ひかり税理士法人

不動産相続の『代償分割』とは? 不公平感を抑える柔軟な分け方

26.05.05
業種別【不動産業(相続)】
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相続財産の多くを不動産が占め、現金が十分に残されていない場合などに、遺産分割の方法として有効なのが『代償分割』です。
これは、不動産を取得する相続人が、ほかの相続人へ代償金を支払うことで、公平な遺産分割を実現する方法です。
不動産を売却せずに済むため、住み慣れた家を残しつつ、相続人全員が納得しやすい点が大きなメリットです。
一方で、代償金の支払い能力や不動産評価額の決定方法をめぐり、意見が対立するケースも少なくありません。
今回は、代償分割の基本的な仕組みから実務で注意すべきポイントまでをわかりやすく解説します。

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代償分割の仕組みとメリット・デメリット

代償分割とは、特定の相続人が不動産を単独で取得し、その代わりにほかの相続人へ代償金を支払うことで公平性を保つ遺産分割の方法です。
民法上認められている遺産分割方法の一つで、実務でも広く利用されています。
たとえば、兄弟2人が相続人で、遺産が4,000万円相当の自宅のみという場合、兄が自宅を取得し、弟に2,000万円の代償金を支払えば、実質的に平等な分割が実現します。

遺産分割には、代償分割以外にも次の方法があります。
(1)現物分割:遺産をそのまま分け合う方法です。
たとえば、兄が自宅、弟が預貯金を相続するといったケースがあげられますが、不動産の評価額が大きい場合などは、公平性の確保が困難になります。
(2)換価分割:不動産を売却して現金化し、その代金を分け合う方法です。
ただし、不動産の売却に時間がかかる可能性があります。
(3)共有分割:不動産を相続人全員で共有する方法です。
将来の売却や活用に全員の同意が必要となり、トラブルにつながりやすい点がデメリットです。

代償分割が選ばれる理由は、不動産を残しつつ公平な分割ができる点にあります。
特に、被相続人と同居していた相続人が自宅を取得する場合、小規模宅地等の特例を適用できる可能性があり、相続税の大幅な節税につながります。
また、不動産を単独名義にすることで、共有名義による将来的なトラブルも回避できます。

一方で、デメリットもあります。
第一に、代償金の支払い能力の問題です。
不動産を取得する相続人が、自己資金で代償金を支払う必要があるため、資金力が不足している場合は実行が困難となります。
第二に、不動産評価額の決定をめぐる対立です。
評価方法によって金額が大きく変わるため、不動産を取得する側は低い評価額を、代償金を受け取る側は高い評価額を主張する傾向があり、合意形成が難航することがあります。

代償金の決め方と実務上の注意点

代償金の算定方法には、実勢価格(時価)、相続税評価額である路線価、固定資産税評価額などがあります。
実勢価格は実際に市場で取引される価格で、最も実態に近い評価といえます。
ただし、正確に鑑定するには不動産鑑定士の鑑定が必要で、そのための費用が必要となります。
路線価は国税庁が定める相続税計算用の評価額で、公示価格の約80%が目安です。
時価より低いことが多く、代償金が小さくなりやすいため、受け取り側に不利となる可能性があります。
固定資産税評価額は市町村が定める固定資産税算出用の評価額で、公示価格の約70%が目安です。
このように、評価方法によって金額に差が出るため、相続人間で対立が生じやすくなります。
合意ができない場合は家庭裁判所に判断を求めることも可能ですが、時間と費用がかかります。

代償金の支払い方法としては、不動産を担保に借入れを行うこともできますが、返済計画を慎重に立てる必要があります。
一括で払えない場合でも、相続人間の合意があれば分割払いも可能です。
その際は、遺産分割協議書に支払期日、支払方法、分割回数などを明確に記載しておくことが不可欠です。
遺産分割協議書に代償金の支払いが明記されていない場合、単なる贈与とみなされ、贈与税が課される可能性があります。
また、代償金の額が遺産の評価額とかけ離れている場合も、贈与と判断されるおそれがあるため注意が必要です。

こうしたトラブルを回避するためには、評価方法について事前に十分話し合い、必要に応じて不動産鑑定士の鑑定を利用するなど、客観的な基準に基づく評価をすることが大切です。

不動産の評価や税務の取り扱いは複雑なため、税理士、弁護士、司法書士などの専門家に相談することも有効です。
専門家の助言を得ることで、税務上のリスクを回避し、適切な手続きを進めることが期待できます。

代償分割は、不動産を売却せずに公平な遺産分割を実現できる有効な方法ですが、代償金の支払い能力や評価方法の選択など、注意すべき点も多くあります。
相続人全員が納得できる分割を行うために、事前の十分な話し合いと準備をしておくようにしましょう。


※本記事の記載内容は、2026年5月現在の法令・情報等に基づいています。