ひかり税理士法人

従業員が事業所の誹謗中傷をSNSで拡散!? その対策とは

19.10.01
業種別【介護業】
dummy
SNSの普及により、従業員の何気ない情報の発信が原因で、企業のイメージを損ねてしまうという事件が多々起きています。
こうしたSNSによるトラブルは、介護事業所にも起こるおそれがあり、未然に防ぐためにはどうすればよいかを考えておかなくてはなりません。
あわせて、批判を書き込まれてしまった場合、どうすればよいのかも押さえておく必要があります。
そこで、従業員が介護事業所の批判をSNSに書き込む主なケースと対策についてご紹介していきます。
dummy
SNSで介護報酬や利用者の集客にダメージも

Twitter、Facebook、InstagramなどのSNSを使えば、誰もが全世界に向けて情報を発信することができます。
そのため、従業員の何気ない情報の発信が原因となって、会社の経営を揺るがすような事件が後を絶ちません。
こうしたSNSによる炎上が起きるのは、自分が発信した情報を不特定多数の人が読むかもしれないという意識を持たず、勤務先の業務にかかわる情報を安易に書き込む人がいるからです。

SNSによって生じる被害は、介護事業所も例外ではありません。
むしろ、介護事業所こそ気をつけなくてはなりません。
なぜならば、介護事業所のような人に接する仕事ではネットでの口コミや書き込みによる影響力が非常に強いため、介護報酬や利用者の集客などが左右される可能性があるからです。
たとえば、書き込まれた内容のなかに『パワハラ』『低賃金・重労働』『ブラック企業』などといったキーワードが含まれていれば、あっという間に対象となった介護事業所の悪評が広がってしまいます。
その結果、利用者が減少してしまい、介護報酬や利用者の集客に影響するというおそれもあるのです。


従業員が批判を書き込む主なケースと対策

SNSに介護事業所に対するネガティブな書き込みがあり、悪評が広まった場合、事業所側は『すぐにでも該当の発言を削除してほしい』と考えることでしょう。
しかし、まずは内容と理由を確認し、そのうえで対策を考えるほうがよいでしょう。

従業員が介護事業所の批判をSNSに書き込む理由として考えられるのは、次のようなケースです。
(1)悪いことだという意識がなく、面白半分の軽い気持ちで事実とは異なる書き込みをしたというケース
(2)施設長や先輩と気が合わないなどの理由により、施設に対する嫌がらせとして事実とは異なる書き込みをしたというケース
(3)施設の待遇に不満があり、実際にセクハラやパワハラなどを受けているため事実を書き込んだというケース

(1)、(2)は事実とは異なるため、従業員に対して削除を求めることは可能です。
万が一、本人が削除命令に応じなくても掲示板を管理運営するプロバイダ事業者やサイトの運営者に対して、削除要求をすることができます。
削除要求は、書面または電子メール(印鑑証明書や電子署名が必要)で行うことが可能なため、削除を要求する書き込みの内容を特定し、この書き込みによって介護事業所やその従業員の信用や名誉が害され、実際に損害が生じていることを具体的に記載しておくことが効果的です。

ただし、(3)のように実際に労働基準法違反やパワハラ、セクハラなどの行為が行われている可能性がある場合、法的に削除を要求することは困難になります。
これは書き込まれた目的が公益目的(労働基準法違反などの行為が横行している企業の実態を社会に知らしめる目的など)であり、その内容が真実である場合は書き込んだ従業員に対して名誉毀損や損害賠償責任を問える可能性が非常に低くなるためです。

このような介護事業所に対する誹謗中傷を書き込まれないためには、普段から労働基準法などの法律を遵守することが必要です。
そして、従業員の意識を高めるためにも、SNSの利用に関するスタッフ教育を定期的に実施することや、就業規則にSNSへの誹謗中傷の書き込みなどを禁止する規程を設けることも重要なポイントとなります。


※本記事の記載内容は、2019年10月現在の法令・情報等に基づいています。