ひかり税理士法人

遺品整理を放置するとどうなる? 遺品整理で気をつけるポイント

24.09.03
業種別【不動産業(相続)】
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家族が亡くなったときに直面するのが、遺品整理です。
最近では「終活」や「断捨離」という言葉もすっかり定着し、遺された家族へ負担をかけないように、生前に身の回りの物を処分する人も増えてきました。
しかし、いくら生前に入念に準備していたとしても、遺品整理は避けて通れないものです。
今回は、遺品整理は誰が行うべきなのかということと、遺品整理をするにあたって気をつけるべき点について解説します。

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遺品整理は誰が行うべき?

家族が亡くなった場合は、まず遺言書の有無を確認しましょう。
理由としては、法的には相続の開始と同時に相続人に遺品の所有権が移っており、遺品の所有者である相続人に遺品整理の義務が発生するためです。
遺言書がない場合は法定相続人(配偶者や子どもなどの親族)が遺産を引き継ぐことになりますが、法定相続人の遺産分割協議で特定の遺産を特定の相続人が相続することを決定できます。
また、故人が遺言書で相続人を指定している場合は、その人が相続人になります。
そのため、「誰に遺品整理の義務があるのか?」を把握するためにも、まずは遺言書の有無を確認するようにしましょう。

遺品整理を行うべき相続人が確認できた後は、実際に遺品整理に取り掛かります。
このとき、いきなり遺品を処分するのではなく、まずは相続財産の把握から始めましょう。
「相続財産」には、預貯金や現金といったプラスのものから、借金のようなマイナスのものまですべて含まれます。
プラスの財産がマイナスの財産よりも多い場合は問題ないことが多いのですが、マイナスの財産のほうが多い場合、どのようにその支払いをするのかについても考える必要があります。

このような場合に取りうる方法の選択肢の一つとして、相続放棄があります。
しかし、民法には「単純承認」という制度があり、相続人が相続財産を一部でも処分してしまっている場合、相続放棄が認められない可能性があるので注意が必要です。

単純承認とは「相続人が、被相続人のすべての権利義務を引き継ぐこと」を意味します。
民法第921条では「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」は、相続人が単純承認をしたものとみなすと規定されていますので、相続財産の処分をした後の相続放棄は認められない可能性があります。
つまり、遺品を一部でも処分した後に借金の存在が発覚した場合、相続放棄ができず、相続人が支払い義務を負うといった可能性があるため、まずは相続財産の全体像を把握することが重要となるのです。

なお、相続人によっては、「多忙である」「遠方に住んでいる」といった理由で、遺品整理に着手できないことがあるかもしれません。
故人との思い出があるために気持ちの整理がつかず、後回しになってしまうことも考えられます。
しかし、そうした事情で遺品整理を放置した場合、さまざまな問題が発生する可能性があります。

たとえば、建物を空き家のまま放置して安全上や衛生上に問題があると判断された場合は、「空家等対策の推進に関する特別措置法」でいう「特定空き家」に認定されて、固定資産税が大幅に増加するおそれがあります。
また、売却を考えている場合は、遺品整理をしている最中に市況などの影響で価値が下がってしまうこともあり得ます。
こうした事態を避けるためにも、遺品整理はなるべく早い段階で行うように努めましょう。

身寄りのない方が亡くなった場合は?

上記では相続人がいる場合の遺品整理の注意点を記載しましたが、故人によっては相続人がいない、もしくは、いるかどうかがわからないといったケースもあり得ます。
原則として、相続人以外の第三者が勝手に財産を処分することは認められていません。
たとえば、自身が大家であるアパートに住んでいる方が亡くなり、相続人がいるか不明な場合には、誰が遺品整理をするのでしょうか?

こうした場合は、相続財産清算人が遺産整理を行うことになります。
聞き慣れない言葉ですが、相続財産清算人は、故人の利害関係人(債権者など)や検察官の請求により家庭裁判所が選任し、故人の債権者などに対して故人の債務を支払うなどして清算を行い、清算後に残った財産を国庫に帰属させる役割を担っています。
選任されるために特別な資格は必要ありませんが、被相続人との関係や利害関係の有無などを考慮して、相続財産を清算するのに最も適任と認められる人が選ばれます。
弁護士、司法書士などの専門職が選ばれることもあります。

相続財産清算人に認められている権限は、原則として「保存行為」「管理行為(利用・改良行為)」の2つです。
「保存行為」とは建物の修理修繕など、相続財産の現状を維持するための行為を指し、「管理行為(利用・改良行為)」とは預金の払い戻しや借金の返済、税金の納付など、認められた範囲内で相続財産を利用・改良する行為を指します。
一方で、不動産や株式の売却などの「処分行為」をする権限は認められていないため、不動産などの売却価値の高いものを処分する場合には、家庭裁判所の許可が必要となります。

遺品整理は相続財産を把握するといった観点でも重要なことですので、手続きに不安がある場合は、その分野に詳しい専門家に相談することを検討しましょう。


※本記事の記載内容は、2024年9月現在の法令・情報等に基づいています。