます。
時間は30分から2時間くらいで終わり、最後に判決が言い渡されます。
ただし、その前に裁判所から和解を勧められることで、和解が成立するケースも少なくありません。
和解の可能性についても考えておくとよいでしょう。

普通の裁判と異なり、被告は控訴ができませんが、異議申し立てが可能です。
異議申し立てが行われた場合は、通常の民事訴訟手続で審理が行われます。

また、少額訴訟で勝訴が確定しても、被告が支払いに応じないケースもあります。
その場合は、通常の裁判と同じく、請求権を強制的に実行するための強制執行手続を申し立てることができます

当然、敗訴するリスクなどもありますが、少額訴訟は日常的な金銭トラブルを解決するためには有効な手段です。

実際に、訴えるかどうかは別として、金銭トラブルが生じた際に自身が損失を被らないためにも、知識として内容や手続きの方法などを知っておくとよいでしょう。


※本記事の記載内容は、2021年3月現在の法令・情報等に基づいています。