ひかり税理士法人

歯科医院の事業承継を成功させるために押さえておきたいこと

24.09.03
業種別【歯科医業】
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院長の高齢化や廃院の増加などによって、歯科医院における事業承継の数が増えています。
歯科医院の事業承継は診療所や医療機器などを継承できるほかに、これまで医院に勤務していたスタッフや通院していた患者も引き継げるというメリットがあります。
一方で、リニューアルに対して患者が不安を抱えていたり、医療機器が老朽化していたりといったリスクもあります。
歯科医院の事業承継を成功させるには、リスクや注意点をよく把握したうえで、慎重に進めていかなければいけません。
近年、増加傾向にある歯科医院の事業承継について、押さえておきたいポイントを説明します。

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歯科医院の事業承継が増えている背景

コンビニの数よりも多いといわれる歯科医院ですが、近年は右肩上がりだった開設数も落ち着いてきており、2017年には歯科医院の廃止数がついに開設数を上回りました。
歯科医院の総数に関しても、2022年1月末時点で67,771施設でしたが、2023年の1月末には67,501施設、そして、2024年1月末には66,886施設と減少傾向にあります。

歯科医院の減少は慢性的な人手不足や運転資金の問題などのほかに、院長の引退も原因の一つといわれています。
歯科は、ほかの診療科と比べて開業する割合が高く、2022年の厚生労働省の調査によれば、60代の歯科医師の78.6%が開業していることがわかっています。
同じ年の調査結果で、歯科診療所を運営する院長の平均年齢は59.1歳であり、また、診療所の院長の約半数を60歳以上が占めており、多くの歯科医院が高齢化に伴う院長の引退を意識せざるを得ない状況といえます。

こうした歯科医院の減少や、院長の引退などを背景に、歯科医院の事業承継が増えています。
多くの歯科医院にとって、事業承継が他人ごとではなくなってきているということです。

歯科医院における事業承継とは、医院としての事業を後継者に引き継ぐことを指し、具体的な方法としては、親から子など親族間で承継する『親族内承継』と、親族ではない勤務医やスタッフに承継する『親族外承継』があげられます。
この親族外承継には、M&Aや合併などによって承継する『第三者承継』も含まれます。

事業承継のメリットとデメリット

事業承継の最大のメリットは、診療所の建物や医療機器などを前医院から引き継ぐことができるため、一から開業するよりもコストがかからないことです。
規模や設備によっても異なりますが、歯科医院を開業する場合は、ユニット3台の規模の診療所で、トータルでおよそ5,000万円以上の費用がかかるとされています。
事業承継では、建物や医療機器を流用することで、ある程度、開業資金を抑えることができます。

ただし、建物や医療機器の老朽化が著しい場合は、内外装工事費や買い替えのための費用などが発生する可能性があります。
そのまま流用して問題ないのか、建物の状態や、医療機器の消耗具合などは事前に確認しておきましょう。

また、スタッフをそのまま引き継げるのも大きなメリットです。
すでに前医院で経験を積んだスタッフがいれば、即戦力として活躍してもらえますし、スタッフを一から教育する必要もありません。
前医院との方針の違いからスタッフと対立するケースもあるので、適切なコミュニケーションを取り、関係を構築しておきたいところです。
場合によっては、承継する予定の歯科医院で後継者に一定期間、働いてもらうのも有効な手段です。
後継者は承継する予定の歯科医院で働くことによって、事前にその歯科医院の診療方針を学び、スタッフとの関係性を構築することもできます。

さらに、事業承継では患者も引き継ぐことができます。
同じ場所にある医院を使うことになるため、前医院の患者がそのまま通ってくれる可能性が高く、事業承継を行なって比較的すぐに経営を軌道に乗せることができます。
なかには医院の名称や院長が変わったことに不安を抱える患者もいるため、事業承継を行なった理由を医院の内外に向けて周知し理解を求めることが重要です。

注意したいのは、前医院と診療方針や治療内容が異なる場合です。
診療方針や治療内容が変わると別の歯科医院に移ってしまう患者もいるため、できるだけ前医院の診療方針や治療内容を引き継ぐほうがよいでしょう。
自分のスタイルに変えていく場合も、院内のチラシやホームページでわかりやすく診療方針などを打ち出していくことが大切です。

血縁者や後を継いでくれそうな知人などがいる場合は、具体的に事業承継について考えることができますが、後継者がいない場合は、M&Aや合併などによる第三者承継も考えていかなければいけません。
現在、歯科医院のおよそ半数に後継者がいないといわれています。
引退を検討していて後継者がいない場合は、コンサルティング会社やマッチングサービスなども利用しつつ、後継者探しから始めていきましょう。


※本記事の記載内容は、2024年9月現在の法令・情報等に基づいています。