ひかり税理士法人

職場の『ガスライティング』とは? 被害者や加害者にならないために

24.11.26
ビジネス【人的資源】
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『ガスライティング(Gaslighting)』とは事実の捻じ曲げや矮小化などの手口によって、相手の判断や認知が間違っていると思わせるように仕向ける心理的虐待のことで、近年は職場でも広がりを見せています。
このガスライティングを用いると、被害者は、加害者に心理的に操られ、「仕事ができないのは自分のせいかもしれない」と思わされてしまいます。
しかも、ガスライティングは露見しづらく、被害を受けている本人も虐待だと気づきづらいという特徴があります。
職場の安全を守るために知っておきたい、ガスライティングの手口や対策などについて解説します。

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『ガスライティング』という心理的虐待

労働施策総合推進法の改正(パワハラ防止法)によって、2022年4月1日から中小企業においてもパワーハラスメントを防止するための措置が義務づけられました。
しかし、どんなに防止策を講じても、巧妙化したパワハラや嫌がらせは、外部から気づきにくいという特徴があります。
このような巧妙化したパワハラの一つに、『ガスライティング』があります。
もともとは家庭内での精神的DVとして扱われることの多いガスライティングですが、近年は職場においても、パワハラや嫌がらせの一種として認識されてきています。

そもそもガスライティングはアメリカ発祥の言葉で、後に映画化もされた1938年の戯曲「ガス燈」が由来とされています。
この戯曲は、1870年のロンドンを舞台にDV気質の夫から、事実ではない物忘れや盗癖を指摘された妻が精神的に追い詰められていくという内容です。
ここからガスライティングは、相手の判断や認知をコントロールする心理的虐待の名称とされるようになりました。

こうした心理的虐待は昔からありましたが、2010年代後半の欧米で再び注目を集めるようになりました。
また、イギリスでは2015年の法改正で、家族や親密な関係性にある人を操るまたは威圧的な行為が犯罪であると定めら、この行為にはガスライティングが含まれると解釈されています。
多くの人がガスライティングに関心を向けたのは、情報操作やディープフェイク、陰謀論といったワードが広まり、事実の認知を歪曲しようとする時代的な潮流に対する警戒心が背景にあったとする分析もあります。

職場におけるガスライティングは、特に上司と部下などの上下関係があるときに起きやすく、加害者である個人や集団のことを「ガスライター」と呼びます。
ガスライターの目的は、被害者を「組織から孤立させる」「職場から追い出す」「支配下に置く」などさまざまで、あらゆる手を使いながら、周りの人たちはもちろん被害者本人にもわからないよう、心理的に追い込んでいきます。

事実を捻じ曲げて追い詰めるガスライター

ガスライターの手口を把握しておくことは、ガスライティングを防ぐうえでもっとも重要なポイントです。
たとえば、ガスライターはターゲットとなる被害者のミスを捏造したり、発言を毎回否定したりします。
被害者がそのことを指摘すると、「そんな事実はない」「嘘をつくな」「普通じゃない」などと否定し、被害者に「自分が間違っていたかも」と思わせようとしてきます。
身に覚えのないミスや噂を指摘され続けた被害者は、次第に「自分の被害妄想なのでは」と不安になり、精神的に追い詰められていきます。
こうした「事実の捻じ曲げ」は、ガスライターの常套手段です。

また、心理的な手口以外に、被害者の私物を隠したり、勝手にパソコンの設定を変えたりするなど、小さな迷惑行為で被害者にストレスを与え続けるのもよくある手口です。
自分の認知を揺さぶられて不快な状況が続くと、判断力などが落ち、ガスライターにとってコントロールしやすい状況になります。

さらに、ガスライターは被害者が反発してきたら、嘘や噂話などによって周囲の人に、逆にガスライターである自分が被害者であるように印象づけます。
周囲の人を味方につけたガスライターが、集団で被害者を非難するようになるケースも少なくありません。

そして、被害者から反発された際に「そんなの大げさだよ」「たいしたことじゃない」と問題を矮小化しようとするのもガスライターの特徴です。
特に上司と部下などの関係にあり、被害者が経験の浅い新人であれば「そうかもしれない」と丸め込まれてしまいます。

ガスライティングは、被害者にとってうつ病の発症や離職にも至る虐待行為で、組織にとって害でしかありません。
大切なのは被害者自身がガスライティングを受けていることを認識し、周囲に相談することです。
パワハラ防止法では職場におけるパワハラの相談窓口の設置も義務化されました。
事業者はガスライティングについて具体的な事例と共に、全従業員へ周知を図り、パワハラの防止策と同等の措置を行うことが重要になります。


※本記事の記載内容は、2024年11月現在の法令・情報等に基づいています。