ひかり税理士法人

オレオレ詐欺の被害に遭ってしまったら……? 対応と対策を考える

24.08.13
ビジネス【法律豆知識】
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『オレオレ詐欺』は、息子や孫を装った犯人が、事故や借金などの緊急事態を口実に現金を要求する手口の特殊詐欺で、特に高齢者が狙われやすい犯罪です。
被害に遭った場合は、『振り込め詐欺救済法』(犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律)に基づき、被害回復分配金の申請を行うことで、全額または一部を取り戻せる可能性があります。
今回は、被害回復分配金の申請手順、ならびに、被害を未然に防ぐための取り組みを紹介します。

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もしも被害に遭ってしまったら、どうする?

『特殊詐欺』は、被害者にハガキを送ったり電話をかけたりなど、対面することなく親族や公共機関の職員と名乗り信頼させ、犯人の口座への振り込みやそのほかの方法で、不特定多数の者から現金などをだまし取る犯罪の総称です。
警察庁が公表している2023年の統計によると、特殊詐欺の認知件数は19,038件、被害額は452.6億円にものぼり、依然として高水準にあります。

また、特殊詐欺のうち、犯人が息子や孫を装い、事故や借金などの緊急事態を口実に現金を要求する手口を『オレオレ詐欺』といいます。
オレオレ詐欺の認知件数自体は減少傾向にありますが、被害額は増加しており、2023年の被害額は前年比4.1億円増の133.5億円となっています。

オレオレ詐欺は、特に高齢者を狙った犯罪として知られており、近年では複数人が警察官や弁護士などの役に扮するなど、手口が巧妙化しています。
「自分は大丈夫だ」と思っていても、被害に遭ってしまうことがありますので、決して他人事としてとらえず、日頃から警戒心を持つことが重要です。

万が一、オレオレ詐欺の被害に遭ってしまった場合は、振り込め詐欺救済法の救済を受けることができます。
この法律により、被害者から申請があった金融機関は、被害者が振り込んだ口座を凍結し、利用停止にします。
そのうえで、口座の残高や被害額に応じて、被害者は被害額の全部または一部を被害回復分配金として受けられるのです。

ただし、犯人が口座からお金を引き出してしまった後では、口座の残金が減っており、被害回復分配金で取り戻せるお金はほとんどなくなってしまいます。
そのため、被害に遭ってしまった場合は、以下の手順に従って、速やかに警察ならびに振込先の金融機関に連絡することで、被害を最小限にとどめることができます。

1.警察への通報
最寄りの警察署に被害を報告し、状況を詳細に説明します。

2.振込先の金融機関への届け出
警察への連絡とは別に、被害者から振込先の金融機関への届け出が必要です。
この届け出を基に、金融機関が当該口座を調査し、口座の凍結手続きなどを進めます。

3.被害回復分配金の支払申請
被害回復分配金を受け取るためには、申請期間中に申請する必要があります。
申請受付が行えるのは、振り込んでしまった口座を金融機関が凍結して、失権手続(約60日)を行なった後に開始される支払手続(約90日)までの期間内となっています。
振込先の金融機関に被害を申し出た方には、金融機関から個別に申請期間が連絡されます。
詳細は振込先の金融機関に確認しましょう。

4.被害回復分配金の受取
被害に遭ってから被害回復分配金を受け取るまでには最短でも約8カ月かかるとされています。
所定の手続きを終えた後は、指定口座に被害回復分配金が振り込まれるのを待ちましょう。

なお、振り込め詐欺救済法に基づく被害者への返金制度は、預金保険機構と金融機関が行う『被害回復分配金の支払手続』のみです。
直近では、被害者への返金制度を装い、電話やチラシなどでの勧誘による詐欺行為が発生しているため、二次被害に遭わないように注意が必要です。

被害に遭わないためにできること

振り込め詐欺救済法に基づく救済制度があるとはいえ、被害額のすべてを取り戻せるとは限りません。
また、金銭的被害だけでなく、被害に遭ったことによる精神的苦痛などもあるため、何よりも被害に遭わないことが重要です。
オレオレ詐欺の被害を未然に防ぐためには、以下のような対策が考えられます。

1.知らない電話には出ない
オレオレ詐欺をはじめとする特殊詐欺に用いられる通信手段は電話が約8割を占めており、特に固定電話への架電が多くなっています。
NTT東日本・西日本では、特殊詐欺被害防止のため、主に70歳以上の契約者の回線を対象に、ナンバー・ディスプレイ契約やナンバー・リクエスト契約を無償化する取り組みを実施しています。
また、留守番電話機能を常に設定しておくことも簡単な防犯対策です。
こうした方法を活用し、不審な電話番号に出ないための対策をしておきましょう。

2.お金の話が出たら、電話を切って家族などに相談する
たとえ相手が家族や親しい友人であっても、急な金銭の要求や緊急事態の連絡があった場合は、冷静になり、相手の話をよく聞くようにしましょう。
個人情報を安易に提供することはせず、一度電話を切った後で、電話をかけてきた家族や友人に確認の電話を入れましょう。
日頃から家族間での合い言葉を決めておくなどの対策も有効です。

厚生労働省や自治体、金融機関などは、電話や訪問で「口座情報登録を依頼する」「キャッシュカードや通帳等を預かる」「ATMの操作を依頼する」といったことをすることは絶対にありません。
不審な電話を受けた場合は、最寄りの警察署に即座に相談するようにしてください。

自分は大丈夫、とは思わず、被害に遭わないように日頃から対策をしておくようにしましょう。


※本記事の記載内容は、2024年8月現在の法令・情報等に基づいています。