ひかり税理士法人

特許を急いで取得できる、早期審査制度とは?

20.08.07
ビジネス【企業法務】
dummy
特許権があれば、競合する他社にその特許発明を模倣されても、特許使用の差止請求や損害賠償請求などをすることができます。
しかし、その前提として、特許権は特許庁への登録が完了していなければ有効にならず、差止めやその他の権利行使をすることはできません。
そこで今回は、特許取得にかかる期間や特許を早期に取得できる制度について説明します。
dummy
特許登録に必要な手続と期間

特許取得のためには、出願と登録が必要であることは、広く一般的に知られていることでしょう。
特許出願の手続は、

1.特許出願
2.審査請求
3.審査
4.査定

という流れで行われます。
特許出願をしただけでは審査が進まないため、出願の日から3年以内に審査請求をしなければなりません
審査請求をしなかった場合には、その特許出願は取り下げたものとみなされます。

審査請求をすると、審査官が審査を開始します。
通常、審査請求をして約1年後に審査結果が返ってきます。
申請内容で問題がなければ特許査定が発行され、査定の受領から30日以内に特許料を納付することにより、特許を取得できます。
なお、申請内容に問題がある場合には、拒絶理由通知が発行され、一定期間内に拒絶理由が解消または是正されなければ、特許登録は認められません。

つまり、通常の特許出願の場合、スムーズに進んだとして概ね1年程度の期間がかかってしまうということになります。

しかし、製品ライフサイクルの短い分野等においては、特許登録までに1年もかかると、審査している間に技術が時代遅れになってしまうといったことがあります。
そうなっては、特許権に基づいて他社の参入を阻止したり、模倣を防止したりする以前の問題になりかねません。


審査が速やかに実施される二つの制度

では、少しでも早く特許を取得したい人は、どうすればよいのでしょうか。
審査期間を短縮する方法としては、一定の要件を満たした出願について、以下の二つの制度が設けられています。

【早期審査】
早期審査の対象となるのは以下の6つのカテゴリーです。

(1)実施関連出願
(2)外国関連出願
(3)中小企業、個人、大学、公的研究機関等の出願
(4)グリーン関連出願
(5)震災復興支援関連出願
(6)アジア拠点化推進法関連出願

これらの出願を対象に、出願人が申請すれば、通常より審査・審理期間を短縮して行ってくれる制度です。
申請から一次審査が出るまでの期間は概ね3カ月以内と、通常の審査と比べて大幅に短縮されています。

【スーパー早期審査】
出願審査請求がなされている審査着手前の出願であって、
(1)『実施関連出願』かつ『外国関連出願』であること、またはベンチャー企業による出願であって『実施関連出願』であること
(2)スーパー早期審査の申請前4週間以降のすべての手続をオンライン手続とする出願であること

上記二つの要件を満たすものが該当します。
スーパー早期審査の場合、通常の国内出願に関しては、申請から一次審査の結果が出るまでの期聞が申請の日から1カ月以内と、早期審査の約2倍以上の速さで審査が終了します。
しかし、スーパー早期審査では、手続がオンライン手続に限定されていたり、形式的な不備があるだけでも申請が無効になってしまったり、また、拒絶理由通知に対する応答期間が通常の半分の30日に制限されているなど、手続に注意が必要な点があります。

早期審査請求とスーパー早期審査は同時に申請することも可能であり、スーパー早期審査の対象外と判断された出願も早期審査の要件を満たすものは審査してもらえます。
早期審査・スーパー早期審査のいずれかの手続を利用しようと考える場合は、出願準備に割くことのできる労力や緊急性がどの程度高いかといったことも考慮して手続を選択する必要があるでしょう。

急いで特許を取得する予定はなくても、特許を取得するまでの時間を短縮する方法があるということを知識として持っておくとよいでしょう。


※本記事の記載内容は、2020年8月現在の法令・情報等に基づいています。